第38話 雄義隊

翌日

仕事が終わってから報告と称して

三つ子とディウで

王宮諸事総取締役のシーバンに会いに行った


本当は昨夜の作戦会議で決まった

❝ソベクの屋敷から

人身売買やアーザスとの繋がりを示す帳簿を

密かに盗み取る❞作戦の報告なんです


諸事総取締役執務室に入ると

シーバンジイさんの眼は

鋭くディウをにらみ付けた

なに睨んでんだよジイさん⁉


ラテルがこれまでの

❝打倒アーザス組織❞の活動と

昨夜、討議した作戦の説明をした。


「おお、なんと素晴らしい働きか。

 感服致しました!」

「ゴッホゴッホ」

とラテルが慌てて咳払いをしたので

ジイさんは、しまった!的な顔をして


「感服したぞ」

と言い直した

やれやれ、ジイさん頼みますよ

ラテルが元王子の転生した姿である事は

超極秘事項なんでからね!


ジイさんはディウに鋭い視線を送ったまま

「それで本当に信じて良いのだな。

 そなたが

 アーザス公と親しい家柄である事は

 特別学問所へ入所した時から

 調べは付いている」


流石さすが、王宮諸事総取締役だ

王宮に務める者の素性を把握している

だがそれは

全ては若きクシマイニ国王を

アーザスから守るためなのだそうだ

誠に良き臣下である

褒めて遣わすぞよっジイさん


しかし真の友としてディウを援護せねば

「ジイさん!」

しまったぁ~

ついつい心の中の呼び名が出てしまった~

しれっと無かった事にして言い直そう・・・

大丈夫きっとばれて無いさぁ・・・


「シーバン様

 ディウは裏切りません絶対に!」

イさんはラテルに目をやった

ラテルがうなずくのを見て

「分かった信じよう。

 それで、私は何をすれば良いのだ」


ジイさん!

私の抗議は無視で

元王子ラテルの言う事は有りかよ⁉


「二日後に

 ソベクの屋敷から奪う証拠となる帳簿を

 来たる時まで

 内密に預かっていただきたいのです。

 誰も証拠となる帳簿が

 陛下のおそばに有るとは思わないでしょう」


ラテルの願い出にジイさんは

「なるほど、灯台下暗しと言う訳か

 承知した」

と快諾した


ラテルが言う事には何でも承知するのは

ラテルの中身が

転生したニナオイスⅢ世だから仕方ないが

私達への態度が露骨に違うのは

如何いかがなもんですかねぇ

ちょっと差別的取扱いじゃないんですかぁ?


雄義ゆうぎ隊の活躍を期待する。

 が、くれぐれも無理をせず

 命を大切にして欲しい」

『はっ』

皆で仲良くジイさんにお返事して終了。


雄義ゆうぎ隊❞とは・・・


―――――――――


昨夜

三つ子・シュアス・ディウ

ディーゴ・オスタで行った会議

終盤に差し掛かった頃

ルクトが

「組織に名前を付けてはどうだろうか」

と言い出した

それを受けてディーゴが

わたくしも賛成です。

 正式名称を付けることで

 結束力が生まれ志気も高まります。

 何より、自分達は烏合の衆では無いと

 誇りも持てるでしょう」


なるほどねぇ

一理あると思います

私も賛成!


「彰義隊とか新選組なんて、どうだろう」


ルクトが目を輝かせながら言ってるよ~


「ダメでしょっ、それパクリでしょうが!」

「じゃぁ海援隊はどうだ?」

「それもパクリでしょうが!

 だいちタスジャーク国には

 海が無いんだよ!」

「いいじゃないか、細かいことは。

 ここは地球じゃないんだし

 真似しても分からんさぁ

 俺は子供の頃から

 幕末志士に憧れているんだよなぁ~」


憧れてるんだよな~

じゃ無いですよ

いいんですかねぇ

元大学教授57歳がパクッたりして


「ダメです、絶対にダメ!」


私とルクトの遣り取りを聞いて

皆がポカンとしている

不味い、不味いです・・・

転生の秘密がバレる

なんとか誤魔化ごまかさねばぁ


「ルクトが言った名前は・・・

 既に国外に有るからさぁ」


ああ、そうか成程

と皆さん納得してくれた

皆さん素直な性格で助かります~


今度はディーゴが

「故ニナオイス王子からお名前を頂戴して

 ニナオイス隊で如何いかがでしょうか」


それもダメでしょうがぁ!

転生したニナオイス王子本人が

ここに居るでしょうがぁ!

どんだけラテルが好きなんだよ⁉


「それは・・・ちょっと

 ・・・無しかなぁ」

ほぉらぁ

ラテル本人が恥ずかしそうに却下したよぉ


「そうですかぁ無し・・・ですかぁ」

おーいディーゴさん

なに残念そうにしてるんですかぁ⁉


その後も色々な案が出されたが

意見はまとまらない

ここは陰陽師である私の出番ですなっ


「私が星を読んで決める。でいいでしょ⁉」


シュアス・ディウ・ディーゴ・オスタが

??な顔をしている


ラテルとルクが

「フォーラは占星術が得意なんだよ」

「そうだそうだ、占星術なら間違い無い」

と取りつくろってくれ皆の同意を得た


「星を見て来るからしばしお待ちあれ」


そう言い残し外へ出た


勢い良く空を見上げたら・・・

あれっあれあれ?

よく考えたら地球じゃ無いんだから

星の動きが違うじゃん!

どうしよう・・・

今さら出来ません、なんて

カッコ悪くていえないよぉ


う~んう~んう~ん

どうする?

どうする~?

よし、こうなったら私が考えてしまえ!


考えて考えて考え抜いて~~~

ひらめきました!


部屋へ戻ると皆から注目の的

おどおどするな蝉丸!

噓も方便だ!

噓も方便の使い方が違うけど

まぁ小さな事は気にしません!


「発表します

 星を読み取り出た名前は❝雄義隊❞です!

 雄とは勇ましく胆力知力に優れたさま

 義とは、美しく正しいさまを指します!」


どうだろうか・・・?

皆さん納得するかなぁ?


「いい名前だ!流石は占星術だね」

シュアスがそう言うと

皆も続けて褒めちぎるので

へッへへ、嬉しいです!


くして

❝打倒アーザス地下組織❞は

正式に名を❝雄義隊❞と改めたのでした

本当は私が考えた名前だなんて事は

墓場まで持って行きます

悪しからず。


―――――――――


作戦決行の日が来た

今回は三つ子も初参加しま~す

ヤッホ~イ!


ラテルとルクは

ディウ・オスタと共にソベクの屋敷へ行き

アーザスとの繋がりを示す裏帳簿を頂きに


私とシュアスは

ディーゴひきいる雄義隊と共に

罠にはまった振りをして

悪党共をボッコボコにする作戦

顔を見られると不味いので

今回からは目出し帽を着用する

目出し帽は私のアイデア

最近の私は冴えてる~


さて、

お時間です

いざ行かん

正義の旗のもと

って一人心の中で言ってみたけど

なんかカッコいいじゃんかぁエッへへッへ。


―――――――――


雄義隊10名

目出し帽で顔を隠し息を潜めて

国境近くで待ち伏せていたら

情報通り二台の馬車が来た


周りを囲むように馬に乗った者が8人

御者ぎょしゃが2人

馬車の中には何人が潜んでいるのか分からない

まぁ何人であろうが恐れるに足らず!

である


私は小高い丘の上から

呪術・曇華風恒うんげふうごうを使い

一度に二台の馬車の

御者を射抜くのが役目です、エッヘ


丹田たんでんに氣を集め

静かに呼吸を整え「曇華風恒」

暗い夜空に向け高く二本の矢を放つ

放たれた二本の矢は

見事に御者の体を射抜いた


馬が驚き歩みを止め

ガタンと音を立て馬車が止まった

と同時に馬車の中から

悪漢あっかん達がどっと降り出た


あらら~

予想より敵は多いですよっ

せいぜい20人程だろうと言ったよねぇ?

オスタさんの報告では

20人程だったよねぇ?

どう見ても倍の40人は出て来ましたよっ

どうすんだよー⁉

こっちは10人だよヤバイよ!


罠にはまった振りをして敵の裏をかく

でしたよねぇ?

これ不味いでしょうが

どうすんだよ~!

これじゃあ逃げられない

皆、殺されるちゃう!


ディーゴに

「フォーラ様は矢を射るだけですよ」

シュアスからは

「危ないからフォーラは下に降りないこと」

と言われてたが

そんな場合じゃぁ無い!

この蝉丸が無残無惨むざむざ

同志が殺されるのを見てられるか!


あれっ?

私は何時から他人を助ける為に

なんて思うようになったの?

これまでの転生では

目の前で味方が殺され死んでも

それがその者の定めと傍観していたのに・・・


いや、今は悪い頭で考えいる時間は無い


へんめいでん!」

氣を集中し大きく唱え

馬車を目掛け小高い丘から飛び降りた


「でぃえーい!」

剣を振り落とすと

馬車は見事に真っ二つに切れた

馬車が崩れ落ちる音に、何事か?

と皆の動きが止まったって

いやいやいや、

味方まで驚いて止まったらダメでしょがぁ


あらまぁ

都合よく悪漢達の真ん中に降りたよラッキー!

私は、そのまま剣を振り回し

一度に7人を切った

噴き出す返り血を浴びながら前へと進み

次の奴を切りつけた


これなら勝てる

こっちだって手練れの者が揃っているんだ

ガンガン行きますよ~!

後は術など必要無い

日頃の武術鍛練がものを言う

一人また一人と切り進み

シュアスの所へ辿り着いた


シュアスは私だと気付き

小声で

「何をしてるの⁉

 危ないから来るなと言ったでしょ」

「危なかったのは、そっちでしょ」


と話しているや先に

剣を振りかざして襲ってくる悪漢

そいつを蹴り倒し上から剣を腹に刺した


「だから、危ないから逃げなさい」


五月蠅いなぁシュアス

そんな事より

「シュアス兄さん、後ろ!」

直ぐ様に後ろを向き、悪漢を切るシュアス

うん、なかなかの腕前だなっ感心感心である


「逃げなさい」

「嫌だ」

と兄妹で言い合っている間に

雄義隊は悪漢達を全滅させた


「フォーラ様、何をされているのですか⁉」


ディーゴまで五月蠅い!


「別にぃ~ただの散歩ですぅ~」

不貞腐れて言ってやった

ふっんだ!

私が来なければ

皆さん死んでたかも知れないのにさっ!


ディーゴが部下に

「御者を連れて来い」

と命じ部下が一人走っていた

が、直ぐに戻り

「二人共、矢が刺さり死んでおります・・・」


『はあぁ⁉』

と言いながら

シュアスとディーゴが振り返り私を見た


何ですかぁ?

私は言われた通りに矢で射っただけですけど?

矢が刺されば普通は死にますよねぇ、

ねぇ


「フォーラ・・・

 御者は生捕りにして情報収集に使うと

 作戦会議で決めたよねっ

 言ったよねっ、聞いてたよねっ」


えっ⁉

そうだっけ?

あれっ⁉

そんな事、言われたっけぇ?


「フォーラ様、私もお願い致しました」


ゲッ・・・ディーゴまでが呆れた顔してるよ


あれ~おっかしいなぁ~聞いたっけかなぁ~?


「フォーラ!また会議中に耳を塞いでいたね!」


そうです、シュアスの言う通りです・・・

だって皆が難しい言葉を使うからぁ・・・


あああああぁ!

失敗しちまったあああああぁ!


死んだ者は生き返らないぃぃぃぃぃ!


はあぁ~もう溜息が出ちゃうわぁ


取り敢えず・・・

「ごめんなさい!」


―――――――――


ソベクの屋敷へ向かったラテル達と

雄義隊の隠れ家で落ち合った


隠れは随時、何件か用意されている

そして

隠れ家自体を新しく用意して

古い隠れ家は捨てる

こうする事で

敵が雄義隊の居場所を特定しづらくなり

皆の安全が保てるのだ

と、ディーゴが言っていた

さすが戦にけた元近衛兵隊長である。


ラテル達は既に隠れ家に着いていた


私の姿を見るなりルクトが大声で

「フォーラ!」

と呼ぶので

間違えて御者を殺した事を怒られるのだ

とビクビクしていたら


「どうした、その血は⁉

 どこを怪我した?早く手当てを!」


あれっ?

もしかして心配してくれてるの?

よく考えたら御者の件は

まだルクト達はまだ知らないじゃん


うわぁ~何時も怒るばかりのルクトが

私を心配してくれているぅ

なんか感動だぁ嬉しいですぅ~


「大丈夫これは敵の返り血ぃ

 どこも怪我は無いよぉ」

「無事で良かったぁ」


ルクトって本当は優しいんだなぁ

これからは私も

ルクトに優しくてや~ろおっと


「こちらは、無事に帳簿を入手したけど・・・

 あれっ、シュアス兄さん御者は?」


あっ!

ラテルの奴、余計な事を聞くなよ!


「それが・・・フォーラが・・・」


あっ!

シュアスの奴ばらすなよぉ!

あぁ~御者を殺したのを

皆さんに漏れなく知られてしまった~


「フォーラ!

 人の話は、ちゃんと聞けと

 何十回も何百回も言ってるだろうが

 いい加減に覚えろ!」


ヒィ~

いつも通りにルクトに怒られたぁ~

やっぱりルクトなんて

死んでも優しくしてやらんぞ!

フッンだ!



























 

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