第39話 祝誕生日

翌日

ソベク商会の裏帳簿を

シーバンに預けるため

三つ子とディウで

王宮諸事総取締役執務室を訪れた


シーバンから昨夜の首尾を訊かれたので

ラテルが代表して報告したのだが・・・


シーバンのジイさんは泣きながら


「なんと立派な志。若者が国と民を守る為に

 命の危険をも省みず悪に立ち向かうと

 誠にこの国の未来は明るい

 ・・・うぅおぉぅ、うぅおぉぅ」


また泣き出した

しかし、いつもながら可笑しな泣き方だなぁ


ルクトが私に

「ハンカチを貸してやれ」

と言うのでポケットから出して

ジイさんに渡したら

「おお、済まぬ」

涙を拭いたと思ったら鼻をかみやがった

そのハンカチを笑顔で返すシーバンジイさん

ジイさん、汚ねぇだろうが!

返すなよぉ~


「雄義隊はタスジャーク国の未来を照らす

 希望の光である

 私も力の限りに手を貸すので

 思う存分に活躍して欲しい」


タスジャーク国の希望の光かぁ

良いこと言うなぁシーバンジイさん

雄義隊の全員に聞かせてやりたい言葉だ。


―――――――――


仕事を終え別邸に戻り早速ディーゴに

「ディーゴ、今日ねジイさんが」

「ジイさんとは、何方どなたの事ですか?」


しまったぁ!またジイさんと口に出してしまったよ


「シーバンがね%#’’%¥$#⃣&て言ってたよ」

と話して聞かせた


「それは有り難い言葉、流石はシーバン殿

 隊員達に伝えましょう

 皆の志気も上がります」

「そうでしょそうでしょ!

 私も、そう思ったよ」

ディーゴも同意見

やっぱり私の思考回路は凄いなぁエヘッ


『お帰りなさい、兄様姉様』

1号2号のお出迎えだ

『ただいま』

「お帰り」

なんだ珍しい

シュアスまでお出迎えしてくれてるよ


『早く~早く~』

トーキスとスイークが

三つ子の手を取り急かす


「おいおい、一体どうしたんだ?」

ルクトが怪訝けげんそうに言うと

シュアスは黙って笑っている


1号2号に食堂へ連れてこられた


中に入ると

テーブルの上には何時もよりご馳走が並び

その真ん中には大きなケーキが置かれており

何故か使用人達も並んで立っている


はてな?

今夜はパーティー?

お客様でも来るの?


その場の全員が一斉に声を揃え

『お誕生日おめでとうございます』


ふん?・・・


あっ、忘れてた!

今日は三つ子の誕生日だった

ラテル、ルクト、私は顔を見合わせ

「忘れてたね」

「忘れてたな」

「忘れてた~」


日々目まぐるしく忙しくて

すっかり忘れてましたぜぇ


トーキスとスイークシュアスから

それぞれプレゼントを貰った

兄弟からの贈り物、もらうだけで嬉しいです!


シュアスは私にペンダントくれた

「フォーラも嫁入りする歳だからね

 少しでも女性らしく美しくお洒落をしてね」


はあー⁉

昨夜、返り血浴びて

赤く染まってた私に言うんかい?

私は嫁には行きません!

貰うだけで嬉しいなんて前言は撤回

装飾品なんか一番、要らんわ

どうせなら

切れ味抜群のナイフが欲しいですぅ!


私が顔を引きつらせていると

ルクトが肘で小突いて

「お礼を言えよ」


仕方ない、シュアスに悪気はないのだ

私が転生者で中身が男だとは知らないし

その事実は暴露できないんだから


「シュアス兄さん、ありがとう。

 大切にします」


だいたいシュアス自身も21歳にも成って

いまだに結婚していないのに

人の事を言えた義理じゃ無いじゃんか


養父母のキチェスとリエッドが

どんなに結婚を勧めても

「まだ自分は半人前ですから」

ことごとく断っている

その理由は

打倒アーザスに命を捨てる覚悟だから

とラテルが分析していたし

ルクトも同じ意見だそうだ

なるほど。


兄弟でご馳走に舌鼓

そして、ケーキ食べ放題!

イヤッホーイ!

あぁ~幸せです~!


―――――――――


誕生会が終わり

ご馳走で

パンパンに膨らんだ腹をさすりながら

自分の部屋で

ベットに大の字で寝そべる、満足満足!


ラテルとルクトが神妙な面持ちで部屋に来た


「フォーラ、僕達は大事なことを忘れていたよ」

ラテルが言ってる意味が分からない

「えっ、何のこと?」

「俺達が誕生日って事はだ

 クーエラの誕生日ってことだ」


ルクトに言われ、ハッとした

忘れてた~!

クーエラは三つ子と同じ10月23日生まれだ

なのにプレゼントを忘れてた!


これは不味いぞぉ

クーエラは六人兄弟の末娘で

甘やかされ放題で育ち

女子特有の機関銃トークがお上手で

文句を言い出したら止まらない

聞いてたら耳が痛くなる

私の外見は女でも魂は男

女子の機関銃トークは恐怖なんです

絶対にクーエラからネチネチと文句攻撃

間違い無しだぁ~!


トーキスとスイークは

カイッソウガに住むクーエラへ

誕生日プレゼントを送ったそうで

雄義隊や写真館の仕事で忙しいシュアスも

プレゼントが誕生日に着くようにと

発送したそうだ

いつもながら

シュアスの心配りの細かさには感心するなぁ~


って感心している場合じゃぁ無い!

どうする⁉

『はぁ~』

三つ子のシンクロ溜息・・・


「ここは奮発して

 高価なプレゼントを贈ろう」

「ああ、そうだな。

 クーエラの怒りを収めるには

 それしかない」

「えっ⁉私そんなにお金無いよっ」

「分かっているよ

 僕とルクトが足りない分は出すから」


おぉ、有り難いですぅ

持つべきものは仲間であり

同志であり

三つ子の弟達だな

明日、仕事帰りにプレゼントを買い

カイッソウガに住む

クーエラへ送ることで一件落着


「ところでフォーラ

 今日から16歳なんだから少しは周りに

 もっと気遣いをしろよな」


いきなりルクトオジさんの説教ですよ~


「そうだね、

 もう少し女性らしく振舞わないとね」


元王子まで説教かよ~!


女性らしくってなんだよ⁉

私は蝉丸、男ですってんだ!


ふぅん??

16歳・・・?

あれっ

初めて聞くぞ16歳・・・


「私、16歳?」

「そうだよ」

「そうだ」


「えっ16歳に成ったの?」

「そうだよ、フォーラどうしたの?」

「そうだ、どうした?

 16年生きれば16歳に成るだろうが」


「私・・・初めて・・・

 転生人生で初めて16年も生きたよ!」

「そう言えば以前に蝉丸は

 15歳までしか生きた事が無いって」

「言ってたな、6歳の時にそう言ってた」


そうです

今迄の転生人生は

何故だか毎回15歳で死んでました

だから記憶する限り

初めての16歳なんです!


今回22回目の転生は

可笑おかしな事ばかりだ

地球じゃ無い星に生まれて・・・

これはウーシアのせいだけどね

三つ子に生まれて・・・

これもウーシアによる巻き込まれ事故ね

女に生まれて・・・

これは・・・

これもウーシアのせいかぁ?

たぶんそうだ、そうに違いない

悪い事は、ぜ~んぶウーシアの仕業だ!!

のっぺら坊の人攫ひとさらいのくせに

何が守護神だよフッン!


転生22回目にして【16歳】・・・

初めて耳にする【16歳】の響き・・・


これはあれかっ

今世での私の行いが良いからか?

それとも私が陰陽師として成長したからか?

だから無事に16歳を迎えたのか?


両方だ!

うん、両方だな間違い無い!

だって私、蝉丸は

フォーラとして頑張ってるもんね~

エヘッエヘッ


転生人生初となる16歳!

目出度い目出度い!

16歳って、どんなんだろぅかぁ・・・

これから先を思うと

何だかワクワクしますぅ~。











 


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