第16話 神の門

9月

傷薬ヒーサコの販売が始まり

三つ子で薬屋に行ってみた


商品棚に置かれたヒーサコを見て

ルクトの瞳が輝いている

私もラテルも姉弟、いや仲間の快挙が誇らしかった


ヒーサコは一般庶民でも

手軽に購入できるよう

低価格にしたことも功をそうし

半年後には製造が間に合わない程の人気商品となった

まさに❝一家に一瓶ヒーサコ❞である!


―――――――――

 

学園生活も順調だ

マイナの私を見下す意地悪発言も

すこぶる順調である

たいした能力だと感心さえしてしまう


アッサも変わらず明るく良い子だ

毎日まとわり付いてくるのは

ウザイと思う

が・・・我慢

 

二学期期末試験は緊張した~


一学期の二の舞を踏み

ルクトに頭を抱え込み怒られてはならない

断じてならない


自信はあったが

答案用紙が戻るまでドキドキしていた

そして見事に全教科100点満点だった!


ルクトに見せたら

「ふっん、当然だな」

の一言


なぜ褒めない⁉

そこは褒めてよー!

私、褒められると伸びるタイプなんですよ~


――――――――――


冬休みカイッソウガに帰省すると

ルクトは早速メイド達に

化粧水を使用した結果を聞き取り調査した

皆の感想は、

使用を始めて2週間ほどしたら

肌が【しっとりスベスベ滑らか】になった

と高評価である。


「これなら大丈夫!」

と早速ラテルとルクトは、

父キチェスに化粧水製造販売のプレゼンをした。


ヒーサコよりも製造工程が簡単で

人手も掛からない

ラテルが

「ようするに

 この商品は低コストで高利益と言うことです!」

と力説

続けてルクトが

「化粧水は必ず売れます!」

と自信満々に言い放った


手間や人手をかけずに金がわんさか入ってくる

これはもう、やるきゃ無いしょっ


そして、キチェスを一番喜ばせたのは

「化粧水の薄い藤色は

 母様かあさまをイメージして作りました

 商品名は〔フィラ・リエッド〕にしたいのです」

の言葉だった


キチェスはリエッドを抱きしめながら

「なんと良い名だ!私がこの世でただ一人

 心から愛する女性の名だ」

とリエッドの額にキスをした

めでたし、めでしである


化粧水の名前〔フィラ〕は

ルクトが英語の

博愛・PHILANTHROPYから付けたそうである


販売は来年の12月に決まった

新たに工場を3棟建てるのだが

ヒーサコが思いのほか売れまくり

資金の心配はないそうである


そして、ついでにこの際だからと、

キチェスを代表取締役にして

カンパニーを設立する事が決定した

キチェスは「よっ社長!」となるわけだ


―――――――――


この国の学校は春休みは一週間と短いが

冬休みは一ヶ月と長い


それは12月1月は

王族貴族、金持ち上流階級のパーティーが

あちらこちらで開催されるためだ


そして、13歳になると

社交界デビューしなくてはならないらしい

今から、誠に憂鬱である・・・。


特に1月は

王族貴族の家長様は王宮へお行きになり

王様と謁見あそばす


ただ・・・。

王陛下は一言も言葉を発せず

代わりに前王とラテルを殺した

アーザスが王座の横に立ち

図々しく新年の挨拶と労いの言葉を言うそうだ


この事実を知った時のラテルの顔は

ドヨンドヨンなんてもんじゃなく

❝地獄で犬に小便をかけられた❞かの様な

暗く怒りに満ち力の無い顔だった。


ラテルよ、もう少しの辛抱だ

私たち仲間で必ずアーザスを倒そう!


――――――――――


三学期が終わり短い春休みがやって来た


三つ子は

クラスメイトのアッサ主催の茶会に招待された


流石さすがは伯爵家令嬢とあって

小娘主催ながら豪華な茶会だ

招待客も学年・性別ばらばらで

親達の

他家との交流を深めたい思惑が見え見えである


茶会に参加の皆さんが

三つ子を好奇の眼差しで見ているよ・・・


まぁ、ゴコーゼッシュ家は

爵位最下位の男爵家だし

しかも三つ子は寄宿生だしで

この場に相応ふさわしく無いよねぇ

的な差別の眼差し

フッ、ガキ共が

笑わせてくれるぜ


私は来るつもりは無かったのに、ラテルが

「ぜひ伺います」

なんて言ってくれちゃったから・・・

こんな場で令嬢を演じるのは

肩がこるんざぁますのよねっ!


ラテルは品行よろしく場に馴染んでいる

さすがわ元王子だ

ルクトは物怖じせずに堂々とした振る舞い

さすがわ57歳のオジサンである

私は・・・

美味しいお菓子が食べられるので、まぁ良しとしよう


―――――――――


私にとって衝撃の事実が発覚した・・・


二年生になればクラス替えで

生意気小娘のマイナと

お別れできると思っていたのに


クラス替えは七年生まで無いそうで・・・

あと5年間は

生意気小娘マイナと仲良く机を並べるわけだぁ

やれやれ、である


男として、将来マイナを嫁にする男に

同じ男として心から同情します・・・


一年間ともに過ごしたクラスメートの名前は

・・・知らない

覚える気がない・・・

でも、顔はだいたい・・・覚えた

・・・と思う


―――――――――


 

休日には決まって

三つ子で王都内を散策する


私が一人で学園の敷地外へ出ることは

父キチェスから禁止されていた

大切な娘の身を案じ

ラテルとルクトに必ず同伴するよう命じている


まぁそんな命令など無くとも

だいたい三人で行動している

その理由わけは・・・


『フォーラを一人にすると

 何をしでかすか分からない』

とラテルとルクトの同意見によるものだ

子供じゃぁあるまいし

一人でも大丈夫だっつうの!


いつもルクトは繫華街で、色々な店を見て歩く

この国には

何が有って何が無いかリサーチしたり

商品開発に使えそうな物を見て廻る


私は毎回

美味しいレストランの開拓に精を出していた


王都には各領地から

多種多様な品が集まり

カイッソウガ領では

手に入らない珍しい物も

ここでは容易に手に入る。

やはり都とは、どの星でも国でも

人と物が溢れている。


私には散策時に必ず行く場所がある

王宮の鬼門に位置する

アーチ型の小さな門の前だ


この門からは濃厚な“氣”が流れ出ていて

自分の呪力が強く増してくるのだ

そのお陰でへんめいでん

うんふうごう

の呪術が格段に上達させられた


なんとも不思議で

そのことをラテルに話したら

「タスジャーク国の始祖

 ミツザネ王が城を建てた時

 守護神ウーシアが入城した門

 との言い伝えがあって

 決して人の手で開けてはならない門なんだよ」

と門の由来を教えてくれた


うーん・・・神とは信じ難い

だが、この氣の放たれかたは

まんざら噓でも無いかも知れない。


 





 

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