第34話 王宮特別学問所

例年5月1日が

王宮特別学問所の入所式なのだが

今年は王陛下の婚儀が執り行われるため

日程が延びた。


5月1日

晴れ渡る青空の下

大聖堂に於いて

クシマイ二国王と

隣国ノスカラ国のヌーメイン第三王女の婚礼が

執り行われた

婚儀終了後は王宮まで市中をパレード


この婚礼を祝い国中がお祭り騒ぎだ

5月1日~3日まで祝日となり

王都に地方からも人が押し寄せ

沿道は両陛下のお姿を一目見ようと

黒山の人だかり


私とルクト、双子の弟とディーゴは

写真館の二階からパレードを見た

王は無表情なまま

沿道の民に手を振っている

対して16歳の王妃は

明るい笑顔で民へ手を振っている

自由奔放でありながらも

凛としたたたずまいからは

王妃の心根の強さを感じ取れる


「いい王妃だな、実に目出度い」

「そうだね」

とルクトに応えながら

ディーゴの顔を覗き込むと・・・


ディーゴは複雑な顔をしている

王の結婚は嬉しいだろう

自分が王宮を後にした当時は

まだオムツをしていた幼い王子が成長し

妻を迎え国民から盛大な祝福を受けている

その姿を見て嬉しいに決まっている

だが・・・

アーザスの思惑が・・・

これからどの様に王をおとしめていくのか

ディーゴの不安と焦りは募るばかりだろう。


もう一人ディーゴと同じ思いの者がいる

言わずと知れた

前世で現王の兄だったラテルだ

なんたってラテルは

弟と民を守る為に守護神ウーシアに願い

転生したのだからな


そのラテルだがぁ

今この場所には居ない

その訳は・・・

なんと!

王室から

ラルトス・カンパニー写真館に

婚礼の記念写真撮影の依頼がきたのだ!

ついに王室からも撮影依頼がきましたよ!


と言う訳で

ラテルは養兄シュアスと共に

王宮へおもむいております


ラテルも複雑な思いを抱きながらも

弟の晴れ姿を間近にで見ることができて

良かったなぁと私は思う・・・。


―――――――――


5月5日

王宮特別学問所の入所式が行われた


学問所は勿論、王宮の中です


三つ子で揃って扉を開き

いざ!と学問所となる部屋へ入ると

あれ?・・・

「ねぇ、明らかに6人以上居るよねぇ?」


私達を含めて20人は居る


「レアリヒカ学園からは6名だけど

 身分に関係なく優秀な者は

 公爵家か侯爵家の推薦が有れば

 入所できるんだ」


へぇ~そうなんだぁ、知らなかったぁ


「ラテル、何でそれを教えなかった⁉

 推薦があるなら

 あんな苦労して勉強せずに済んだじゃん!」


私の苦労は何だったんだ!

ルクトに怒られながら必死に勉強したのに!

何度ルクトを殺しかけたことか・・・


「あぁそれね。

 ゴコーゼッシュ家は

 公爵家や侯爵家との繋がりが無いから

 無理だったんだよ」

「本当に?私に意地悪したんじゃ無くて?」

「意地悪なんてする訳無いでしょ」


「フォーラ、お前は正真正銘のバカだった。

 それが努力して、ここまで利口になれた。

 本当に偉い!(俺)」

「えぇ~そんなに褒めないでよ~照れるな~」


こんなに褒めてくれるなんて

あぁ~

ルクトを殺さないで良かったですぅ~


「おお!ディウじゃないか!」

「えっ。本当だディウが居る」


あの元いじめられっ子のディウが

ちゃっかり座ってますよ


「ああ、そうだね」

私とルクトは驚いたのに

ラテルはあっさりとしている


「ディウ、推薦してもらえたの?」

「うっ、うん」

「良かったなぁ

 ディウは成績も性格も申し分ないからな。

 これからも仲良く学ぼうな、なぁラテル」


ルクトの呼びかけにラテルは

「あぁ、そうだね」

とだけ言い

例の考え事中のドヨンドヨン顔をしだした

ラテルは一体

何を悩み考えているんだろう・・・?


学問所で習う事は

主に王宮の仕来たりを学ぶのだが

その内容は

日本の公家や武家の仕来たりに酷似している

これなら研修3ヶ月間楽勝ですわぁ

へッへへ、ラッキー!


それにしても

始祖王が制定した

王宮の仕来たりといい風習といい

「身分に関係なく優秀な人材を取り立てる」

習わしといい

私とメチャクチャ気が合いそうですよ

ミツザネ始祖王さん


ルクトは学園時代から

ディウがお気に入りだったが

学問所に入ってからは

以前よりも増して仲良くなり

ほぼ毎日のようにディウは

ゴコーゼッシュ家別邸へ遊びに来る


ディウは

私にはチンプンカンプンなルクトの科学の話を

真剣に聞くのみならず

質問までするものだから

ルクトオジさん非常に嬉しそうだ

ケッ!

私には怒ってばっかのくせして

これは差別ですよ!


ラテルは、なぜか意識的に

ディウを避けているようなぁ・・・

誰にでも満遍まんべんなく社交家のラテルが、

無愛想なわきゃ無いよな

きっと、王権復古の件で忙しいのだろう。


―――――――――


5月半ば

ディーゴの元部下で

反アーザス派地下組織との連絡係を務める

ゴコーゼッシュ家護衛係の

オスタから報告があった

又しても、アーザスの手先商人ソベクが

人身売買をすると・・・


またやるんか~い!

金の亡者が~!


「今回も阻止する、一人の漏れなく助け出す。

 ディーゴ、オスタ滞りなく頼む」


そう静かに凛と言うラテル

ちきしょう

なんかカッコいいぜ


ディーゴの指揮のもと

救出作戦は上手くいった

シュアスは作戦に参加したのに

今回も三つ子は留守番係で物足りない気分です。























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る