第81話 後始末は二種類ある


 体育祭も無事終わり、片付けも終わった夕方。生徒会室に集まった。


「皆、ご苦労様。体育祭も無事に滞りなく終わりました。今日はこれで終了します。お疲れ様でした」

「「「「お疲れ様でした」」」」


 生徒会長の挨拶で無事、今日の生徒会の役割も終えた。まだ午後四時半だ。


「柚希、私の家に来る?」

「俺も瞳と会っていたいけど、俺汗臭いし悪いから今日は帰る」

「そんなの大丈夫。柚希は制服も持って来ているんだから。だから…ごにょごにょごにょ」

「えっ、でも」

「柚希、声大きい」


 まだ生徒会室を出ていない役員達と姉ちゃんに睨まれた。

「上坂さん、柚希とは適切なお付き合いをお願いね」

「はい」

 瞳さん顔が赤い。


 全く、どうせ彼女の事だから一緒にシャワーでも浴びようなんて柚希を誘ったんでしょ。全く。

 さて、私も着替えたら塾に行くか。まだ間に合う。





 その頃、


「静香、本当に良いんだな」


 彼女は頭を縦に振った。下を向いたままだ。俺も初めての経験だ。何をどうすればいいか全く分からない。でも何とかなると思っている。


 俺の家で別々にシャワーを浴びた。勿論俺が先に浴びた。その後、静香が浴びたけど結構長かった。女性ってこんなものなのかな。姉ちゃんもそう言えば風呂が長い。



 彼女はバスタオルを体に巻いて出て来た。俺用の大きなバスタオルを貸したけど、静香も百七十五センチはあると聞いているが、ほとんど長さがぴったりだ。



 それから俺の部屋に行き、二人でベッドに横になってキスをした。






 翌朝、俺はいつもの様に起きた。顔を洗ってダイニングに行くと姉ちゃんが食事をしていた。

「おはよ、ゆず…えっ、どうしたの目の下、クマが出来ているよ。まさかあんた、あの後…」

「姉ちゃん、何も言わないで」


 食事中の姉ちゃんがいきなり俺の手を取ると洗面所に連れていかれた。

「ちょっと待っていて」


 どうやら二階の自分の部屋に行った様だ。帰って来ると

「顔を出しなさい」


 姉ちゃんの方に顔を向けると

「全く、昨日上坂さんに言っておいたのに。高校生で若いからって限度があるでしょう」

 そう言いながら、俺の目の下にお化粧の様な事をし始めた。


「これでいいわ。でも顔全体の疲れはどうしようもないから。今日は塾までにしなさいね」

「分かった」


 姉ちゃんがお化粧道具を仕舞って洗面所から出て行こうとした時に聞いた。

「姉ちゃんって彼氏いるの?」


 一瞬だけ俺を睨んだ後、二階に向いながら

「…いるわよ」

 顔が赤くなったような気がしたけど?




姉ちゃんが先に出て、俺も朝食を終わらせると直ぐに学校の支度をして玄関を開けた。詩織も出て来た。


「おはよ柚希」

「おはよ詩織」

「柚希、なんか疲れているみたいだけど、昨日の体育祭の所為?」

「うん、まあそれもある」

 本当の事なんか言えない。瞳さん段々体力付いて行くみたいだ。


 電車に乗ると途中で亮が乗って来た。とってもすっきりした顔をしている。

「柚希、おはよ。どうしたんだその疲れた顔」

「亮、おはよ。ちょっと昨日疲れて」

「そうか、体育祭頑張ったものな」

「ああ、疲れたよ」

 亮は優しい。



 学校のある駅の改札を出ると瞳さんが待っていた。

「みんな、おはよう」

「「「おはようございます」」」


 瞳さんが明るい顔して、いつもの様に俺のすぐ隣に来る。

「柚希、少し疲れた顔しているわね。昨日の体育祭の所為?」

「ああ」

 正確には、体育祭後のあなたの所為でしょう瞳さん!でも彼女もちょっと疲れた顔をしている。




 俺達が教室に入ると武田がとてもすっきりしたイケメン顔で

「柚希、おはよう」

「ああ、おはよう武田」


「山神君、おはよ」

「おはよ渡辺さん」

 武田の傍に居た渡辺さんも少し輝いて見えるのは気の所為か。あっ、この二人もしかして。


 俺がじっと二人を見ると武田が俺の耳元に顔を持って来て小さな声で

「ありがとうな。柚希のお陰だ」

「そ、そっか。良かったな」

 渡辺さんと…そういう事か。だからこんなに二人ですっきりした顔をしているんだ。


 そう言えば亮と話しをしている望月さんもなんか輝いているな。


 もしかして…亮よ、お前もか!


 俺は自席で外を見ながら

「はーぁ、疲れた」

「山神君、昨日はお疲れ様」


 亮と望月さん、武田と渡辺さんが、多分のあの理由で盛り上がっている所を突かれた。北川さんが側にいる。

「ねえ、一限目の中休み。話が有るんだけど。良いかな」

「えっ?!」

「いいでしょ!」

「分かった」


 ニコニコしながら自席に戻る後姿を見ていると

「悪い、柚希」

「ごめんなさい。山神君」

「いいよ、今のは仕方ない。中休みだし。時間短いから」




 そして、一限目が終わり、中休みになると北川さんが寄って来た。

「山神君、良いかな」

「ああ」


 北川さんは俺を廊下に連れだすと

「山神君、随分疲れた顔をしているね。昨日の所為」

「ああ、ちょっと頑張ったからな」

「ふーん、体育祭後の事?」

「えっ?」


 ふふっ、山神君に誰がしたか知らないけど、お化粧で目の下のクマを隠しているのは、直ぐに分かる。


「何を驚いているの?体育祭だけでは、目の下のクマなんて出来ないわよ」

「な、なんで分かるの?」

「ふふっ、語るに落ちたわね。したんでしょ一杯。あの人と」


「ねえ、山神君。私にもして欲しいな。上坂さんにした事と同じ事を」

「何を言っているのか、全然分からないんだけど」

「白を切るのね。まあいいわ。証拠有るけど、そんなもの見せても今更意味ないでしょうしね。

 それに山神君が停学や退学になるのは私としても面白くないし」

「えっ、それどういう事?」


 予鈴がなった。


「山神君、この話はまた後でね」


 北川さん、証拠あるって言っていた。俺と瞳さんの事で何か掴んでいえるのか?


―――――

 

 おっと、ここでとんでもないカードが出て来そうです。


次回をお楽しみに 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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