第51話 内戦Ⅰ

戦場は王宮から10キロほど西の地

歴代

内戦はこの場所で行われていたそうだ


過去の内戦は

全てが小競合い程度だったのに対し

アーザスの反乱は

隣国までも巻き込むと言う

建国以来の大反乱である

と王宮諸事総取締役シーバンが言っていた

流石さすがジイさん

年の功で色々と物知りである。


―――――――――


全軍が揃ったところで

大将であるクシマイニ陛下が檄を飛ばす


「これから進むは地獄の道である

 しかし、

 その先には必ず平和の門がそびえ立つ

 臆すること無く進み行き

 その手で平和の門を開くのだ

 勇者達よ、民と国に安寧をもたらせ!

 この暗黒に光を照らせ!

 守護神ウーシアのご加護は我らにあり!!」


「聞いた!ねぇ聞いた!勇者だってよ

 凄いよ私は勇者になれたんだ!」

「おお、そうだな蝉丸は勇者だな」

ルクト~有難う~

共に勇者になると誓い11年

本当に勇者になれましたよ~!

ヤッホ~イ!


嬉しい事がもう一つ有る

戦場で動きにくいだろうと

ディーゴが男装を用意してくれた

ひっさしぶりの男装!

これで思い切り飛び蹴りもできます!


クシマイニが勝鬨かちどきを上げる

「えい!えい!えい!」

それに応え全兵が

『おー!』


号令が響く

「陣を構えよー!」

「陣を構えよー!」


兵が一斉に動き出し

いよいよ戦いが始まる


陣形は魚鱗ぎょりん

最後尾に大将のクシマイニ陛下

王宮諸事総取締役シーバン

毛をそり落としたゴリラ似の総司令官

雄義隊長の養兄シュアス

そしてオスタも最後尾にいる


―――――――――


三つ子はオスタには秘密裏に

重要な任務を任せてある

それはシュアスの護衛


数日前に三つ子はオスタを呼び出し

ラテルが

「頼みがあるんだ、

 シュアス兄さんを守って欲しい」

「勿論です、

 私はゴコーゼッシュ家の護衛係ですから

 皆様をお守りするのが役目です」


「そうでは無いんだよ

 僕たちの事は構わないから

 シュアス兄さんを守って欲しいんだ」

「それでは私の役目が果たせません」


「オスタ、考えてくれ

 内戦が終わった後の

 タスジャーク国を再建するために

 シュアス兄さんは

 無くてはならない人材だ」

「はあ・・・確かにそう思いますが」


「私心があっては大義は果たせない

 だから僕等は命など惜しくはない!

 陛下の国の民の

 全ての未来のために頼んでいるんだ」

「皆様が、そこまで覚悟れているとは

 感服致しました」


「オスタ、命令だシュアス兄さんを守れ。

 今迄はどんな作戦時でも

 死ぬなと命じてきた、だが今回は」

「承知しました

 このオスタ身命をかけ

 シュアス様をお守りします」


と言う事でオスタはシュアスのそばにいる


ラテルは弟のクシマイニ陛下が

国の復興をなす為には

シュアスは無くてはならない存在であると

オスタにシュアスの護衛を命じたのだ

私とルクトはラテルの考えに賛同した


元々私達は

王権復古をし民を守りたい

と言うラテルに協力するため

イクス星での転生人生を歩んできたのだから


―――――――――


この戦で三つ子は常に行動を共にする


恐らく・・・


いや十中八九・・・


いや必ず私達は死ぬだろう

だから共に次の転生をするために

離れることは出来ない


三つ子は最前列の陣に構えている

最前列は弓隊だ


まずは互いに弓をって

間合いを詰め接近戦になるのが

通常のやり方らしい

私は別に何でも構わないんですけどねっ


緊張が高まってきた

アーザス側から一人、

馬にまたがり両陣営の真ん中に進み出た

・・・まさか、あれかぁ?

あれをやるのかぁ?


「やあやあ我こそは・・・」


うわぁぁぁ~やっぱり名乗りだよ

これ嫌い!

過去の転生で何度も聞いたけど長いんだよねぇ

ほんとに必要なんですかぁこれ?


「アーザス公の正義の御旗みはたのもとに

 集いし・・・」


はぁ⁉

誰が正義だってぇ?

ムカつく!


うんふうごう

名乗り男に向け矢を放った


当たり前だが矢は命中し

頭に矢を刺したまま名乗り男は

馬上から転げ落ちた


うん!

即死ですね!エヘッ


「なっなっなっ何してるのフォーラ!」

ラテルが驚いているのか怒っているのか・・・

こんな分かりにくい表情をしているのは

初めて見ました


「何って、矢でり殺した」

「何でそんな事を!」

「だってぇ名乗るのって長いじゃん

 嫌いなんだよねぇあれ

 それに遅かれ早かれ殺す相手だしさっ」


ラテルは顔を赤くしながら

「好きとか嫌いじゃ無くて

 敵であっても聞くのが礼儀でしょ!

 失礼でしょ!」

と怒りまくりである


後ろを振り返ると・・・

味方の兵士らも啞然としている

どうやら

我慢して聞かなくてはいけなかったようだ


仕方ないなぁ・・・


私は馬にまたがった


「何してるの?」

とラテルが聞くから

「事情を説明して謝ってくる」


「フォーラ様、危険です行ってはなりません」

ディーゴは慌てているし

兵士らは更に啞然とし

視線は私に一点集中


「ハッ!」

勢いよく馬の腹を蹴り走らせた

「お待ちくださーい!」

ディーゴに続き

ラテルとルクトも馬にまたがり付いて来た


名乗り男は

私に矢でり殺され地面に転がっている

そのかたわらで

主を亡くし立ち尽くしていた馬が

擦り寄って来た

どうやら私になついたようだ


因みに私が射った矢は

名乗り男の頭頂部に深く刺さっている

やったね見事だね!

と自画自賛です、エヘッエヘッ


敵陣に向かい

「私はフォーラ・ゴコーゼッシュ!

 矢を射り、このオジさんを殺しました

 名乗りの途中にごめんなさい!」


よし、ちゃんと謝ったぞっ


始めは啞然としていた敵兵達が

一斉にどよめきだした

「女だ」

「若い娘だぞ」

「なんで若い娘が戦場に?」

もう、ワイワイガヤガヤが止まりません


「でもこれだけは言っておく

 死んだオジさんは噓つきだ!

 アーザスの政策で

 病気の年寄りが薬も買えずに死んでいく

 幼い子がお腹を空かし

 食べる物が無くて泣いている

 その現実のどこに正義があるんだ!」


敵兵らは黙り込んでいる


「この戦で我武者羅に暴れていいと

 許可をもらっているから

 容赦なくやらせていただきます!

 私の強さは

 死んだオジさんの傷を見ればわかるでしょ

 武器を捨て降伏した者は殺さないから

 死にたい奴だけ掛かって来い!

 あっ、それとあの馬は

 私に懐いてるから頂きます!以上!」


きびすを返し陣へ向かった


ラテルとディーゴは顔を引きつらせ

ルクトは笑いながら

「フォーラ、傑作だったな愉快愉快」


するとディーゴまで笑い出し

「まったくフォーラ様には

 幼い頃から驚かされてきましたが

 今日が一番驚き、感動致しました」


ラテルは顔を引きつらせたままで

「はぁ~」

と溜息ついてます


陣へ戻ると兵士たちから拍手喝采を浴びた


「フォーラ嬢は勝利の女神だ」

と言い出す奴まで出てきたけど

私は女神じゃ無い!

蝉丸ですから!


「フォーラ嬢がいれば勝利は間違い無い」


おいおい、お前らも頑張れよ

助けてなんかやらないからな


グゥワーン・グゥワーンと

銅鑼どらの音が鳴り響く

いよいよ戦闘開始!


でもなんで銅鑼なのかねぇ・・・?


「いよいよだ」

「いよいよだな」

「いよいよだね」


ラテル・ルクトと三つ子で拳を合わ

「国と民を救う!」

「アーザスを倒す!」

「暴れまくる!」

『そしてキチェスを取り返す!』


―――――――――


弓矢の応酬が始まった

矢を射りながら互いに間合いを縮め

剣の撃ち合いへと移行するのだが・・・


こちらにはルクトとが開発した

多量一斉矢射たりょういっせいやいり機❞がある


多量一斉矢射り機って変な名前じゃん

命名者は王宮諸事総取締役シーバンジイさん

なんでジイさんが

勝手に名前を付けるかなぁ・・・


多量一斉矢射り機は二人掛かりで操作し

一度に40本の矢を

遠くまで射ることができる

めちゃ凄い装置です


ルクトは時間が足らずに

20機しか作れなかったそうだが

それでも凄い威力ですよ、助かりますよ~


でもねぇ

「ノーベルにはならないと言ってたのに

 兵器を作っていいの?」

とルクトにいたら

「これは兵器では無い、道具だ!」

と怒ってた

まぁ57歳元大学教授が言うのだから

これは兵器じゃ無い道具なのですです。


こちらの矢は、

多量一斉矢射り機で敵にバンバン刺さるけど

敵の矢は届きませんので

間合いを縮めずに矢だけで

りまくりー!


しびれを切らせた敵陣は

剣部隊を突進させた

その行動は此方こちらの思う壺なんでなぁ


多量一斉矢射り機で

以前にルクトが発明した

ビリビリ小箱を改良させた

❝ビリビリ中箱❞を打ちまくり水溜りに落とす


昨夜の内に~

大きな水溜りを~

たくさん作って置いたんですよねぇ~


けして汚い手ではありません!

数は敵の方が多いんだから

勝つためには頭を使わなければ

とルクトが言ってたもんねぇ


水溜りに足を入れたならば

あら大変~

人も馬も体をブルブルしびれさせながら

バタバタと倒れていく


それを見た者達は恐怖で足をすくませている

そこを目掛け矢を射る


歩兵は一般兵で地位が低い

馬に乗っている奴は地位が高い奴です

私は馬にまたがる奴らに

ピンポイントで矢をはなちまくる

うんふうごう

うんふうごう

何たって百発百中ですから!


敵は再びしびれを切らせ剣部隊が突進

こちらはビリビリ中箱を打ちまくり

を何度も繰り返した

結果、

味方の死傷者より敵の死傷者は数十倍に達した

というか、こちらは殆ど無傷です

やったね!


グゥワーン・グゥワーンと

銅鑼どらの音が鳴り響いた

本日の戦闘終了の合図だ


イスク星では

どの国でも日が傾いたら

休戦するのが決まりだそうで

両軍共に本陣へと引き揚げた


腹が減ったよぉ~

朝飯しか食べて無いんだもん

なのに休みなく

我武者羅に頑張ったからなぁ


「フォーラ!」

あっクシマイニだ

周りの兵士らは片膝付いて

クシマイニ陛下に敬意を表する

「かまわん、皆の者楽にせよ。

 今日はよく戦ってくれた!

 明日に備えゆっくり休んでくれ」


クシマイニの後ろには

シュアスもゴリラの総司令官も

王宮諸事総取締役シーバンもいます


「フォーラ聞いたぞ、

 名乗り者の件!

 其方そなたという奴は!」

あぁ・・・怒られるぅ~


「プップップップ、

 実に愉快だ、我は爽快な気分である!」


なぁんだ怒ってないじゃん

笑ってるよ~

良かったぁ

でもその後ろでは

シュアスもゴリラ総司令官も

シーバンも顔を引きつらせてます


「フォーラ、もう無茶をして!」

シュアスが怒ってる


「戦の作法も知らんとは、これだから女は」

あ~ゴリラ総司令官

男女差別発言でアウトー!

しかし残念でした~

私は男です~へへ~んだ


「我武者羅にやれって言ったのは

 そっちでしょ!」

どぅおだぁぐうの音も出まいが、ふっん!


「まあまあ、良いではないか」

「しかし陛下・・・」


シーバンジイさんの言葉をさえぎ

クシマイニが


「フォーラがアーザス軍へ投げた言葉は

 まことの事

 実に素直なフォーラらしいあやまちだ

 プップップップ」


う~んクシマイニは褒めてるのか?

馬鹿にしてるのか?

どっち?


やっと飯だぁ~

兵士らと地べたに座り仲良くお食事タイム


でもパンが無い

肉と野菜のスープだけ

「パンは?パンが無いよ⁈」

ラテルが

「これだけの人数がいるんだから

 パンが有るわけないでしょ!」


今日のラテルは朝から

いや名乗り男事件から機嫌が悪い


仕方ない我慢しますよぅ

でもねぇ・・・


「ディウの父さんが焼いたパンを、

 もう一度食べたかったなぁ」

「うん、そうだね・・・」

「ああ、そうだな・・・」


「余計な事を言って

 しんみりさせてしまった、ごめん」

「えっ、そんな事がわかるのフォーラ⁉」

「お前が人間らしく他人へ

 こまやかな心遣いができるなんて!」


「失礼な!それぐらいできるわ!」


いつからできる様になったのか・・・

自分でも分かりませんけど


食事の後は明日へ向け首脳陣会議

でも眠い、

食欲の後には睡眠欲がぁ・・・

今日は呪術、

うんふうごうで氣を使いまくり

へとへと~

明日に備え早く寝て氣を蓄えたい


ラテルが

「フォーラはもう寝ていいよ」

「そうだ、

 お前はどうせ会議に出ても役に立たん」

ルクトの言い方!


まあね、

確かに会議中は耳を塞ぐ確率大ですけどもっ


「お前には明日も活躍してもらうから、

 先に寝てろ」

ルクト優しい!


このオジさんとも長い付き合いだけど

本当は優しいのか意地悪なのか・・・


まあいいやっ、

お言葉に甘えて寝ます

明日も

我武者羅・我武者羅・我武者羅に暴れるぜっ!















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