第82話 北川香澄は考える
私、北川香澄。上坂瞳を貶めるという目的で山神柚希に近付いた。彼とて所詮高校生。少し私が色香見せれば簡単になびくと思っていたが、中々ガードが固い。
仕方なく、手の者に二人の行動を監視するように命令したが、とんでもない物が手に入った。そう、あの二人がラブホに入って行く映像だ。
これは使える。これをネタに山神君を落とす事が出来ると考えた。これを学校に見せて停学、退学を選ぶか、上坂瞳と縁を切るかという選択肢を彼に与えるのだ。
上坂の立場や山神君本人の立場を考えれば、当然上坂と縁を切るという選択するに違いない。
ただそれでは、上坂が山神と別れたという事実だけだ。最初はショックを受けるだろうが、やがて立ち直るだろうし、あの容姿なら直ぐに新しい彼氏が出来るかもしれない。
それでは効果がない。もっと強くインパクトを与える為には、山神が私を抱く瞬間を写真に撮って送り付ければいい。
実際には体を任す必要なんてない。その仕草だけで充分だ。これなら彼女の心に大きな衝撃を与えるだろう。裏切られたという衝撃を。
そして山神君と上坂がラブホに入っていく映像をネットに公開する。社会の二人に対する風当たりは強くなる。それが最終形だ。不特定多数の人間から蔑まされる。
ふふっ、考えるだけでも気分がいい。さて、この映像をいつ山神君に教えるかだ。今日の一限目後の中休みで上手く声を掛ける事が出来たが、普段中休みは彼の友達が彼をガードしている。昼食は上坂と二人、放課後は生徒会、その後は塾だ。
まさか塾で講義中に話掛ける訳にはいかない。自習時間という手もあるが…さてどうしたものか。
俺、山神柚希。体育祭から二週間が経った。武田は渡辺さんの心を上手く掴んだらしい。最近はお昼も二人で楽しそうに食べている。亮も望月さんと楽しそうだ。
俺も塾も相まって瞳さんと一緒に居る時間が増えた。みんな上手く行っている様だ。
北川さんは、体育祭の翌日俺に変な事を言って来たが、それ以来その件に関して声を掛けられる事は無い。朝の挨拶位だ。俺にとってはとても良い事だと思っている。
今、俺達は生徒会の仕事も終わり塾に向っている。まだ時間的は早い。というか、今の時期は結構生徒会の仕事も暇になっている。特に学校としてイベントが無いからだ。
「柚希、後二週間で学期末考査だね。一緒に勉強しよう。それが終われば夏休み楽しみだわ」
「でも瞳は大学受験の塾通いじゃないの?」
「夏合宿と言っても夏休み中やる訳なじゃいし、勉強も偶には気を抜かないと」
「瞳がそう言うなら」
塾に入り、今日も瞳さんは二時間、俺は一時間の講義を受ける。二階の自分が講義を受ける教室に入ると北川さんが手招きした。まあ、顔見知り位の意味で隣に座る。でも挨拶以外は特に話しかけてはこない。
講義は終わり俺が自習室に行こうとすると
「山神君、ちょっと良いかな?」
「何?」
一度フロントから外に出て話を聞いた。
「ねえ、これ見て」
「えっ!これをどうして?」
それには俺と瞳さんがラブホに入って行く姿が映し出されていた。
「そんな事はどうでも良いわ。どうしようかしらこの映像」
「…………」
この映像どうするつもりなんだ。こんなものを学校に提出されたら、俺達は間違いなく、停学か退学だ。俺は良いが瞳さんは大変だ。大学受験前という事もある。
「ねえ、山神君から提案してくれないかな。これをどうすればいいかって。勿論私が黙って廃棄するなんて提案は無しだよ」
「その提案するのに時間はある」
「少なくても夏休み前がいいかな」
「分かった」
「じゃあ、自習室行こうか」
俺の前を北川さんが歩いている。この子はなんであんな映像を持っているんだ。あの時、あそこに入る前は二人で充分周りを確認したのに。
自習時間は、とても勉強が手につかなかった。やがて瞳さんの講義も終わり彼女が自習室に入って来ると同時に北川さんが席を立った。
「山神君、良く考えてね。返事は早い方がいいわ」
北川さんが出て行った後、
「なにあれ、柚希彼女に何か言われたの?」
「瞳、外に出ようか」
俺は塾の有るビルを出て駅に行く方とは逆方向に歩きながら彼女から言われた事を瞳さんに伝えた。
「何ですって!」
「瞳声が大きい」
「瞳よく考えよう。分からない事多い。
なぜ彼女はあの映像を持っていたか。
なぜ彼女はここまで執拗に俺に接近して来るのか。
なぜ彼女は俺が考える様に言ったのか。普通は一方的にあの映像を手に入れた段階で脅してくるだろうに。
瞳、何か心当たり無いか?」
「…分からないわ。彼女と会ったのだって私が中学三年の時、彼女が中学二年の時だもの。それが最後よ」
「その時何か無かったの?」
「何かって…。その時私はお父さんに連れられ彼女のお父さんが運営する北川財団のパーティに出席した時の事だけど。
私と彼女が一緒に飲み物を取りに行った時、彼女が私の足に躓いて転んでしまったの。
その所為で彼女の来ていたドレスにジュースが濡れて、彼女のお父さんからも叱られていた記憶がある」
「それだよ。瞳」
「でも、それなら私に直接話しかけて来るでしょう。なんで柚希に声を掛けて来たの。二年の新学期からずっとだよね」
「分からない。それが分かれば彼女の考えている事も分かるんだけど」
「とにかく二人で考えましょう」
「ああ」
あの二人今時どんな顔して慌てているんだろう。返事が楽しみだわ。彼がどんな提案(返事)を持ってこようと、あの二人にしか害はいかない。楽しみだわ。
―――――
北川さんカードを出してきましたね。柚希と瞳、どう対応するんでしょう。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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