第52話 内戦Ⅱ

二日目

「今日の戦闘作戦は昨日と違うからね」

と養兄シュアスから何度も念を押された


そんなに心配せずとも

今の私はノリノリですから任せなさい


銅鑼の音が鳴り響く

三つ子で拳を合わせ本日も戦闘開始です!


今日も三つ子とディーゴは

最前線に位置している

でも弓矢部隊では無い

剣部隊としてである


馬にまたがり剣を抜いて

敵陣目掛け突進

アハッ、死と隣り合わせの戦いって

何故なぜか笑えます

敵も剣を抜き、こちらへ突進してくるから

激突だぁ~!


私は馬の背に立ち敵隊の中心へ飛び込み

へんめいでん

を唱え、剣を握り左回りに体を一周させた


私を囲んでいた敵兵士らはドサッと倒れる

やったね死んだねっ


それを見た敵兵らは固まっている

ついでに味方まで固まる

固まってんじゃあ無いよ!

お前らは戦えよ!


敵の数は多い、

あとからあとから湧いてくる


でも大丈夫なのだ~

今日は多量一斉矢射り機で

煙幕えんまく玉を

後方の敵に打ち込み足止め作戦なのだ


こちらは攻め込む振りをして

実は少しずつ後退し敵兵を誘い込む

そして後方の敵に煙幕玉を発射!

後方の敵兵達は煙で前が見えずに進めない

見事に分断成功である


あとは、ひたすら

切るべし切るべし切るべし!


へんめいでん

掛かって来いやぁ~


味方の後援が来ないことに気付き

慌てる敵兵達


ディーゴがゴコーゼッシュ家別邸で

行われた首脳会議で言った

〘烏合の衆でまとまりが無く

劣勢になればもろく崩れるのは必然〙

の言葉通り武器を捨て降伏する者が出てきた


「はいは~い

 降伏する人は両手を挙げて

 陛下陣営まで進んでぇ~」

ルクトが楽しそうに誘導しています


そうしている間にも

煙幕えんまくに巻かれていた敵兵が攻め込んで来る


いらっしゃいませ敵兵さ~ん

へんめいでん

で一振り10人はっちゃいますんで

エッへへッへ。


再び煙幕玉で敵を分断

後援兵が来ずに慌てる諦める

そして降伏する烏合の衆の団体さん

こいつら学習能力が無いらしい

私より馬鹿なんだんぁ~


何たってイスク星の人間は

煙幕なんぞ見たことないもんだから

初体験の煙幕に戸惑いまくり~

笑える~


そのうえルクトが

「カラフルだと楽しいなぁ」

と言うもんだから

ルクトオジさんが遊び心満載に

赤・白・黒・青に黄色と作った


目の前が何色になるのか分からない事が

余計に恐怖心を煽るらしいです


煙幕作戦をひたすらに繰り返し、

死ぬ者に降伏する者続出で

敵兵の数は随分減りました

エッへエッへ


それでも兵の数には

元々2万もの大きな差がある

こちらの兵士とて無傷なわけではない

敵にくだるものは無いが

深手を負う者も命を落とす者もいる

もうすぐ日が傾く

その前に敵の数をもっと減らしたい


ディーゴが私に耳打ちした

「フォーラ様$#$+**¥;・・・」

「えっ、それを言うの⁈

 私がぁ⁈嫌だよ」

「これは効きます、

 お願いします!フォーラ様にしかできません」


え~嫌だなぁ

でも仕方ない

ディーゴが言うんだから間違い無い

はぁ~やりますかぁ


「我が名はフォーラ・ゴコーゼッシュ」

「もっと大きな声で」

はいはい、分かりましたよ


「我が名はフォーラ・ゴコーゼッシュ!」


敵も味方も動きを止めた


「我が名はフォーラ・ゴコーゼッシュ!」


怒号に包まれていた戦場が

シーンと静まる


私の名前は昨日の

❝名乗り男事件❞ですっかり有名らしい

あぁ、この後が言いたくない


其方そなた達は見たであろう

 私は一度に10人の者を切る

 これは全て

 守護神ウーシア様のご加護である!」


今迄の転生でさぁ

沢山の噓をついて来たけどさぁ

これが最大最悪の噓だよ!

なんでウーシアのお陰

なんて言わなきゃならんの⁉

あぁ~悔しい~!


「ウーシア様のご加護無き

 アーザス軍に勝利無し!

 陛下は降伏した者にはとがめ無し

 とご恩情くださっている

 武器を捨て降伏せよ!

 父母ちちははの為、妻子つまこの為に

 命  を長らえよ!

 そして陛下のもと

 国の為、民の為に共に働こうぞ!」


あぁ~ほんとウーシアの奴ムカつく~

キィ~


「生きたき者は武器を捨て降伏せよ、

 死にたき者はウーシア様に選ばれし

 このフォーラ・ゴコーゼッシュに

 刃を向けてみよ!」


「口から出任でまかせを言いおって

 女のくせに生意気な!」

そう言いながら敵の上官が切りかかって来た


確かにウーシアなんて出任せだけど

私は女じゃ無~い蝉丸だ!


ムカつく奴だ

そいつの胴へ横一文字に剣を振った

数秒の間をおき・・・

そいつの胴体は・・・

ドスンと音を立て地面に落ちた


マジかぁ⁉

へんめいでんの術を使っていないのに・・・

すごい凄い

私って普通に強いんじゃん!


敵も見方も驚き過ぎたのか

誰も微動だにしない


すかさずディーゴが

「皆の者、見よ

 これが守護神ウーシア様のご加護である!」


『うわぁぁぁぁぁぁぁ』

と敵兵らは悲鳴を上げ

武器を捨て両手をげながら

我先にと陛下陣営へ走り出す

味方の兵士らは

『ウーシア様、万歳万歳万歳!』

と、喜んでいますけど

ウーシアの力なんて借りてませんから

ぜ~んぶ私の実力ですから

ウーシアなんて役立たずじゃん!


次の敵陣が攻めって来た

ディーゴが

「フォーラ様、またお願いします」

「え~嫌だよぉ」

ラテルとルクトが耳元で

「流石は蝉丸、見事な芝居だったよ。

 あの一太刀もお見事」

「おうそうだ、

 蝉丸は我らの勇者だからな」

え~

褒めてるの~

私を勇者だって

しょうがないなぁ~


蝉丸やります!!


また同じことを繰り返す

敵兵らは悲鳴を上げ

武器を捨て両手を挙げながら

我先にと陛下陣営へ走り出す


味方の兵士が陛下陣営へと下るのを見ていた

後陣の敵兵らは

何が何だか分からないが

これは逃げた方がいいと察知し

武器を捨て両手を挙げながら

陛下陣営へと走り出した

結果、

敵陣の半数以上がバラバラ状態である

笑える~


銅鑼の音が鳴った、本日は終了です


今日も我武者羅に暴れたぞぉ!

腹減ったなぁ~!


―――――――――


本陣に戻ると兵士達に囲まれた

「フォーラ様、お見事でした」

「一人で百人は切ったぞ」

「馬鹿言え、千人は倒されたぞ」

「フォーラ様は勝利の女神だ」

「ゴコーゼッシュ家の三つ子様は

 ウーシア様の化身だ」

などと口々に

好き勝手なことを言っている


急に体の力が抜け

地べたに座り込んでしまった


ラテルが

「皆、フォーラは疲れているから

 休ませてやってくれないか」

と兵士達を制してくれ

ルクトが私を抱え

テントへ連れていってくれた


「大丈夫か?」

「我武者羅に張り切りすぎて

 体の氣がカラカラだ」


横になっていたら

ラテルが水桶を持って来て

「綺麗にしないと」

返り血で汚れた私の顔をと手を拭いてくれた


「さぁ食え」

ルクトは横になり動けない私に

飯を食べさせてくれた


「ありがとう・・・」

二人共なんて優しいんだ

感激です・・・


「フォーラには無理をさせているよね・・・」

「そうだよな、

 俺達はフォーラの呪術に頼りすぎだな」

「そんな事ないよ、

 ラテルはしっかり援護してくれてるし

 ルクトの発明のお陰で

 有利に戦えているじゃん

 私には我武者羅しか能がないんだからさっ」


「僕が二人を巻き込んで苦労させている」

「それは違うぞラテル!

 俺達は自分の意思でここまで来たんだ」

「そうだよラテル

 私は自分の意思でアーザスを殺したいんだ」


「プップップップ殺したいとかハッキリ言う」

「ガッハッハッハッ

 自由奔放な蝉丸らしい発言だ」

「だって、あいつは脳ミソ沸騰野郎だもん」


「確かにそうだね」

「上手いこと言うな、脳ミソ沸騰野郎か」

「でしょ、いい渾名あだなでしょ」


三人で大笑いした


「ゴコーゼッシュ家に生まれたがために

 キチェスまで巻き込み

 危険にさらしている・・・」

「キチェスなら俺達の父親でなくっても

 ノスカラ国使節団長に率先して

 名乗りを上げたさ、そういう男だ」

「そうだよね

 キチェスは娘には甘いオヤジ馬鹿だけど

 いつだって他者のために

 おのれの命を張れる男だもん」


「残りは明日一日だ

 アーザスの首を取れば勝利だ」

「猶予はあと一日だな」

「アーザスを殺して王政復古をして

 キチェスを取り戻す!」


「命に代えても!」

「おう、そうよ命に代えてもだ!」

「当たり前じゃん!

 どうせいつかは死ぬんだから」


「22回も転生している蝉丸が言うと

 重みが違うね」

「22回にはかなわないな」

「だって死んで転生しないと

 朱鷺門領詮ときかどりょうせんの封印が 

 出来ないもん」


「そうだよ

 アーザスの首を取り次は朱鷺門領詮だ」

「勝利して三人で行こう

 朱鷺門領詮との戦いへ」

「でもぉ三人同時に死ねるかなぁ?」


「死ねるさ」

「死ぬぞ」

「変な会話っ・・・」


又しても三人で大笑いした


私に先に寝るように言い

ラテルとルクトは首脳陣会議へ向かった


あと一日しか無い・・・


焦るな蝉丸!

キチェスは絶対に絶対に取り戻す

リエッドの元へ

トーキスとスイークと

クーエラの元へ帰すんだ


だってキチェスは私の大切な父なのだから

皆は私の大切な家族なのだから

絶対に絶対に絶対に

私の大切な家族を悲しませてなるものか!










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