第83話 柚希と瞳の考え
北川さんから瞳とラブホに入った映像を見せられてから一週間が過ぎた。まだ返事はしていない。
瞳と二人で放課後は生徒会に顔を出し、終わったら塾に行くという日を重ねながら二人で考えたがいい案は浮かばなかった。
今日は瞳が塾の講座が一時間なので、瞳を家に送りながら考えている。
「柚希、やっぱり停学や退学になるのは嫌。柚希とも離れたくない。だから北川さんには私達が別れた体をすればいいんじゃない。
それで週中は会わない、口も聞かないって雰囲気にして、土日だけ会うっていうのはどうかしら?」
「彼女がどうして俺達があそこに入る映像を手に入れたかが分からないと、何となく同じ方法を使われてバレると思うんだ」
「じゃあ、別れた体で夜ビデオ通話だけにする?」
「それは嫌だ。瞳と会える時は、傍に居たい」
「私もだけど…」
答えが見つからないまま、彼女を送った後、家に帰った。玄関を開け部屋に行こうとすると
「柚希」
「何、姉ちゃん?」
「話が有る。あんたの部屋に行っていい?」
何だろう話って?
姉ちゃんが俺の部屋に入って来るとベッドの上に座って
「柚希、あんた何か隠しているでしょう?」
「えっ、何を。何も無いよ」
「あんたは嘘が下手ね。顔に思い切り出ているわよ」
「…………」
「話してみなさい」
「実はクラスメイトから脅されているんだ」
「えっ?!」
姉ちゃんなら何とかしてくれるかもしれないという、一抹の希望を心に抱きながら、恥ずかしいけど姉ちゃんに北川さんからの脅しの内容を話した。
「はぁ呆れた。まあ、あんた達がどこまで進んでいるかなんて想像つくけど、そんなとこに入ってまでしたい関係とは思わなかったわ。まあ自業自得ねと言いたいところだけど…。
仕方ないわね。私は取敢えず、先生方に探りを入れながら、万一その映像の情報が先生の耳に入ったら直ぐに教えて貰う様にするわ。
柚希、分かっていると思うけど、あなた達は高校生よ。まして彼女は今年大学受験生。もう少し節制しなさいね。
後、上坂さんに彼女のお母様にこの事を伝える様に言って。少しは協力してくれるかもしれないわ。可愛い娘の為ならね」
翌朝、いつもの様に教室に入ると北川さんが俺を見ていた。視線が合うと声も掛けずに顔を横にしゃくって俺に廊下に出る様に仕草した。
なるほど声を掛けられないならこの方法があるか。仕方なく廊下に出ると北川さんは景色でも見るような仕草をして俺に顔を向けずに
「山神君、そろそろあの事の返事聞きたいな」
「…もうちょっと待って。必ず返事するから」
「分かったわ。もう夏休みまで時間が無いわ。宜しくね」
それだけ言うと来た時と同じ様に顔を見ないで席に戻ってしまった。
教室に戻ると亮や武田が、
「大丈夫か柚希?」
「柚希、何か有るんだったら言えよ」
「二人共ありがとう。でも大丈夫だから」
あんな事、言えるはずがない。
その日もあまり授業に集中出来ないままに放課後になり、瞳と一緒に生徒会に顔を出した後、二人で塾に行った。
「瞳、今日塾が終わったら、話たい事がある」
「何?」
嫌な予感しかしない。もし柚希が別れようなんて言って来たら。この前私があんな事言ったから。
塾の教室に入って行くと北川さんが、小さく手招きして来た。流石に横で講義を受ける気にはならない。だけどあれを言われて以来、こっちが避けても俺の隣に座って来る。俺が誘いを無視して離れた所に座ると強引に俺の傍にやって来た。
「山神君、一緒に受けよ」
本音言えばまた他の机に行きたいところだが、もうほとんど埋まっている。仕方なしにそのまま座っていると
「連れないなあ。返事位してくれてもいいのに」
「…………」
ふふっ、結構効いているみたいだ。結論は分かっているけどね。
塾の帰り、瞳さんに姉ちゃんが昨日言った事を話した。
「えっ、でもそんな事言ったら、別の意味で柚希と私は別れさせられるかも知れない」
「どうなるか分からないけど、無謀な意見は言っていないと思う」
「…分かったわ。でももし柚希と別れろって言われても私別れないからね。あの映像が出回ったって柚希が側に居てくれればいい。私はどんな事が有っても貴方を選ぶから」
「瞳、ありがとう。俺も絶対そうする」
「じゃあ、両親に言うね」
「いや、姉ちゃんは瞳のお母さんに言ってくれと言っていた。意味はあまり分からないけど」
「…分かった」
私は柚希に家まで送って貰った後、お父さんが帰ってこない内にお母さんにあの事を話した。
「まあ、まあ。そんなところまで。瞳さんがそんなに彼を思っているとは思わなかったわ。仕方ないわね。
その子は北川財団の娘と言っていたわね。喜朗さんの娘ね。あの子は昔から気位が高いから。
所で瞳さん、あなたはどうするの?」
「どうするって、どういう意味ですか?」
「もし、この事が学校にバレたら停学は確実よ。退学かもしれない。大学受験を目の前にそんな事になったらあなたのこれからに関わるわ。彼と別れるの?」
「お母さん、私は絶対に柚希とは別れません。もし万が一この映像が世の中に広まっても柚希の傍に居ます」
「でもあなたがそう思っても彼はそう思っていないかも知れないわ」
「そんな事ありません。さっきだって、はっきりと私と同じ考えだって言ってくれた」
「そう、じゃあ、明日ここに連れて来なさい。勿論お父さんが居ない内にね。あの人は狭量な所がるから。先に話の方向を決めてから話しましょう」
「分かりました」
―――――
さて、どうなる事やら。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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