第30話 15歳の初恋

やりました~!

やりましたよ~~!

私は無事に七年1組に入れました~!


これでクラスで卒業時に成績が

上位6番以内を取れれば

王宮特別学問所へ入り

王宮で王の近くで働くことができる。


私が1組に入れたと知った時ルクトが

「良かった!よく頑張った!」


と涙を浮かべながら褒めてくれた!

と思ったのに・・・


「本当に俺は頑張ったぞ。

 こんな不出来な奴を、よくぞ押し上げた!

 俺の苦労が報われた」


と自分で自分を褒め称えていやがる

私が頑張ったのにー!

私の頑張りは無視ですかぁー⁉チッ!


この4月からは

双子の弟トーキスとスイークも

晴れてレアリヒカ学園に入学だ


生まれた時は

猿と見分けが付かなかった二人が学園生とは

すっかり人間らしく成長したものだ

兄、いや姉として実に感無量である。


――――――――――


さあぁ今日から七年生、そして1組だ!


やっと小生意気娘マイナとお別れできた

マイナは口は達者だが勉強はダメダメ

なので当然の結果だ

ふっん、ざまぁである。


アッサも1組には成れなかったのだが

「私は成績は、そこそこで良いの

 卒業したら、お嫁に行くから」


だそうである

まさに、人生いろいろだ。


元いじめられっ子のディウは1組になった

ディウも王宮特別学問所を目指している

今日からはライバルだな

否!クラスメート全員がライバルである。


王宮特別学問所は成績が優秀であれば

出自に関係無く入所できる

それは、始祖ミツザネ王の

【身分に関係なく優秀な人材を登用し

  更なる国の繫栄と安寧を創造せよ】

との訓示である

なかなか良いことを言う始祖王ではないか

感心、感心。


――――――――――


自分の席に着こうとしたら

誰かが前にはだかった

なんだよっ

初日から喧嘩でも吹っ掛けるつもりか⁉


そいつに目を向けたら・・・


「貴女がフォーラさんね私はゼネッス

 女子は二人だけだから仲良くしてね

 フォーラさんがいてくれて心強いわ」


と言いながら、いきなり手を握り

そして立ち去った・・・


なっ、なんだ、いきなり・・・


黒髪に緑色の瞳・・・

小鳥のさえずりりの様な声・・・

白くて柔らかい手・・・

爽やかな風の様な笑顔・・・


「おいフォーラ、早く席に着け

 なにボーッとしてるんだ⁉」


変だなぁ・・・

胸がドキドキする・・・


「おい、フォーラ。どうした?

 ラテル来てくれ」

「どうしたのルクト?」


何故だか体が熱くなる・・・


「フォーラが変だぞ、顔が赤い」

「本当だ。熱が有るようだね

 フォーラ大丈夫?」


何なんだ、こっこれは・・・

これはいったい何んなんだ


「丈夫だけが取り柄のフォーラが

 熱を出すなんて」

「帰らせた方が、いいかなぁ?」

「初日から早退かぁ?」

「でも、こんなに顔が赤いし

 ねぇフォーラどうしたい?」


「ゼネ・・・かっかわい・・・」


「はあ⁉何を言っている?熱でうわ言かぁ?」

「やはり帰らせよう」


気が付いたら自分の部屋のベッドの上だった

全身の力が抜け、ただ天井を見つめている


夕方になり皆が学園から戻ってきた


「フォーラ姉さま~」

トーキスとスイークがドアの外から呼んでいる


「二人とも、フォーラは病気だからダメだよ」

「そうだぞ、お前たちにうつったら大変だ

 入ったらダメだ」

『はーい』


ラテルとルクトが部屋に入って来た

「医者はどこも悪くないと言ってたよ」

「クラスで何か嫌なことでも有ったのか?」

「何も、無い・・・」


嫌なことは何も無かった・・・


「お前、ゼネッスと話していたろ?」


ゼ、ゼネッス・・・ゼッゼッゼッ


「おい、また顔が赤くなってるぞ」

「これは、もしかしてぇ・・・」

「はぁん?なんだよラテル」

「恋、じゃないのかなぁ」

「あぁ、そうかぁ。なるほど、恋かぁ」

「一目惚れだね」

「そうだな。蝉丸が一目惚れ、だな」


こいつら何を言っている?


「私は恋などしていない

 一目惚れとはなんだ!失礼な」

「じゃあ聞くけど

 今日ゼネッスと初めて会ってどう思った?」

「どっどおって・・・可愛い・・・」

「それで、胸がドキドキしたか?」

「した」

『それは恋だ!』


ゲッ!

久しぶりのラテルとルクトのシンクロ発言


「恋なんかしない!

 22回の転生で、そんな物に・・・

 こっこっ恋いなんぞに

 うつつを抜かした事など無い!」


ラテルとルクトが私の肩に手を置きながら


「まあまあ、そんなに、いきり立つな」

「そうだよ、恋することは素敵なことだよ」

「だから!恋なんてしてなーい!」


「でも、お前はゼネッスの事を考えると」

「体が熱くなり胸の鼓動が早くなり

 彼女の顔が目に浮かぶ、だろっ」

「そうだけどっ。だから何なんだよ」


はぁ~と溜息をつきながらルクトが

「初恋はなっ、誰でも経験するもんだ。

 俺の初恋は14歳だった」

「僕は7歳だった。誰でも通る道だよ」

「そうだぞぉ、悪い事ではない」

「そう、恋は素晴らしい」


オジサンルクトが恋を語ると

なんか違和感が・・・

ラテル元王子が恋を語ると

なんかムカつく。色男が!


「私は、どうすれば良いんだ⁉」

「素直に、気持ちを伝えればいいさぁ」


そうなのかぁ気持を伝える・・・

はっ恥ずかしいぃ~!


「そうだな、素直に・・・

 ってダメだろ!蝉丸はフォーラだぞ」

「はっ、恋の話しに夢中で忘れてた

 蝉丸の体は女の子だった」


あっ、自分でも忘れていた!

そうだ、中身は蝉丸でも今の外見は

・・・女子だ・・・

魂も心も男なのに・・・


「落ち込むな蝉丸、ものは考えようだ」

「どう考えたら良いの?ルクト」

「ほらっラテル

 恋のアドバイスは、お前が適任だろ」

「えっ⁉僕?」

「お前だ」

「あぁ~あれだっ、蝉丸、初恋は成就しない

 それが初恋の常なんだ。

 あぁ~だから

 ゼネッスとは・・・

 仲の良い友達になるのが一番だよ」

「そうだぁそれがいい!

 俺も賛成だ友達になれ」


友達かぁ・・・でも・・・


「それで胸のドキドキは治るの?」

「恋なんて移り気なものだから

 そのうち冷めるよ」


自信満々にラテルが言うのだから

きっとそうなんだろう

私は恋については無知なのだから

恋多きラテルに従っておこう


「分かった、友達になるよ」

「そうかそうか。うん、それがい

 じゃあ今日の授業を勉強しよう」

「えぇっ~勉強するの~⁉」

「当たり前だ!」


そうですよねっ!当たり前ですよねっ!


――――――――――


翌日

教室に入るなりゼネッスが私に駆け寄り


「フォーラさん、もう大丈夫ですの?

 熱は下がりましたの?」

「ひぃひゃふぅふで、でぇいじょうぶですわは」


口が上手く動かない

ドキドキが止まらない


「良かったぁ」

そう言いながら微笑むゼネッス

なんて可愛らしいんだ・・・


「改めて、宜しくねっ」

グワーッ!また手を握ってきたー!

どっどっどっどうしたらいいんだぁー?

そうだ、友達、友達、友達だっ!


「どっでっぞっででっ」

「えっ?なんて言ったの?」

「ぐぉぐぉ、お友達になってくださーい!!」

「勿論よっ、今日から親友ねっ!」


ふうん?なんだ?

いきなり親友?

簡単に軽々しく親友と?

やっぱり女心は分からん

理解不能である。


ラテルの言う通りだ

少しドキドキが治まった

でも・・・やっぱり・・・

ゼネッス可愛い・・・



それからは教室以外ではアッサも加わり

三人で仲良く

にぎやかに交友を深めた

私は無口で

喋ってるのは

もっぱらゼネッスとアッサなのだが


今はゼネッスを、妹のように思えてきたし

彼女が笑っていられれば・・・それでいい

その笑顔を守りたいだけだ。


「フォーラ忘れるなよ

 ゼネッスはライバルでもあるんだぞ」


ルクトオジサンよ

そんな事は百も承知です!


でも、ふと考える・・・

もし、私がフォーラでなかったら

もし、朱鷺門領詮を滅する使命がなければ

もし、違う世界で出会っていたら

二人の関係は、違う形で・・・


こうして私

兎良蝉丸の初恋とやらは

友情へと進化を遂げた

そして

今までとは違う切なさを覚えた15歳の春。






























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