第41話 開き始める地獄の門

養兄シュアスとディーゴとオスタに

陛下より

❝王権復古を果たす為に

雄義隊が共に戦う事を頼まれた件❞

を伝えると皆の瞳が輝いた

その輝きは嬉しさでは無く

身命をして戦い抜く決意を

新たに深くした輝きだった。


陛下と王妃の手紙での遣り取りについて

ディーゴが

「それは良い事です、実に良い事です」

と安心と喜びの混ざった感情で言っていた


王と王妃は

手紙のやり取りを始めてから意思の疎通ができ

互いの想いを深く知り愛を育んでいるようだ

とルクトが言っている


私には手紙如てがみごときで

愛が育めるなんて全く理解できないが

最近、ヌーメイン王妃に

笑顔が多くなったのは間違い無い。


私とルクトは特別任務

お手紙配送係として頑張り

ラテルは前世の弟であるクシマイニ王に

❝体調の悪い陛下のお世話❞を口実に

毎日、二人きり王の寝室にこも

代々受け継がれる帝王学を教えている。


今迄アーザスの圧力で

王宮諸事総取締役のシーバンでさえ

帝王学を教えられなかったのだ。

王は、水を得た魚の如く学びを吸収し

日毎に頼もしく成長している


だがアーザスとその配下の前では

以前と変わらない

気力も体力も無い凡庸ぼんような王を演じている


ラテルは前世でニナオイス王子として

弟に伝えられなかった

王として❝国を治め民を守る為の心得❞

を伝える義務を、いま果たせていることに

大きく安堵しているそうだ


良かったなぁラテルよ

私も嬉しいぞっ。


そう言えば・・・

王に

アーザスが人身売買をしている件を教えた時

「我は王である。

 王である我には国と民を守る責任と義務

 そして権利がある。

 罪なき民を他国へ売る者は例え誰であっても

 許すことはできない。

 王の権限の下、必ず極刑に処する!」

の言葉に聞きは覚えが有ると言ったら

ラテルが

「あの言葉は我が父、マーツニキス前国王が

 最後の晩に言われた言葉そのままだ」


おぉそうだそうだ

5歳の頃に泣きながらラテルが語った

前世の終焉話に出てきた

ラテルの前世父、前国王が放った言葉だ


しかし現王は当時2歳だし

ラテルと前国王がアーザスに殺害された時に

現場に居合わせて無いのに・・・

国王の血筋だからなの??

不思議だなぁ?


でもどこで聞いたのかを思い出せなくて

モヤモヤしていたから

ラテルに教えてもらってスッキリしやした!


―――――――――


11月の終わり頃

非番の日

別邸でくつろいでいたらディウがやって来た

来るなり青い顔で落ち着きなく

「大変なんだ・・・」

「落ち着け、何が有った」


こんな時は中身57歳のルクトは

落ち着いて相手の話を聞く

流石オジさんの貫禄ってやつです


「ソベク叔父さんが

 裏帳簿が無くなった事に気が付いた」


えっ!

ビックリです

無くなった事に

一ヶ月以上も気が付かないなんて

ビックリですよ!


「裏帳簿が無くなった事は

 いずれ気が付くと分かっていただろ

 何が大変なんだ」

「裏帳簿紛失をアーザス公に知られる前にと

 必死で探しているんだけど

 内に裏切者がいるかも知れないと

 従業員達の素性を調べだしたんだ」


確かに、それは不味い

ソベク商会には数名の雄義隊員が

従業員として紛れ込んでいると

オスタが言っていた

その目的は

ソベク商会の内情調査とソベクの警護である

ソベクは悪人だが

大切な生き証人でもあるので

護衛をしているそうだ


「心配しなくても潜入している隊員の名前

 経歴は本当だからね

 雄義隊員である事以外に噓は無い」


ラテルの説明にディウは

「それなら良かった」

と安堵した様子で帰って行った


ディウが帰るのを見届けると

「フォーラ、オスタを呼んで来て」

とラテル

え~なんで私?

ラテルは人使い荒すぎぃ


「早く呼んで来て!」

あ~

また元王子が威圧的なオーラを放ってますよ

チッ!


ディーゴは留守にしている

情報収集と雄義隊勧誘のため

近衛兵隊長時代の仲間や元部下を

訪ね歩いている

ディーゴが不在の時はオスタが全てを代行する


表の顔はゴコーゼッシュ家の護衛係

そして裏の顔は

雄義隊の副参謀オスタを連れて来ましたよ

チッ!


ラテルがディウから聞いた話をオスタにした

そして

「なにか嫌な予感がする。

 不測の事態で身に危険がおよんだら

 躊躇ためらわずに逃げるよう

 潜入している隊員に伝えて欲しい」


「それって

 ソベクが殺されても仕方なしって事?」

私の問いに

「そう言う事になる

 僕は隊員の命を最優先に考えないと」

影の隊長ラテルの答えは

もっともだと納得はする


雄義隊の隊長は、

表向きは養兄シュアスになっている

隊長にはラテルが相応しいの意見が多かったが

未成年者が隊長では体裁が悪いとラテルが固辞し

シュアスが隊長

ディーゴが参謀

オスタは副参謀に就任


話がれたな


ソベクは本来ならば

極刑をまぬがれない極悪人である

それでもディウにとっは

幼い頃から可愛がってくれた実の叔父

ディウが雄義隊員となり

アーザスを倒す為に戦い

尚且つ

ソベクがアーザスの悪行を証言するなら

極刑を免除し

国外追放にする事に決めていたのだが・・・


ラテルの言う通り

隊員の命の方が優先になるよなぁ

でも、この件は・・・

「おいフォーラ

 ディウにはこの件のこと話すなよ」

「そんな事は言われなくても分かってるよ!」


ルクトが

少し驚いた顔をしと思ったら

「お前、随分と成長したなぁ」

みと言う


これって褒められてるの?

褒められてるんだぁ間違い無い

あの私を怒ってばかりのルクトが

褒めてくれたぁ~

エッへッへへ

そうだぞぉ私は素晴らしく成長したのだぁ~!


とニヤニヤしてたら

「おい!調子に乗るなよ」

やっぱりルクトは一言多いです

ムカつく~!


―――――――――


ラテルの❝嫌な予感❞が当たった・・・


ソベクが暗殺された・・・

裏帳簿紛失に気が付いてから

わずか10日後の出来事だった

そして始めて雄義隊員から死者がでた・・・


三つ子にシュアス、ディーゴとオスタ

そしてディウが集い

雄義隊の首脳会議が開かれた


生き残った隊員の話を聞いたオスタによると

「刺客は一人だった」

そうだ


たった一人で何人もの護衛を殺すとは

かなりの剣の使い手だ

そして

「刺客の右手首には大きな赤いあざが有った」


それを聞いたルクトは顔色を変え声を震わせながら

「アーザスだ・・・

 その刺客はアーザスの手の者だ

 間違い無い!」

ディーゴも続いて

「近衛兵隊長時代に

 アーザスが

 右手首に赤い痣のある私兵を連れているのを

 何度か見た事があります」


❝アーザスの手の者❞の言葉に反応して

その場に居る皆の眼が鋭く光った

私以外のね。


続けてオスタが

「ソベクが殺される二日前から

 番頭が姿を消したそうです

 いま行方を追わせていますが

 まだ見つかっていません」


「恐らく番頭がソベクの後釜を狙い

 アーザスに取り入ろうと

 裏帳簿紛失を報告したのでしょう」


ディーゴの発言に

又しても皆の眼が鋭く光る

私以外のね。


あれだぁ地球の日本の戦国時代頃までは

よく有った話しだね

主君を裏切って強い奴に寝返るやつね

でも寝返って出世するとは限らないんだよなぁ

寝返りさせといて

主君を裏切る者は信用ならんと

難癖付けて殺すパターンも有り有りですから

もしかして番頭も既に殺されてるかもね

フッ笑える


「ソベク商会はアーザスの大きな収入源だった

 それが無くなった事で

 別の手を使って金を得ようとするはずだ

 どう出てくるのか・・・」


ラテルはそう言うけど

疑問です


「ねぇアーザスは摂政役として

 莫大な報酬を得てるのに

 なんでそんなにお金が必要なの?」


その場に居る皆がハッとした

私以外ね。


「そうだよな、

 なんで今迄その事を疑問に思わなかったのか

 フォーラよく気が付いたな」


エヘッ

ルクトに褒められちゃったぁ


「馬鹿なのに」

殺す・・・

今のルクトの一言・・・

ルクトはいつか殺しますから!


「確かに金の使い道が気になるね

 僕はアーザスと懇意にしている

 貴族等の動向に注意を払うよ」

とシュアス


シュアスは

タスジャーク国唯一の写真家であり

ゴコーゼッシュ男爵家の養子であることから

貴族や上流階級の奴に人気と信用が有る


と言うか

それはシュアスの持つ能力の一つで

物腰柔らかく穏やかで相手の警戒心を取り払い

懐に入るのが上手いのだ

とディーゴが言っていた。

持って生まれた性質なのか

それとも

幼い頃の苦労で身に付けたものなのか・・・


「今回初めて隊員に死者がでた

 これからは

 もっと熾烈しれつな戦いとなるかも知れない

 命の保証は出来かねる

 だからオスタから隊を去りたい者は

 遠慮なく去るようにと伝えて欲しい」


やっぱシュアス優しいよなぁ

いい事を言うぜぇ


取り敢えず首脳会議は終了です

解散解散っと

今日は難しい話も単語も出なくて助かった

エッへッへへ


帰ろうとするディウの背中に手を当て

ルクトが

「ソベクはお前の叔父だものな

 亡くなって悲しいよな」

と優しく声を掛けた

「悲しいよ・・・

 叔父さんは昔は誰にでも優しい良い人だった

 悪い事をする人じゃ無かった。

 なのにアーザスと知り合ってから

 変わってしまったんだ

 逆怨みと言われようが

 僕は絶対に絶対にアーザスを許さない!

 この考えは間違っているかなぁ?」


ディウの眼は怒りに満ちている

だがその姿は不思議なことに

堂々と凛々しく見える


「間違ってないさ

 アーザスは悪の元凶で皆の人生を狂わせる

 俺達で必ずアーザスを倒そう!」


うわぁ~

ルクトが真面まともな事を言ってるよぉ~

「うん!」

ディウは力強くうなき胸を張り別邸を後にした

我が友は

勇ましく生まれ変わったようだ


私も戦うよ

既にアーザスを殺すと決めているから・・・


―――――――――


部屋のベッドの上でくつろいでいたら

ルクトが来て

「ラテルの様子が気になるから一緒に来い」


へいへい分かりましたよ

付いて行きますよ

何が気になるのかはしりませんがねっ


ルクトはラテルの部屋へ入るなり

「手首に赤いあざを持つ刺客とは

 何者なんだ?」

「前国王であった我が父と

 僕を暗殺した者だ・・・」


え~!

そうなの⁉

「じゃぁかたきじゃん!」

「そうだ・・・敵だ・・・」

「だから

 赤い痣と聞いた時の様子が変だったのか」


えっ⁉

ルクトそんな事に気が付いてたんだぁ

流石57歳やっぱり年の功だなぁ


「俺は6歳の時ラテルの力になると誓った

 だから共に

 赤痣の男への敵討ちを成し遂げる」

「有難うルクト、心強いよ」

「忘れないでよ、私もいますからね」

「分かっているさ。

 共に転生者の二人は一番の同志だ」


赤痣あかあざの刺客かぁ・・・

打つべきやからが一人増えたわけだ

やってやろうじゃないか!

三人は、兄弟であり仲間であり同志であり

そして不思議なえにしで結ばれた

転生者ですからね!





 



























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