第19話 過去との交差点

4度目の夏休みが来た

10月23日の香水販売開始を目指して

ルクトは史上最高に忙しい夏休みとなる


「フォーラ!俺は夏休み中忙しい

 いいか!俺が見てないからと

 怠けずに宿題をやれよ!絶対にやれよ!

 お前はすぐに怠けるんだから

 ちゃんとやるんだぞ!」 


言い方!もう少し優しく言えよ!

オジサンだから許すけどさぁ

宿題やる気が失せるわっ


まぁ私には前科が有るので仕方ないんですけどね


――――――――


三つ子集会で

やつぱり気になる、あの存在・・・

   

そう、シュアスの存在である


「シュアスってさぁ」

 

私の一声で二人とも腕を組み

ウーンと考え込んでいる

もし本当に

キチェスの隠し子なら兄になるわけだ

それを一生リエッドに知られないため

なにか手を打った方がいいのではないか

などの意見を交わし三人腕組して考え込む


「悩んでいてもらちが明かない

 直接シュアスに確かめよう」

「そうだねルクト。どっちがシュアスと話す?」

   

あれっ?いつの間にか私は蚊帳の外?


「そうだなぁ俺とラテル、どちらがいいかぁ」

     

あぁー、やっぱりだ!

こう言う大事な時は、いつも私を無視する!

ここに私もいるんですけどねえ

なぜ頭数に入れない!


「僕は年長者のルクトが適任だと思う

 ルクトにお願いしたい」


そうそう、ルクトは57歳だもんね


「よし、分かった。俺が聞き出そう」

とルクトが請け負った


「ちょっと!私もいるんですけどねぇ!」

の訴えは、思い切り無視された!チッ!


――――――――


次の日

敷地内の森にシュアスを呼び出した

呼んできたのは私です!!


昨夜ラテルが

「じゃあ、

 シュアスを呼んでくる大事な役目は

 フォーラに頼むね」

ってお願いするのでぇ

大事な役目を、へッへへやってあげました


シュアスはなにが始まるのかとソワソワしている

ルクトが口火を切る

「シュアス、君の正体を知りたいんだ

 君が農民で無いことは身のこなしから分かる」

「いえ、私は農家の出身です」 


シュアスめちゃ狼狽うろたえてるよ


「君は本当は父様の隠し子で

 俺たちの兄なんじゃないのか?」


シュアスは、はぁ?という顔をし

段々と顔色が青くなってきた


「本当のことを教えてくれ」

「ちっ違います。

 私は、そのような者ではありません・・」

そう言って、走り逃げてしまった。


「あれは、黒だな」

「そうだね」

 

私が無言で大きくうなずくと

「もう喋っていいんだよ」

とラテル

昨夜ラテルとルクトから無駄な口は利くなと

厳しく言われたので

良い子でずっと口を閉じていました


「シュアスの件は、リエッドには絶対に秘密だぞ」

       

ガッテンです!!


――――――――


夜、三つ子集会をしていると

執事がやって来て

「旦那様が、書斎にお呼びです」

とキチェスから招集がかかった


書斎へ行くと

キチェスは机に両手を乗せ黙って座っている

その隣りにはシュアスが下を向いて立っている


シュアスめキチェスにチクりやがったなぁ!


横を向いたら

リエッドがソファーに腰掛けているで

ビックリした

もしかしてリエッドと三つ子へ同時に

隠し子をカミングアウトするのか⁉


「お前たち

 シュアスを私の隠し子だと言ったそうだな」

低い声で

ゆっくりと話し出すキチェス

 

こんな時の受け答えはラテル元王子が適任だ

私は隣りのルクトを肘で小突いて合図し

ルクトはラテルを肘で小突いて促し

ラテルが話し出した


「はい、確かに言いました」

「それで、

 もし隠し子だったら、どうするつもりだったのだ」

「まず、兄として敬う。

 そして、その事実を母様に知られぬよう

 私たちで協力する」


「ふむ、母様を守るためか・・・

 リエッド、私は子供たちに

 真実を話そうと思うのだが」 


リエッドは凛とした声で、

「私は、貴方と私の子達を信じます」

とキチェスに向かって言った


真実ってなに⁇

リエッドも知っているの?なになになーに⁉


結果から発表しよう・・・

シュアスは隠し子・・・

ではありませんでしたー!


シュアスはキチェスの今は亡き幼馴染

バルモンク侯爵の一人息子だそうです


前王からの信頼が厚かったバルモンク侯爵は

前王が亡くなると

アーザスにより爵位と領地を没収され

バルモンク侯爵は心労で亡くなり

妻子は行方知れずとなっていた。

今年になり、やっと行方を見つけたが

婦人は既にこの世を去り

シュアスは天涯孤独の身となっていた

 

そうかぁ・・・

こいつも今までの私と同じ境遇なのかぁ

身分を偽ったのは本人の希望で

アーザスを恐れての事だそうだ

   

全ての元凶はアーザスじゃん!!

脳ミソ沸騰野郎のアーザスが悪いんじゃん!

マジ潰す!潰したる!殺したる!!


キチェスが三つ子たちに

「シュアスの素性は

 決して誰にも口外せぬように」

とくぎを刺した


ラテルが心配になり顔を覗き込むと・・・

険しい表情で下を向き

手を力一杯握りしめている・・


「シュアス、申し訳なかった」

と発したラテルの言葉は

あらぬ疑いを掛けた事へではなく

前世で王子として

アーザスの野望を

阻止出来なかった事への謝罪なのだろう。


そのまま三つ子は無言で自分の部屋に戻った


誰だよ!

シュアスが怪しいとか

隠し子だとか言い出した奴は!

・・・私・・・かなぁ?・・・


―――――――――


次の日からラテルは何か考え込んでいる

ルクトは考え事をしてると

眉間にシワが寄り

ラテルはドヨンドヨンと暗い顔になる

実に分かりやすい奴らである


ドヨンドヨン顔を始めてから三日目

三つ子集会でラテルが

「僕は考えていたんだけど」

 

知ってるぅ

分かってるぅ

気づいてたぁ


「シュアスに

 僕たちの本当のことを話そうと思う」

 

本当のことって?

まさか三つ子は転生者で~す

とか言っちゃうの⁈


「なにを話すつもりだ?」

「アーザス一派を倒し

 王権復古を目指していると」

「何のために話す?」

「この先、三人だけでは成し得ない

 同志を増やす必要があると思う」

「それは、確かにそうだが

 シュアスを引き入れて大丈夫なのか?」


こういった難しい事柄は

たいがいラテルとルクトで話し合い

私は黙っている

その方が話しが早くまとまるそうで

ルクトから聞く係に任ぜられている。


「亡きバルモンク侯爵は

 若かったが王への忠誠心が厚く

 我が父マーツ二キス国王による

 民のための政に多大な貢献をし

 信頼を得ていた

 だからアーザスに潰されたんだ」

 

アーザスは

バルモンク侯爵が目障りだったわけか


「僕は、バルモンク侯爵家を復興させたい

 そのためにはシュアス自身が

 王権復古に携わらなければ」

「ルクトの思いは分かった。

 ならば本人の意思を確かめよう

 あいつは口が堅いから

 話しても差し支えないだろう」 


うん!そっかぁ

よく分からないけど

シュアスに話すのねぇ

了解しました!


翌日の三つ子集会にシュアスを招待した。

自分たちは王権復古のため

いま王宮特別学問所合格を目指し

勉学に励んでいる

必ずアーザスの手から王を救い出し

国と民を護る。

君も一緒に闘わないか?と尋ねた

もちろんラテルがっである

私は隣で無言で頷く係ですので


「私が・・・闘う・・・」

「君の父上は

 正義と情熱を持って前王に仕えていた

 偉大な人物だったと聞いている」

「私の父・・・正義と情熱・・・

 私は・・・

 私は何をお手伝いすれば良いのでしょうか」

「同志になってくれるのかい?」

「亡き父へ恥じない生き方がしたいのです!」


やったじゃん!

なぁんか思ってたより

チョロく仲間入りしちゃったよ


「まずは、身を守るため

 ディーゴに武術を習って欲しい」

「はい、分かりました。

 それにしても皆さん10歳で大人顔負けの志

 驚きました」

    

シュアスよ、驚くことは無いのだぞ

実際の中身は21歳の元王子と 

57歳のオジサンなのだからなフッフッフッフ


キチェスは

シュアスの武術稽古を喜んで承諾した

学問はキチェスが教えることになり

シュアスはキチェス付きの執事となった

―――――――――


忙しかった夏休みも、もうすぐ終る


王都へ戻る日にトーキスとスイークが

「ねえタマ、兄さま、早く帰って来てね」

と涙目で言うので

余りの可愛さに

ラテルとルクトは1号2号を抱きしめ

「冬休みには帰るからね。

 父様、母様、クーエラを頼んだよ」

「ちゃんとご飯を食べて

 元気に遊んで、勉強もするんだぞ」

と優しく語りかけていた


馬車が動き出すなりルクトが

「おい、フォーラ。

 宿題は終わらせたんだろうなぁ⁉」

と、毎回恒例の質問をしてきた

それを聞いて

護衛係の二モンが「フッ」と笑いやがった

チッ!




























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る