第27話 何で?・・・友達?

寄宿舎で過ごす最後の三学期・・・

春休みには三つ子は別邸へ移り住む


私は寄宿舎での生活が嫌いではない

ラテル・ルクトとの三人だけで会えない

不便さは有ったが

ガキ共と一緒に飯を食ったり

お喋りしたり

勉強を教えるのも楽しいものである。


――――――――


授業を終えて校舎から寄宿舎へ向かう途中

林の奥から人の声が聞こえてきた

どうせ又どこぞのバカ男子等が

決闘でもしているのだろうと

通り過ぎようとしたら

「やめてよ」

と声がする

はてな?

決闘ならば⦅やめてよ⦆では無く

⦅かかって来い⦆が定番なのだが・・・?


ラテルが何故だか林に向かって歩き出した


「おいおい、何してるんだよ⁉」

「あの声は聞き覚えが・・・」


どれどれ

と三つ子でそーっと林に入った


「ねぇ、知ってる子なの?」

「うん、クラスメートのディウだ」


ふぅん、ラテルのクラスメートなのか

なんか、悪そうな奴らに囲まれてるよぉ


「彼は成績優秀だけど大人しくて

 それに・・・」


それに?

なんだよ⁉


「ディウは男爵家なんだけど・・・」


だからぁ、何だよ早く言えよ!


「爵位は買ったもので、それが原因で

 いつも悪いクラスメート等から

 絡まれているんだ」


なんと!

爵位を金で買った奴を初めて生で見ました

これはルクトの時みたいな勘違いでは無くて

物本のイジメですよねぇ?


「おい、ラテル。どうする?止めに行くのか?」

ルクトの問いに

「うーん・・・」

と悩むラテル


ラテルが悩んでいるのは・・・

例のルクトがイジメられてると勘違いして

上級生をボコった結果

上級生の間で

〘ゴコーゼッシュ家の三つ子と

 目を合わせると襲われる〙

との噂が流れ

やっと噂が消えたのに

ここで助けに入って

再び可笑しな噂が立ったら困るよねぇ。


「あっ!」

「どうした、フォーラ?」


「殺気を感じる

 ディウはポケットに何か入れてる」

「そんな事が分かるの?」


私は陰陽師だぞ

それぐらいの殺気は察知できるんです!


「何かって、なんだ?」

「ナイフかなぁ」

「止めないと。誰が行く?」

「こういう時は女にかぎる」

「そうだね

 女性が出ていけば丸く収まるよね」


へぇ~

そうなのかぁ

でも、

いまここに女子は居ないからなぁ・・・


「おいフォーラ、行け」

「はぁ?なんで私?」

「お前、女だろうが」

「そうだよ、フォーラは女の子でしょ」


そうでした

忘れていました

私・・・中身は男児でも

外見は12歳の女子でしたぁ


「嫌だよ、面倒くさいもん」

と私が言ってるのに

ルクトが

「いいから、行け!」

と私の背中を両手で"ドン"と押しやがった


勢いよく飛び出し

止まれずに、そのままディウに体当たり

ディウも悪ガキ共もビックリしている


ビックリしてんじゃねえよ

こっちがビックリなんだよ!


それでぇ・・・この後は・・・

どうすりゃ良いのよぉー⁉


「やあ、ディウ。ここに居たのか」

ラテルが現れたよ


「おう、ディウ。探したぞ」

ルクトが噓ついてるよ


ディウもガキ共も

ゴコーゼッシュ家の三つ子を見て驚いている

三つ子と目を合わせると襲われるの噂は

まだ生きてるのか?


「えっ⁉僕を探してた?」

ディウは随分と

か細い声で話す奴だ


「君たち、僕らはディウ君と先約だよ」

「そうだ、邪魔をしないで欲しい

 なあ、フォーラ」


えぇー!急に振るなよなあぁ!

「そっ、そうよねぇ」


ラテルが強めに

「君たちは、僕らの友達に何の用なのかな⁉」


えぇー!

いつ友達に成ったの?

ディウなんて知らないよぉ


ガキ共は

「もごもご・もごもご」

と口ごもりながら消えて行った


ディウは三つ子を怪訝そうに見ながら

「僕は約束なんかしてい無い

 それに、友達なんていないから」


何だよ、こいつ

助けてもらいながら、なんて言い草だよ

私だって

お前を友達にした覚えは無いですよ


「おい!ディウ

 ポケットの中の物を出せ!」

オジサンルクトは、こんな時に遠慮が無い


「いいから、早く出せ」

ルクトは

勝手にディウのポケットに手を入れ

ナイフを取り出した


「ほらねぇ隠してたでしょ、ナイフ」

どうだ!私は凄いだろ!

皆で褒めるが良かろう!


「これは、俺が預かる。

 あんな奴らは相手にするな」

「そうだよ、ディウ僕らは友達だろ」


だぁかぁらーあ

いつ友達になったんだよ⁉


「僕に友達なんか・・・」

「はい!何も言わない

 今日から友達だからな」

またぁ~ルクトのお節介がぁ~


「さぁ、一緒に寄宿舎のラウンジへ行こう

 ルクト、ディウは成績優秀なんだよ」

「それは都合がいい

 フォーラに勉強を教えてくれ」


えぇ~!

何でだよ~⁉

勝手に決めるなよ~!


ディウは三つ子が怖かったのか

それとも突然の事で頭がバカに成ったのか

大人しく付いて来た


それからは、ディウは三つ子と仲良くなり

性格も明るくなったし

自己主張も出来るようになったし

クラスの悪ガキ共から構われなくなった

まさに【蘭室の友】効果である


ディウが友達になってから

何故だかクラスメートのアッサ嬢が

以前よりも私にまとわり付いて来る


ラテルが言うには

「フォーラがディウに取られるのを

 警戒しているんだよ」

友達を取られたくない女子特有の嫉妬だそうだ


全くもって女心は理解できない

摩訶不思議である


――――――――


三学期が終わった

寄宿舎に別れを告げ別邸へお引っ越しだ!


なんと喜ばしい事に・・・

私の部屋の壁紙は

花柄でもピンク色でも無い!


爺やの

「フォーラ様は、落ち着が欠けているので

 緑色がよろしい」

との一声で

白地に緑の木が描かれた壁紙となった!

ナイスだ、爺やよ!



写真館は父キチェスの

❝動く広告塔作戦❞が

ラテルの狙い通りに大反響で

開業前から予約が殺到している


勿論ディーゴは別邸護衛係だ

わーい!


そして新たに

護衛係が二人増えた

一人はカイッソウガの屋敷

もう一人は別邸を担当する。

この新入り二人は元近衛兵で

ディーゴの部下だった者達だ。


ディーゴは早速、同志を二人増やしたわけだ

さすがは元近衛兵隊長

仕事が早い!


さあ、これから打倒アーザスが

本格的に始動である!


「おいフォーラ、浮かれるなよ!

 王宮特別学問所に入れなかったら

 仲間はずれだからな」

ルクトの上から目線・・・

意地悪発言は年々と拍車が掛かっている

と思います!

チッ!


まぁ、ルクトの言いたいことは分かります


七年生になれば

成績良い順に1組~3組に分けられる

私は1組に入るのは容易だが

成績が6番以内でなければ

王宮特別学問所に入れない

六年生のこの一年間・・・

頑張らないと・・・


と決意してるところへ

ルクトが

「お前は、死ぬ気で勉強しろ!!」

又しても鬼の一声


クッソー!

絶対に6番以内に入って

ルクトの顔に成績表を叩き付けてやる!























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