君を好きなるまでの100日間
葉っぱふみフミ
0日目 始業式
大森修平は4月8日始業式の朝、昇降口に貼られてクラス割表を確認して、今年も小島比呂と片桐優香と一緒のクラスであることに胸が躍りながら、2年3組の教室に向かった。
比呂とは、中学は違ったが1年で同じクラスになり、漫画やゲームの趣味があったことから仲良くなり、「修ちゃん」「ヒロ」と呼び合う仲で一番の親友と言ってもいい。
片桐優香は、中学時代から修平が片思いを寄せており、付き合いたいと願ってはいるが、その美貌とリーダーシップから学校カーストの頂点に君臨する彼女には話しかけることすら、ままならないまま時が過ぎ去っていた。
修平が教室に入ると、片桐さんは見たことのない女子と話していた。修平は、五十音順に決められた席に座ると、横に片桐さんと話していた女子が座ってきた。
「修ちゃん、おはよ。」
見覚えのない女子に名前を呼ばれたことで、驚いてその女子をみてみる。女の子らしい髪型に整えて、眼鏡からコンタクトに変わっていたが、俺の名を「修ちゃん」というのはこの学校には一人しかいない。
「ひょっとして、ヒロ?」
「そうだよ。気づいてくれた。」
「どうした?」
そういうと、ヒロは立ち上がって、スカートのすそを少しつまんで、
「どう、似合う?」
うちの高校の女子の制服は紺のブレザーにピンクのシャツと紺色のリボン、グレーを基調としながらピンクのラインの入ったプリーツスカートで、制服でこの高校を選ぶ女子も多いぐらいにかわいい。その制服を、去年まで男だったヒロが着ている。
「似合っているけど、キモイ。」
急な展開が受け入れられずに、思わず拒否反応をしてしまった。
「ひどい~。」
ヒロは泣き始めた。
「ちょっと大森君、今の言い方ひどいでしょ。」
片桐さんが修平に詰め寄ってきた。
「ヒロちゃんがどんな思いで、女の子になったと思うの?」
ヒロの思いは分からないが2年生は始まったばかりで、このクラスでもカーストの頂点に立つであろう片桐さんを敵に回すのは得策ではない。
修平は泣いているヒロに話しかけた。
「ヒロごめん、急なことで思わず変なこと言ってしまったが、似合ってるよ。」
「キモくない?かわいい?」
「かわいいよ。」
その言葉を聞いてヒロは泣き止んで、笑顔を見せた。改めてよくみてみると、純粋に女子としてかわいい部類に入るぐらいかわいかった。
朝のホームルーム開始のチャイムが鳴り、みんな席に座ったところで担任と思われる女性の先生が教室に入ってきた。
「おはようございます。2年3組の担任の中原です。1年間よろしくお願いします。」
その後、出欠の点呼が終わったところで、山崎という男子生徒が一人手をあげて、
「あの~、小島君が女子の制服着てるんですけど。」
理由は知りたいのはみんな同じようだ。
「山崎くん、制服に男女の区別はありません。女子でもスラックス履いてきている人いるでしょ。山崎君もスカート履いてきてもいいのよ。」
先生の話にクラスのみんなが笑ったところで、始業式のために体育館に行く時間になってしまった。
始業式が終わった後は、ヒロは女子生徒に囲まれて楽しくおしゃべりしていたので割り込む余地はなく、修平は話しかけることができず、結局ヒロが女の子の制服を着ている理由は分からないまま終わってしまった。
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