第24話 後悔の先へ

冬休みに目前に

キチェスから届いた手紙に

〘王都に、別邸と写真館店舗が見つかった。

 シュアスを伴い王都へ行くので

 皆で一緒に見てからカイッソウガへ帰ろう〙

 と書かれていた。


「別邸は、リフォームが必要だろうね」

「そうだな。店舗も改築して

 現像室を作らないとな」

「自分の部屋の壁紙は、何色にしようかなぁ」

「俺は動物柄は、ごめんだぞ」

「ペイズリー柄なんて、どうかなぁ」

「いや、やはり俺は無地がいいな」

「僕は、柄物がいいなぁ」

「そうだ、写真館には

 撮影用の椅子が何種類か欲しいな」

「ああっ、そうだよね」

 

すいませーん

私も会話に入れてもらえませんかねぇ

あれ~お二人には

私の姿が目に入ってないのかなぁ?


「おいっ!」

「どうしたの、フォーラ?」


「私にも聞けよ。なんか言わせろよ」

「だって、お前

 写真館のことは、分からないだろ」


「そうだけど・・。

 部屋の壁紙どうする?とか聞けよ!」

「だって、フォーラは花柄の一択じゃないか」

      

ガーーン!!

おっしゃる通りです・・・

有無を言わず、可愛い花柄になるでしょう


何故だ、なぜ女に生まれた⁉

これまでの21回の転生は男だったのに

前回の死に際の呪いの掛け方が悪かったのか?

いくら考えても謎だ・・・


ただ、はっきりしているのは・・・

私の部屋は

壁紙も寝具も家具も花柄に占領される事


――――――――


二学期の終業式が終わると

父キチェスがシュアスを連れて迎えに来た


馬車に乗り

そのまま繫華街に購入した店舗を見に行った


以前はテーラーだった店舗は

一階が店で二階は住居になっている


「従業員の寮に丁度いい。

 シュアスの助手が二人は欲しいし

 お父様、できればカイッソウガから

 募集したいのですが」


そうルクトが言うと、キチェスは


「写真館の事は

 ラテルとルクトに任せるから

 好きなようにしなさい」        

と答え


改築業者に向かい

「全て、息子達の注文通りに頼むよ。

 我が家の息子達は優秀なんでねっ」

と、ちょっと自慢そうにしている

親バカぶりが可愛いと思えた


さて、お次は別邸の見学だあー!


でも・・・学園を出てから

なぁんか違和感が・・・


「ああっ!馬車が新しくなってる!」


今までは四人乗りだったのに

六人乗りに変わっているではないか!


「今頃、気が付いたのか」 

ルクトは呆れ

「プップップップ」    

ラテルは笑い

「ハッハハ」       

シュアスは微妙な顔をして笑っている


ウッ・・・皆で私をバカにしてる


「フォーラは細かな事に捉われない

 大らかな性格だからな。

 私のプリンセスは新しい馬車を

 お気に召したかな?」


おぉ、キチェスだけは、私に優しい

ここは、とっておきの笑顔で

「はいっ!とても気に入りましたわ

 父様、ありがとう」

サービス・スマイルだぜっ、へッへへ。


「私も、あの店が気に入りました

 とても住みやすそうです」

シュアスが嬉しそうに言うと

キチェスが

「何を言っているシュアス

 お前には特別な住まいを用意してある」


そうなのかぁ

シュアスには特別な家が有るのかぁ

いいなぁ~


やがて馬車が止まった


「これが、用意した別邸だよ」


って、キチェスさん、大きいですよ!

カイッソウガの屋敷よりも

全然大きいじゃないですか!


「ここは・・・」  

シュアスが驚いた顔をしている

どうしたシュアスよ

やっぱり大きさにビックリしたのか?


別邸の中に入ると・・・


広い!広いですよキチェスさん!

私は別邸と言うから

6LDK位と想像していたんですけどねぇ

やっぱ貴族って、すっげぇなぁ!


「子供部屋は三階だ

 各自、好きな部屋を選びなさい。

 ただし、一番最初に選ぶのはシュアスだ」

 

えっ、てぇ事は

シュアスも、ここに住めるんだぁ

良かったじゃん

でも、なんでシュアスが最初に選べるの?


「ここは、元バルモンク侯爵邸

 シュアスが幼少期まで

 亡き両親と過ごした屋敷だ」


えぇー!

ここは元々シュアスの生家なのぉ⁉


「都合よく売りに出ていたので

 購入したのだ。 

 さあ、シュアス

 自由に好きな部屋を選びなさい」


そんな都合よく売り出されていたとは

信じられないねぇ

本当はシュアスのためにと

大枚はたいて買ったんじゃないのぉ?

キチェスなら、あり得る

なんたって人一倍、情に厚い男だからな


シュアスがは目を真っ赤にしながら

「ありがとうございます。旦那様」 

と口にした


するとキチェスが

「シュアス・・・

 もう私を旦那様と呼ばないで欲しい

 私とリエッドは君をゴコーゼッシュ家の

 養子に迎えたいのだ」


えぇーー⁉

えぇーー⁉

今日は驚きのオンパレードです!!


「それは、それは、できません!」

 

えっ⁉

シュアス、断るの?

なんでぇ⁉


「アーザス公に憎まれている

 バルモンク家の息子を養子にしたら

 ゴコーゼッシュ家に

 どんな災いが降りかかるか・・・」

 

くそっ!

又しても、脳ミソ沸騰野郎アーザスかぁ


「シュアス、

 悲しいかな

 今やバルモンク侯爵を覚えている者はいない

 それに、私はどんな災難が襲ってこようとも

 ひるみはしない。

 この胸に何時でも愛する家族と

 領民を命懸けで守る覚悟を持っている。

 君を養子にしても

 守る者が一人増えるだけの事だ」


今日のキチェスは、カッコいい~!

流石カーシャの息子だ!


黙ってうつむくシュアスに

ラテルがたまらず

「シュアス、僕たち誓ったじゃないか。

 その誓いを果たせば、誰も災いに合わず

 幸せに暮らせる

 だろ?だから大丈夫なんだよ」


そうだ、ラテルの言う通りだ!

アーザスを倒し政権が王の手に戻れば

ゴコーゼッシュ家に災いが降ることは

無いのだ!


ただ勇者になりたい!

と幼稚な思いで始めた”打倒アーザス”だが

平安時代から、ずっと独りだった私にも

仲間ができた・・・

そして、愛と慈しみの情けを知り

己が関わる全ての人を守りたい!

との思いが強く芽生えたのだ。

今や、打倒アーザスは私の明確な志となった。


シュアスは私とルクトの顔を見ている

私達は拳を突出し

大きく力強く頷いた

それを見たシュアスも頷き

意を決し口を開いた


「どうぞ、私を養子にしてください!」


キチェスは

ほっとした顔で

「そうかシュアス、

 私の息子になってくれるのだな」


そして、静かな声で

「我が友よ・・・

 あの時お前を救えなかった事は一生の後悔だ

 いま誓う

 お前の大切な宝は私が命をかけ守り抜くと!」

    

キチェスーーー!偉いぞーーー!

 

ルクト!

さっきっから泣いて鼻をすする音がうるさい!

人間は年を取ると

涙腺が弱くなるのは事実らしい


「ルクト、お前は感受性が豊かだなぁ」

って、キチェスさん

そうでは有りませんからね~

年を取って

涙腺が緩んじゃってるだけですからね~

中身は貴方とは親子ほども歳の差がある

57歳のオジサンですからね~

騙されちゃぁいけませんよ


後日

シュアスは正式に

ゴコーゼッシュ家の養子となった


ようこそ、シュアス!我が兄よ!





    




    

 





 

 


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