第10話 勇者になりたい⁉

双子が生まれてから楽しみが増えた

毎日2・3度は双子の部屋へく


名前は

三男がトーキスで四男はスイークと付けられたが

私は密かに1号・2号と呼んでいる


乳母達は

「本当にフォーラ様は

 トーキス様とスイーク様が

 可愛くて仕方ないんですね」 

と言うから

「うん、二人とも大好き!」

と答えた

がっ、それは噓で~す!


本当は

日に日に成長する姿を観察するのが楽しいのだ

初めはふにゃふにゃしていた身体も

日を追うごとに、しっかりしてきたし

私の指を握る手の力も強くなっている


生き物の観察は実に面白い

今までペットを飼ったことが無かったけど

来世ではぜひペットを飼う!と決めた

   

その決意をラテルに話したら・・・

「ペットと人間は違うんだよ!」 

と諭すように𠮟られた

がっ、私には赤ん坊とペットの違いが

まったく理解できません


最近は朝晩の冷え込みが厳しくなってきました

1号2号が風邪をひきませんように

 

――――――――


ルクトが

「今夜は俺の部屋に集まってくれ」 

と召集を掛けた

 

言われなくとも毎晩ルクトの部屋へ集まるのに

オジサンだからボケたのか

と少しばかり心配になる?

 

いつも通りにルクトの部屋に集まったら。

「今夜は集まってくれてありがとう」


別に、お前のために来てないし。

いつものことだし

ルクトはなにを改まっているんだろう?


「俺は、ずっと悩み考えていた」


いつも考えごとしてるじゃん

こやって眉間にしわを寄せて

こ~おやって、眉間にしわを・・・


「フォーラ、なにしている?」

「ルクトが考えごとしてる時の顔真似」

「フォーラやめろ」

「プップップップ」

「ラテル笑うな。フォーラじっとしてろ!」

「はーい」 

怒られちゃったよ


「俺はラテルが転生した経緯を知り

 そして命をかけ国と民を守りたいという

 高く強いい志を知ったその時から

 力になりたいと思っていたのだが・・・」

      

へぇオジさん、そんなこと考えていたんだぁ


「もし、二人ともに死んだら

 ゴコーゼッシュ家を継ぐ者がいなくなる

 それは産み育てくれたキチェスとリエッドへの

 恩を仇で返すこであり

 申し訳が立たないと諦めていた」

       

そして、諦めてたんかーい!


「だが、状況は変わった!」

ラテルは話し続けるルクトの顔を、じっと見ている

 

二人は顔も体型も瓜二つなんだよなぁ

互いに相手を見て

鏡を見てる気分にならないのかねぇ?


「今はトーキスとスイークがいる

 俺とラテルにもしもの事があっても

 跡取りがいればゴコーゼッシュ家は安泰だ

 ただキチェスとリエッドには・・・

 最大の親不孝をするが」

       

親不孝って?なにがでしょうか?

「最大の親不孝って、なぁに?」

「親より子が先に逝くことだ

 俺の母、は幼い娘を亡くし」

  

あぁ、前世の話ねっ

「寝食を忘れ泣き続けていた

 母の悲しみは年老いても癒えることはなく

 死んだ妹を恋しがっていた」

  

そうなのか・・・

我が子に先立たれた親の悲しみは一生続くものかぁ

私は随分と親不孝を重ねてきたもんだ


「俺は決めた。ラテルと一緒に戦うぞ!」

「待ってルクト、

 王室は表面上は平穏でも

 実状はアーザスが実権を握っている

 味方は少ない厳しい道のりだ」

「だから俺が仲間になるんだ

 ルクトの人生は、おまけの人生

 俺にはラテルやフォーラのように

 身命をかけ挑む目的など何も無い」

   

まぁ、たしかに無いよねぇ

私の道連れで、転生しちゃっただけだもんねぇ


「ただ漫然と年を取り死んでいく・・・

 そんな人生なんて真っ平御免だ!

 俺はラテルの仲間として

 大いなる目的を果たすため

 努力し協力し勇者として死ぬことを選ぶ!」


「僕は君を巻き添えにはできないよ」


「ほざけ小僧。

 俺の人生は俺のものだ!

 どう生き、どう死ぬかは俺が決める

 ブザマに死ぬよりも

 お前の仲間として、勇者として

 この国の民を救うため華々しく散ってやるさっ!」


かっかっこいい!なんかルクトかっこい~!

      

う~ん、ブザマに死ぬって・・・


馬に蹴られたりぃ

拾い食いで腹壊したりぃ

雷に打たれたりぃ

オジサンが空から降ってきたりぃって

自分、今までこんな死に方ばっかじゃん!

なんか、かっこ悪いよ~


いいなぁ~勇者

勇者になったらチヤホヤされる?

勇者になって死んだ方がかっこいいよねぇ?

いいなぁ勇者、私もなりた~い!


「私も、勇者になりたーい!」 

いかん、また心のこえが出てしまった


「そうか、フォーラも勇者になりたいか

 いいぞいいぞ、ガッハッハッ」   

痛いよルクト

なんで背中をバンバン叩くんだよ⁉

   

「二人とも、たしかに命の危険はあるけど

 死ぬと決まってるわけじゃ無いからね」

「えっそうなの?

 死なないと勇者になれないんでしょ?

 ねぇルクト?」

「勇者とは

 勇気を持ち恐れを捨て困難に立ち向かう者のことだ」

  

なるほど、私にもなれそうな気がする~!


「よーし、勇者になるぞー!」

「ラテル、俺とフォーラの決意は固いぞ」

「分かったよ。ありがとう、ルクト・フォーラ」

「よーし、今日から俺たちは仲間だ」

     

ルクトがこぶしを突き出した

ラテルが拳を合わせたので私も合わせた

エヘッ、なんか拳を合わせるのかっこいい


ところで・・・仲間ってなあに??

 

「ラテル、これからの計画は?」

「まずは8歳で

 王都のレアリカヒ学園へ入学するのは

 知っているよね?」

「おおっ」 


えっ⁉そうなの?


「8年生の卒業時に成績優秀な者は

 王宮特別学問所に入所でき

 そこで3ヶ月間学んだ後に

 晴れて王族直属の家臣になれる」 

「なるほど、まずは勉学だな」

「武術力も必要になる」

「となると入学までに

 しっかりと学問と武術の基礎を身につけないとな」 

       

ふ~ん、そうなのかぁ~


「明日からは特訓だな」


そう言いながらルクトが又もや私の背中を叩いた

なんで~~⁇

――――――――


私は勇者になって皆からチヤホヤされるんだ~


ところで、仲間ってなんだろう?

そんなことを考えながら眠りについた


《何故そなたは、いつも一人でやろうとする。 

 仲間とは、切磋琢磨し共に手を取り力を合わせ

 困難に立ち向かう存在。

 一人では出来ぬことも仲間がいれば成し遂げられる

 蝉丸よ、仲間とは大切なもの。仲間を作りなさい。》

 

久しぶりに、土階様の夢を見ていたら・・・


ドンドンドン・ドンドンドンと扉を叩く音で目が覚めた

うるさーい!誰だ、朝早くから!


「フォーラ、起きろ!」

   

ルクトの声だ

扉を開けると、いきなり


「さあ、早く朝食を済ませて勉強だ」

「今日は午後から淑女レッスンなんですけど」

「だから午前中に勉強するんだよ」

「えぇ~、なんでぇ~⁉」

「昨夜言っただろ、明日から特訓だと」

  

とっ、特訓てっ、私の特訓だったの⁉


「嫌だ!勉強なんかしたくなーい!」


「あのなぁ、勇者になるためには

 学校で良い成績を取らなければならない

 その為に学習する習慣を身に付けないと

 俺とラテルには備わっているが

 お前には無い、皆無だ」

 

おっしゃる通りです

私には学習習慣などありません

そして勉強する気など全くありません!


なんなら、この世から教科書なんて

全部消えてしまえばいいのに

とか、かぁ~なり本気で思ってますから~


「嫌だ。勉強嫌だ!」

「フォーラ、勇者になりたいんだろ~?」


それは・・・

「なりたい!」

「なら一緒に頑張ろう、俺が教えてやる

 元は大学教授だぞ~、教えるプロだ任せなさい」


うーーん

勇者にはなりたいが勉強はしたくない

悩む・・・


「俺たちは仲間だろ」

はっ・・

仲間・・・


「三人で協力すれば、なんだってできるさ」

    

そうかぁ、私たちは仲間かなのだ!

土階様、蝉丸は初めて仲間を作れましたよ~!


「よし!私は、勉強するっ!」

「偉いぞフォーラ(本当に、単純で助かる)」

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