第14話 レアリカヒ学園

 


来たーー!ついに王都へ出発の日だーー!


父キチェスと母リエッドも同行する


これは入学式に参列するため

だけではないそうで


毎年レアリカヒ学園の入学式頃に

貴族や上流階級者が王都にこぞって集まり

各々が情報交換したり

腹の探り合いをするのが目的だそうだ

とラテルが言っていた

大人の世界とは面倒なものである


馬車は二台

キチェスとリエッド

そして私とメイドが一緒に乗り

もう一台に

ラテルとルクトと執事、そして護衛係は二モン


こんな時の護衛は

ディーゴが適任だと思うのだが・・・

無表情二号で大丈夫なのか?

二モンは私より弱いんだぞ


それにしても、この馬車の割振りはなんだ!

納得いかん、ババ抜きが出来ないじゃないか!


5日間ずっと本を開き

〘私はお勉強に集中しているから

 話しかけないでね!〗オーラを出しまくり

キチェスの

〘父様と仲良くしようよ〗攻撃を阻止しきった

我ながら良く戦ったと思う


王都に到着して三日目

無事に入学式も終わり

キチェスとリエッド達はカイッソウガ領へ帰った


別れの際キチェスは

ラテルとルクトに

「二人でフォーラを守るんだぞ

 けして悪い虫を近づけるな!」

と本気の鋭く怖い目で命じていた


キチェスよ

心配しなくても私は男などに興味は無い

女にも無い

平安の世から今までの転生人生において

一度たりとも恋などにうつつを抜かした事などない

立派な15歳日本男児なのであるから


――――――――


新入生は60名でクラスは3つ

王宮特別学問所へ入るためには

勉学・武術の成績が優秀なのはもちろん

生活態度も清く正しくなければならない


三つ子は別々のクラスになった

今までの人生では

転生者であることを知られぬように

悟られぬようにと

他者との関わりを極力避け

孤独に生き、孤独に慣れていた

だが、フォーラとして生まれた今の人生は

共に転生者である三つ子が互いに心を許し合い

常に一緒に過ごし

そして、

アーザスを倒す志を共にする仲間となった


ラテル・ルクトと別れ

一人で教室に入ったら

忘れていた孤独の感覚が蘇り不安に襲われた


がっ、しかーし!!


周りは7・8歳のガキ共だ

私は15歳の大人なのだから

臆することなど微塵もなーい!


ただ面倒なのは・・・

ラテルとルクトから渡された

[円滑かつ順調な学園生活をおくるための

 心得、覚え書き]である

その

[覚え書き]を必ず守るようにと

二人から、きつくきつく言われている


――――――――


「おはよう」

と隣りから声がする


顔をそちらに向けると、こちらを見ている

どうやら私に言っているようだ


[心得一、挨拶はにこやかに]


チッ、仕方ない

「おはよう」

にこやかに・にこやかに

はぁ~ぁ怠い

「私、マイナ。宜しくね」

訊いてないよ


[心得一、令嬢らしく丁寧に話す]


「私はフォーラ

 こちらこそ宜しくお願いしますわ」

「フォーラさんは、どこから通っておいでなの?」

「寄宿舎。ですわ」

「まぁ、寄宿舎⁉お気の毒に

 私の祖父は銀行家で王都に屋敷を

 何件も持っているのよ。ホッホッホ」


はあー⁉だから何だってんだよ、この小娘が!



昼休みに食堂で

ラテルとルクトに小娘マイナの話をしたら

ラテルが

「ああ、それねっ。

 貴族は王都に住んで領地統治は

 他の者に任せたているのが主流で

 王都に住んでいなくても

 王都に別邸を持つのが普通なんだよ」


「ゴコーゼッシュ家は

 なんで王都に別邸が無いの?貧乏なの?」


「違う、別邸の維持にはお金がかかる

 だからキチェスは王都の別邸により

 領地のためお金を使うことを選んでいるんだ」


おぉ、キチェスは偉い奴だなぁ


「ただ・・・

 王都に屋敷が有るか無いかで分けて見られる

 だから寄宿生は下に見られるのさ」


くだらない話だ

そんなことで上だの下だのと


「それでも、三人分の学費や寄宿舎費だって

 大した金額が掛かるからね」

そうだよな、少し心配

「お金は大丈夫んなのかなぁ?」


するとルクトが

「大丈夫だ!一年もすれば、ヒーサコで大儲けさ」

「学費のためにヒーサコを作ったの?」

「いいや違う。他の物を作るはずだったのに

 ヒーサコは偶然できた発明だ」


そうだったのかぁ

「じゃぁ本当は何を作ってたの?」

「いやー、それは・・・」

ルクトの目が勢いよく泳いでいる


まさか・・・

とんでもなくヤバい危険物でも作ろうとしてたの⁉

怖くてこれ以上は聞けないよぉー


昼休み終了のチャイムが鳴った


「さぁ、午後の授業も頑張ろう」

と三人で拳を合わせた

いつの間にか拳を合わせることが

仲間の儀式になっていた


――――――――


寄宿舎は

男子寮と女子寮が左右に分かれ

中央に食堂とサロンがある

サロンでは各々が自由に過ごせ


私は毎日毎日

サロンで、ルクトの個人授業に堪えている

ラテルはいつも私の隣りに座り

ルクトが私を怒るたびに

「プップップップ」

と笑っている

あぁ~周囲の視線が痛い・・・


――――――――


教室で、いつものように机の上に本を開き

〘私はお勉強中だから話しかけないでね〙

オーラを放っているのに

「フォーラさんの髪の色、綺麗ね

 髪飾りがとても似合っているわぁ」

と突然後ろから話しかけられた


チッ、話しかけるんじゃねぇと思いながら


[心得一、学園生同士仲良くする]

[心得一、すぐに嫌な顔をするのは禁止]


を守り

にこやか顔で後ろを振り向くと

茶色と青色が混ざった髪の女子が

ニコリと微笑んでいる


まぁ、褒められるのは好きですので

「ありがとう」

と言い微笑み返した


こいつ・・・名前なんだっけ??


クラスメートの名前は

学級委員長と生意気小娘マイナしか知らない

別に覚えなくてもいっかぁ

で、知らん。分からん。困ったぞ。


「あっ。私の名前はアッサよ」

おぉ、そうかアッサか!

自ら名乗ってくれるとは助かった


[心得一、女子から褒められたら褒め返す]


褒められてるのは好きだが

他人を褒めることには興味がないので

なにを褒めたらいいのか?

うーん・・・あっ


「アッサさん、手が綺麗。爪の形も綺麗だわぁ」

これでいいのか?女心が分からない


「まぁ、ありがとう。

 私の手はお母様の手に似ているの

 褒められて嬉しいわ」

と頬を赤くしながら喜んでいる

おぉ~良かった~!

しかし、こんなことで頬を赤くし喜ぶとは

女心とは実に難解である。


「あら、アッサさん。

 フォーラさんは寄宿生なのよ」

ゲッ!

横から生意気小娘マイナが割り込んできた


「まぁ、そうなの⁉」

「そうよ。だから気安くお話しなんて

 しないほうが良くてよ」

おいおい、なんだぁ?

二人がかりで見下しますかぁ?


「寄宿生の何がいけないの?」

へっ?


「寄宿生は王都に屋敷も買えない

 貧乏な家柄なのよ

 私たち王都派とは住む世界が違うのよ!」


マイナの家では

金がない奴を見下すよう教育してるのだろ


「私、マイナさんのおっしゃる事が

 分かりませんわ

 王都に屋敷があるとか無いとか

 なんの関係があるの?

 同じ学園のクラスメートでしょ」


当然、自分の意見が正しく

賛同してもらえると思っていたマイナは

苦々しい顔をして

「アッサさんがどうなさろうと

 私の知ったことでは有りません

 ただ、ご忠告さしあげただけですから」


そう言い捨て去っていった

やーい・やーい!

マイナめ、ざまあみろ。ケッケッケッケ~だぁ


「ねぇ、フォーラさん

 寄宿舎ってどんな処なの?

 お部屋は広いの?一人部屋なの?

 お掃除はどうするの?お洗濯は?お食事は?」


立て板に水のごとく次々と質問が飛んでくる

往々にして、男は女の質問攻めが苦手である

逃げたい、質問攻めから逃げたいー


「そっそっそんなに興味があるなら

 私のお部屋を見にくれば?

 寮の中も案内して差し上げますわよ」

「まぁ、宜しいの?」


宜しいから質問攻めを止めてくれー


「では、今日の放課後ご一緒に」

アッサはそう言い

足どり軽く席へ戻ってくれた

やれやれだぜっ


放課後いつも通りに

ラテルとルクトが私を迎えに教室にきた


「実はぁ・・・」

とアッサを紹介しようとしたら

私の後ろに隠れている

何やってんだ?

二人が怖いのか?

面倒くさいなぁ


アッサの背中を押して前へ出し

「弟のラテルとルクト

 こちらはクラスメートのアッサさん

 今日は私の部屋へご招待したの」


ラテルとルクトは、かなり驚いた顔をした

「初めましてアッサさん。ラテルです」

「ルクトです」

「はっ、はっ、初めましてアッサです」

恥ずかしがり屋さんかぁ?


「弟さん達そっくりね

 フォーラさんは見分けがつくの?」


よく聞かれる質問疑問である

「ええ、もちろん」

そんなのは、どうでもいいから

「さあ、早く行きましょ」


――――――――


学園の生徒は

誰でも寄宿舎に立ち入り自由なのだが

好き好んで

寄宿舎に足を踏み入れる王都派は皆無だ

アッサは純真なのか、好奇心旺盛なのか?


私の部屋へ入るなりアッサは

「素敵なお部屋だわぁー」

と目を輝かせ、またも質問攻めにあった


あ~も~一々答えるの面倒なんですけどぉ

と思いながら

「お掃除お洗濯は

 寄宿舎のメイドさんがするのよ

 食事は食堂で皆さんと頂くの」


その他にも質問したそうな顔をしているので

「ラテルとルクトが待っているから」

とサロンへ連れて行きラテルにバトンタッチ!


どうも女子と話すのは苦手だ

元王子は女性の扱いも上手いので助かります


アッサは喋るだけ喋って

「もうこんな時間。私、帰らないと」

あぁ~やっと解放されるぅ~


三つ子でアッサを馬車の待つ正門まで送った


「今日は楽しかったし、

 お友達が三人もできて嬉しかったわ。

 ありがとうフォーラさん

 ラテルさんルクトさん

 それではまた明日、ごきげんよう」

『ごきげんよう』


やっと帰ったよ、やれやれ。


ここで疑問です

「友達って言ってたねっ」

「言ってたな」

「誰のこと?」

「そりゃあ、俺達のことだろ」

「そうだよね」


えっ⁉そうなるの⁉


「フォーラ、明日から仲良くしてやれよ」

「そうだよ。面倒くさがらずに

 ちゃんと仲良くするんだよ」

「はぁー⁉女友達なんて

 どう接すればいいのか分からん」


「まぁ、頑張れ」


「大丈夫だよ、相手は8歳児なんだから」


「なにをどう頑張って

 なにが大丈夫なんだよ⁉

 おい、私の話を聞け!

 おい、私を置いて先に行くな!おい!!」


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