第23話 偉大なグランマ

10月23日

昨年に引き続き

ラルフトス・カンパニーから

香水第二段

〔エマ・カーシャ〕が発売開始された

エマとは

EMEROROS・MOTER(聖母)の略だ。


カーシャとは

キチェスの母の名で、私たちの祖母に当たる

三つ子が誕生した時には

既にこの世を去っていた。


今でも古参の使用人や

領民達から慕われる存在であり、

キチェスとリエッドが結婚できたのも

このグランマのお陰であるそうだ。


――――――――


キチェス19才

リエッド13才で二人は出会い恋に落ちた

元々リエッドは平民では無く

伯爵家の生まれだった


リエッドの父親は

美しいと評判高い我が娘を

上位貴族、あわよくば王族の側室にして

強い後ろ盾得ようと目論んでいた

言っちゃぁ悪いが、業突張ごうつくばりり祖父さんだ。


まぁ、今までの転生で

娘や妹をまつりごとの道具にするのは

さんざん見てきましたけどね


ところが

出世の道具になるはずの娘が恋をした

相手は格下の男爵家

領地も田舎で金も権力も無い

リエッドの父は、いくら説得しても

キチェスとの恋を諦めない娘に怒り心頭

使えぬ者は要らない!

とリエッドを除籍し、平民にしてしまった

  

そりゃ祖父さん、やり過ぎだと思うぞ・・・


除籍され生家を追い出されても

リエッドはキチェスを信じた

幼い頃から世話をしてきた婆やが

「お嬢様が不憫だ」

と一緒に生家を出て

自分が働き、リエッドを養っていた

  

なんと忠義に厚い婆さんだ、感動しまたよ

婆やって

いつも話しが長くてウンザリしてたんだけど

この事実を知ってからは

少し我慢して話を聞こうと決めた。


キチェスがリエッドの身の上を知ったのは

除籍され半年以上経ってから

丁度その頃ゴコーゼッシュ家は

キチェスの父親が急死し

若いながらもキチェス領主となり

忙しい日々を送っていた。


キチェスは焦った

愛する人を探しに行きたい!今すぐに!

しかし自分は父の跡を継いだばかり

領地の安寧を保たなくては・・・

領主の責務を全うするか

愛する人を助けに行くか・・・

 

大きく迷うキチェスの

心の内を察した母カーシャは

「なにを迷っているのです!

 答えは一つだけ!

 愛する女一人守れない者が

 これから先

 どうやって領民を守り抜くのです!」

    

祖母ちゃん、カッコいいーー!


「あとは私に任せて

 貴方を信じて待つ人を探しに行きなさい

 その人を連れて戻らなければ

 屋敷には入れませんからね!」

   

ますますカッコいいです、おばあ様ー!


キチェスが探しあてた時には

リエッドが生家を追われてから

2年もの月日が経っていた

    

いやぁ、感動の再会かぁ・・・

電話も無いしねぇ

探すのも大変ですよねぇ


カーシャは

キチェスに連れられ

ゴコーゼッシュ家にやって来た

リエッドの手を握りしめ

「息子が貴女を愛した為に

 貴女に苦労をさせてしまった

 ごめんなさい。どうか許してね」 


そして、リエッドを強く抱きしめ

「今日からは、ここが貴女の家よ

 今日からは、私の大切な娘です

 息子を愛してくれて、ありがとう。

 息子を信じ待っていてくれて、ありがとう」

     

感動的な泣ける話やぁ・・・


この話を知った時

例のごとくルクト号泣

その滝のような涙に、私はドン引き

お陰で感動が薄れるわ!


カーシャが、その言葉通りに

死ぬまでリエッドを本当の娘のように

誰よりも大切に可愛がっていたのは

領内では有名な話だ。


ラテル曰く

「これは、有り得ないことなんだよ。

 いくら貴族出身であっても

 平民になった者を嫁にするなんて

 貴族としての面目に関わる」

  

なのだ、そうである

元王子が言うのだから、そうなのだろう。


案の定、親戚が二人の結婚を猛反対し

「平民の娘を、一族の正室に迎えるなど

 以ての外だ!絶対に許さない。

 家名に泥を塗るつもりか」 

と言ってきた


それに対しカーシャは毅然とした態度で

「貴族と平民の婚姻は

 国の法で認められています。

 私共は、何一つ恥ずかしいことも

 悪いことも、してはおりません」

      

 おぉ、グランマ強気ですねぇ


「リエッドは他人を思いやる優しい心を持ち

 どんな苦境にも負けない

 強い意志を持つ可憐な才女です

 男爵婦人として、領主の妻として

 リエッド以上に

 相応しい女性は他にはおりません!」

 と反対を跳ね除け

 親戚一同を追い返してしまった

      

 肝の据わった祖母ちゃまだ!


そして、カーシャはキチェスに

「これで、若い領主である貴方の

 後ろ盾はなくなりました。

 キチェスよ、

 良い領主を目指してはなりません。

 領民たちが、

 カイッソウガに生まれ育ち良かった

 幸福だと思える領地を目指すのです。

 良き領地となれば

 自ずと良き領主と呼ばれるのですから」

     

 あんたは、井伊直虎かい!


「リエッド、此れからは

 キチェスの支えとなって欲しい

 頼みましたよ。

 二人なら出来ると信じています

 私の愛する息子と娘なのだから」


――――――――


この一件を知り三つ子は感銘を受け

新しい香水の名をカーシャと付けたのだ


香水は透き通る青色で

甘すぎスッキリと

そして心が和む香りに仕上げた。


「今日は発売初日なのに

 化粧品店へ偵察に行かなくていいの?」

心配になり訊いたら

ラテルが

「今回は販売予約を受け付けたからね」

   

そうなの⁉知らなかったですよ


「そうそう、そうなんだ。

 予約数だけでも結構な数だから心配ない」

とルクトは

時代劇の定番”越後屋お前も悪よのう”

の不適な笑みを浮かべている

それが最近は板についてきたので

・・・ちょっと怖いです。

 



      


   
























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