第20話 俱楽部活動

今日10月23日は

三つ子とクーエラの誕生日

そして

香水〔アド・クーエラ〕の発売開始日である

〔アド・クーエラ〕とは

英語の愛らしい

Aⅾorableと妹の名前を合わせて

ルクトが命名した


透き通る紅色の甘くフルーティーな香りで

キャッチコピーは

〔甘い香り・乙女のささやき〕 

もちろん、ラテルが考えた文句だ


ルクトが

「店頭に並ぶアド・クーエラを早く見たい」

と言うので

三人で高級化粧品店を覗きに行くと

販売予告の効果と

国内初の香水が珍しいとで

ご婦人方が列をなし買い求めている


それを見てルクトは

まるで時代劇でお馴染み悪者商人

越後屋みたいな笑みを浮かべながら

「こりゃあ早々に

 香水の第二段を作らないとなぁ」

の言葉にチョット引いちゃいましたっ


――――――――


最近、寄宿舎のサロンで、私が

この私が!

下級生に勉強を教えているのであ~る

エッヘン! 

まぁ、他人に勉強を教えるなどと

面倒なことは好みではないが


他人ひとに教えることは

 自分の復習になるからお前が教えろ」

とルクトに言われ、仕方なくやっている


「フォーラお姉様

 ありがとうございます」

などとガキ共が言うので

「よろしくてよ。

 いつでも教えて差し上げましてよ」


と優しく言いってやり

心の中では

〘ハッハッハッ。ガキ共よ

 この私に教えてもらった有難みを

 嚙み締めるが良い!〙 

と叫んでいるのだが・・・


ラテルとルクト心の声が聞こえるらしく

ラテルは

「プップップップ」

と笑い

ルクトは鼻で

「フッン」と

私を小馬鹿にしたように笑う


私のご令嬢ぶりも板につき

以前よりは苦痛では無くなってきたが

次の転生で

ご令嬢癖が出てしまわないか

心配である・・・。


―――――――


五年生になり、変わった事と言えば

生意気小娘マイナの私に対する態度である


以前のような嫌味を言うどころか

「ごきげんよう」

などと笑顔で挨拶してくる

ゲッ!ゲッ!ゲッ!

こいつ、なにを企んでいる⁉

と警戒していたら

「フォーラのお父様が

 ラルフトス・カンパニーの社長だと知って

 慌てていたのよ」

と、アッサが教えてくれた。


要するに・・・

貧乏男爵家と見下していたのが

今や一躍有名な金持男爵家だと知り

掌返しと言うわけだ。

どんな育てられ方をしてるのか

親の顔が見てみたい!

いや・・・やっぱり親の顔など見たくも無い!


―――――――――



レアリカヒ学園では

五年生になると俱楽部活動が始まり

必ず俱楽部に所属しなければならい

そして私は・・・

乗馬俱楽部に入部した・しました

させられました!


俱楽部選びには悩んでいた

文科系は嫌だし

武術系では人を殺しかねない

手芸部なんて真っ平ごめんである

乗馬俱楽部には、ラテルに誘われた


此れは絶対に、誰にも言えない話だが

私は馬が苦手なのだ

13回目の転生で・・・

馬に蹴られて死んだ・・・

恥ずかしい~

それ以来、馬には乗っていません!

 

なのにラテルが

「アーザスとの戦闘時に

 馬に乗れないと困るでしょ!」

としつこいので

「ルクトが一緒なら入る」

と約束し、ルクトを乗馬俱楽部に誘ったら


「俺は科学俱楽部だ」 

「そんな俱楽部は無いですよ!」

「有る。俺が創設した。学園の認可も降りた」

とニヤリと笑った

マジか⁉

こいつ、いつの間に⁉ 

恐るべしオジサンだ!


「ルクトだって馬に乗れないのに

 科学俱楽部なんだから

 私も他の俱楽部がいい!」

「いいや、俺は馬に乗れるぞっ」 

 

はぁ?ルクトが馬に乗る姿なんぞ

見たこと無いんですけど

オジサン、なに見栄を張ってるのかな~⁉


「俺は、前世で騎兵隊いたから

 乗馬は、お手のもんだ

 ガッハッハッハッ」

オジサン、マジっすか⁉

乗れちゃうんですかぁー!


「これで決まりだね。

 フォーラは僕と一緒に乗馬俱楽部だからね」

 

ガーーン!!


「おい!フォーラ、どうした!

 息をしろ!」

 

ハッ!

ショックで息するの忘れてましたよ・・・


私が乗馬俱楽部に入部したと

知った父キチェスは

〘心配の余り興奮して、鼻血を出しながら

「此れから学園へ行く!」と大騒ぎしたが

リエッドに「乗馬も貴族子女の嗜みです。

馬に乗って

戦場へ行くわけでは無いのですから」

と宥められ

キチェスは何とか平常心を取り戻した。〙

とシュアスからの手紙に書かれていた


いやぁ~、たぶん馬に乗って戦いに出る

と思うんですよねぇ~

だってぇ、ラテルがぁ

馬に乗りながらの戦い方を叩き込む気

満々なんですからぁ


―――――――――


そして本日

ラテルに手を引かれながら

俱楽部活動に初参加。


あぁ~、馬がいっぱいいるよ~~

売るほど、いやがるよぉ~~


副部長に

「馬が初めてなら

 まずは馬を撫でてみよう」

と促され

馬の馬面を撫でようとするが・・・

恐怖心から体が凍りつき

てっ手が出ない~~


「アッハッハッハ。新入部員だね

 怖がらなくても、

 馬に食べられたりはしないよ」 

と後ろから声がした


知ってるよ!!

人は馬を喰うが

馬は人を喰らわない!知ってますから!!

振り向くと

優男やさおとこが立っていた


「ようこそ、乗馬俱楽部へ。

 僕が部長のテンマス・ナクイーラウだ」

「初めまして

 ラテル・ゴコーゼッシュです」

「するとこちらが、フォーラ嬢だね

 飛び切りの美人が下級生のいると

 噂は耳にしていたが

 噂は本当だった。

 こんなに美しいご令嬢が

 入部してくれるとは。

 まるで、乗馬俱楽部に花が咲いたようだ。

 心から歓迎しますよ、フォーラ嬢」

と言って握手を求めてきた


がっ・・・

今度は別の意味で体が凍りつき手が出ない

いや、出したく無い!


よくもまぁ

ペラッペラと

初対面の女に甘い言葉が掛けられるもんだ!


ラテルとルクトは女子人気が高い

顔と体系は、そっくりな二人だが

ラテルは

優しく、スマートに話しかけ人気

ルクトは

ニヒルでクールなところが

たまらなく魅力だそうで

ラテル派とルクト派で二分されている


ラテルは

社交慣れした21歳の元王子

ルクトは

科学にしか興味がない57歳のオジサンだ


しかぁーし!

この部長のテンマスは

まだ14・5歳のガキではないか!

あっ、私と同じ年?

増々気持ち悪い!

虫唾が走る軟派野郎である、ゲッ!


『部長~、早く教えてください~』

と女子たちが

鼻にかかる甘えた声を出しながらやって来て

テンマスは腕を掴まれ消えて行った


何故か女子たちが私を睨んでいた

睨まれる理由が分からない??

男に睨まれたら単純に

〘やんのかぁ~おらぁ!かかってこいやぁ!〙

となるだけだ

しかし

女子を相手には、はそうは行かない・・・


平安時代に土階様から

女子おなごに手を挙げるは男の恥じぞ》

と教えられた

その時、うっかり

「足なら挙げていいですか?」

と聞き返し

土階様に

思い切り尻を蹴り上げられた・・・痛かった


「あの人達

 なんで私を睨んでいたのかしら?」

すると副部長が

「部長の取り巻き女子たちだからね

 フォーラ君に警戒しているんだろう

 まったく、やれやれ」 

こっちが、やれやれだわ。


「さあ、早く馬を撫でてみて」

忘れてたよ馬のこと!

副部長にせかされ

馬の馬面を撫でたら・・・

嚙まれた!嚙みやがった!

手首まで、口の中に入れやがって!

チッキショ~~! 


馬に嚙まれて悔しいが

副部長が

「やれやれ」

と言いながら

下を向いて笑いやがったのが

悔しいです!


2ヶ月で馬に乗れるようになった

頑張った、私、偉い!!


女子部員たちは

ラテルがいない時を狙って

私に嫌味を言う

「男爵家なんて、馬に乗れても

 馬を飼う小屋がないんじゃな~い」

「田舎だから、土地はあるのよ~」

「あらぁ~、嫌だ~、放し飼い~?」

なんと稚拙ちせつな物言いだ

私だって、もう少し上等な悪口を言うぞ


まぁ、年下を相手にするほど

私は心の狭い男では無いので・・・

稚拙女子たちの前にある水溜り目掛けて

馬を走らせ見事に

泥水を頭から浴びさせてやった


それを見ていた副部長が

「やれやれ」

と言いながら下を向いて笑っている

副部長さんも

稚拙女子等に嫌気がさしていたのだろう


この水溜りぶっ掛けは

後からラテル元王子に知られて

「女性に、なんて事をするんだ!!」

と、こっぴどく怒られた・・・

ハイハイ、すいませんでしたっ


――――――――


ルクトが創設した科学俱楽部は

部員がルクト一人だけで

「やりたい放題で、実に楽しい!」

そうである


いったい一人で

何をしているのか訊ねたら満面の笑みで

「写真機だ、ガッハッハッハッ」

「そんな物が作れるの?」

「存外に簡単だ。

 キチェスとリエッドに

 家族写真を撮ってやりたくて」


私とルクトの会話を

ラテルが不思議そうに聞いている

無理もない

このイクス星にはカメラが無いのだから


「百聞は一見に如かずだ」

ルクトが私とラテルを撮影し

写真を現像してくれた


生まれて初めて写真を見たラテルは

「これは・・・僕とフォーラだよね

 絵じゃ無いんだよね⁉

 これは凄い!凄いよルクト!!」 

と興奮している

「そうだろう、凄いだろ

 写真は儲かるぞ。ガッハッハッハッ!」


又してもルクトは

金になる木を、お作り遊ばさせれたようだ

 

やっぱ、このオジサン凄いなぁ、

と少し尊敬してしまった

少しだけだけど

ほんと、少しだけですけどねっ。



































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