第21話 魂が抜かれる⁉

五年生の夏休み

帰省すると早速

庭で家族写真撮影会が行われた


「みんな、動かないで~

 この丸いところを見て~」

とルクトに言われ

皆が緊張の面持ちだ

周りで見守る使用人たちまで

緊張していえるので笑える。


シャッターを切るのはシュアスに任せ

ルクトも揃って

記念すべき初の家族写真撮影だ!


現像された写真を見て

「こっこれは、なんと精密な絵だ!」

と父キチェスが目を見開き驚いている。


ルクトが写真機の原理を説明したが

完全なる理解は出来ていない

ただ、

「これは、なんと素晴らしい機械だ」

と、感動しきりである

使用人たちも揃って驚きの声を上げていた


キチェスは写真機を大変お気に召され

「リエッドの写真が撮りたい、

 子供たちも撮りたい、

 そうだ!使用人たちも全員を

 撮ってやろうじゃないか」


まるで

幼子が新しいオモチャを手にしたかのように

瞳を輝かせながら

ルクトの手ほどきを受け次々と撮影をした


「自分が撮った写真を、早く見たい」

とキチェスはワクワクMaxだ。

ルクトはシュアスに手伝ってもらい

大急ぎで現像した


キチェスは出来上がった写真を手に

「おぉ。私の愛する妻の美しい姿が

 本物そのままに写っている!

 可愛い子供たちの姿も」

初めて見る、はしゃぐキチェスの姿が新鮮で

オヤジバカも可愛いもんだと思った。 

それにしても・・・

旦那さん本当に奥さんに、ぞっこんですなぁ。


使用人たちも集合写真を見ながら

ワイワイガヤガヤと盛り上がっている

「これは、誰かしら?」

「いやだあ、それ貴女よ」

「えー。私、こんなに老けてるのぉ」

「これ、俺かっ。ここまで太ってないぞ」

「いや、太ってるぞ」 

 

と楽しそうだったのに

誰かが

「こんなに、そっくりに描かれるなんて

 魂が抜き取られたんじゃないか⁉」 


と言い出し


「それじゃあ、死ぬのか?」

「嫌だ!まだ死にたくない!」 


もう上へ下への大騒ぎです

私は側から見ていて

腹を抱えて笑ってしまった


その昔、地球でも

写真機が発明された当初は全く同様で

”写真を撮ると魂が抜かれる” 

などと、奇妙な流言が信じられていた。

どの星でも人類とは同じことを考えるものだ

と変な感心をしながら

マジ笑えちゃう~。


「ルクトさま。

 私たちは、魂を抜かれたのですか⁉」

 

あらあら

ルクトが使用人たちに詰め寄られてるよ


「いや違う。魂を抜き取るのでは無く

 影を・・・」

 と説明しようとするルクトの話を遮り


「おお!陰か。

 魂ではなく陰を抜いてくださったんだ!」

「どういう事なの?」

「陰とは、悪いものだろ」

「だから?」

「要するに。写真とは

 悪い陰を抜き取ってくれる

 有り難いものと言うことだ」

「なるほど!」 


あ~あぁ皆そろって納得しちゃってるよ


「そうだよな。

 ルクト様が魂を抜くなんて

 悪魔のような所業をされるはずがない」

「そうだ!そうだ!」

「ルクト様。

 我々の悪い陰を抜き取ってくださり

 有難うございます!」

  

おーい

違うぞー

全然、全く、違いますよー!!

もうダメだ・・・

使用人たちの頭の中には

【写真機=悪い陰を取り除く有り難い物】

とインプットされてしまったようだ

ハッハッハッ、マジ笑える。


ルクトは、顔を青くしている

立派な科学者が

非科学的な迷信を生み出す

発端となってしまったのだ

全くもって、お気の毒な元教授である

へッへへへッへ・・・


キチェスが

「自分も、写真機が欲しい」

と言い出し、ルクトが困惑していると


「父様、それは駄目です。

 その理由は、明日お話します」

とラテルが拒絶発言


「お前が、そう言うには、

 なにか考え有っての事。

 分かった明日、話を聞こう」

とは言いながらも

キチェスは残念そうにシュンと

落ち込んでいる


――――――――


その夜の三つ子+1集会で

ルクトは

「俺は父様に

 写真機を譲ってもいいんだが。

 また作ればいいだけだし」

「僕は写真機を使って

 アーザスの人脈を探れると考えている」


なるほど・・・。

こっりゃぁ難しくて長い話になるなぁ

耳は塞いでも

目は、しっかり開けておかねば


「写真機を使って

 #"〇%&□*:@#$・%◇〇

 ・・・と言うわけだ

 そうすればシュアスも一緒に王都に住める」

「なるほどなぁ」

「それは、いい考えですね」

「これが実現できれば

 アーザスを倒す日が、ぐっと近くなる」


私は目は開けていた

が、話は聞いていなかった

ので、取り敢えず

「さすがぁ、ラテル!」

とだけ言っておいた

まぁ、詳細は

明日キチェスとの話合いで解るしね

今夜は解散

おやすみなさい。


――――――――


さて、今日は

写真機について三つ子とシュアスで

キチェスへプレゼンらしいです・・・


そうだったのか・・・知らんかったわぁ


口八丁のラテルが代表してプレゼン開始


「写真機は大発明で

 大変に貴重な物です」

 実は地球には

 もっと、いいカメラがあるんですけどねぇ


「写真機を使えば、カンパニーの収益になります」

 

おぉ、金儲けの話だったのかぁ


「値段が高くても

 貴族や金持が、必ず押し寄せます」

 

へぇー、高く売るんだぁ


「シュアスには

 撮影と現像技術を習得してもらい。

 王都に写真館の店舗を構え

 シュアスに運営を任せたいのです」

 

ほぉー王都に店舗ねぇ


ここでキチェスが口を開く


「シュアスは、どうなんだい?

 それでいいのかい?」

 

まあ、本人の意思は大切よねぇ


「私は、是非とも、やりたいです!」

 

おっ、シュアスやる気満々ですなぁ


「分かった。

 カンパニーとして王都に写真館を構えよう」

  

ギャンブラー・キチェス、さすが決断が早い!


「父様に、お願いがあります!」

「なんだね、ラテル。

 お前が何かをねだるとは珍しい」

  

そうだすねぇ、珍しいですなぁ


「再来年にはトーキスとスイークも

 レアリカヒ学園へ入学します。

 これを機にゴコーゼッシュ家も

 王都に別邸を構えた頂きたいのです」

  

ほっほー、いいですねぇ~


「なるほどっ」

キチェスはそう言ってフッと笑った

 

あれー、この笑い方

なんか色々ばれてんじゃない?


「フォーラ」

はいっ⁉私ですか・・・?

私に意見をお求めですか・・・?


「寄宿舎生活は、どうだい?」

「不自由なく、楽しく過ごしています」

  

いや、待てよ・・・

この質問への答えには正解が有るのか?

なにが正解なんだ?

わっ、分からん・・・!


そうだ!

「寄宿生を見下す方もいます

 でも私は、そんな事は全く

 気にしていませんわ。

 だって寄宿舎は素晴らしい処ですもの」

 

これでどうだあぁ!

正解かなのかぁ⁉


「そうか、

 寄宿舎が嫌で出たいのでは無いのだな?」

「はい。もちろんです」

「よし分かった。

 ならば王都に別邸を用意しよう。

 だが少し待ってくれ

 良い場所を選びたいからな」

  

 おおー!やったじゃん

 正解出しましたよ!

 いやぁー、流石ですなぁ私

 今夜の集会で皆に褒めさせてやろう!


――――――――

 

今夜も、三つ子+1集会開催

今日のプレゼン成功の功労者は

私だもんねぇ。へッへへ。


なのに何故か

誰も私を褒めない・・・

忘れたのか私の活躍を?

「あのさぁ、今日の、私の、

 父様への、答えって・・・」

「うん、昨日の打ち合わせ通りに答えてたね」


ラテルの素っ気ない反応


昨夜、私が耳を塞いでいる間に

そんな話をしてたのかあー

これはいかん!

聞いて無かったのが

ばれたら怒られる!

誤魔化さねば

「はい。お陰様で打合せ通りにできました!」


――――――――


昨夜

私が耳を塞いでいた時の会議の内容とは


誰がアーザス派で、誰が王派で、

誰が中立派かを把握する。

その為に

シュアスが貴族の邸宅に出張撮影へ行く。

金持ち上流階級もまた同じ。


仲間同士で記念写真を撮る輩もいるだろう

そうすれば

貴族と上流階級の繋がりが分かる。


中には

前王が亡き後に爵位を金で買った者がいるので

ラテルも、現在の状況が把握できていない

シュアスが出張撮影へ赴いた際に

スパイ活動もするらしいです


驚いたのは・・・

金で爵位が買えるの⁉

そして・・・

シュアスがスパイ活動にノリノリなんですけど~


「シュアスが頑張ってくれるんだから

 俺たちも、頑張って勉強して

 絶対に王宮特別学問所へ入らないとなっ」

「そうだよねぇ」

と適当に話を合わせたら


「俺たちはフォーラが心配なんだ!

 しっかり勉強しろよ

 夏休みの宿題、ちゃんとやるんだぞ!」


もぉー

ルクトの言い方!

一言多い!

やりますよ宿題くらい!


――――――――


そして・・・

忙しい夏休みも終わりが近づき

あと3日でカイッソウガ領を離れる

そして・・・

私の宿題は手付かずだ。

手付かずです。

手が付いていない。

       

ヤバい・ヤバい・ヤバい!!

また馬車の中で宿題なんぞを

やったらルクトに何を言われるやら

 

もう死ぬ気で3日間

寝ずに頑張りました!

やりました!

完了しました!

もう~ヘロヘロです~

  

私が目の下にクマを作り

ゲッソリしているので

ラテルもルクトも護衛係二モンも

心配そうにしている。


本当のことは言えない。

けして口に出来ない・・・。

王都までの道のりの3日間・・・爆睡。










 



 










 










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