第78話 もうすぐ体育祭
俺が通う中喜多高校は、六月の中旬に体育祭があり、生徒会は実行委員会として色々な準備がある。
でもその辺は姉ちゃん達、山神生徒会長や西富副会長辺りが学校と調整したりしているので、庶務としての俺と瞳さんは、準備に関してはほとんどする事が無い。
当日はプログラム進行の確認をする事になっているけど、一日それをしている訳では無い。
姉ちゃんと副会長を除く生徒会役員は来賓の人のお茶出しやお昼のお弁当の用意など、色々な用事がる。
だからと言って何の種目にも出なくていいなんて甘い世界ではない。最低二種目は出ないといけない。
それに、それにだ。俺は白組だが、瞳さんは紅組という最悪なパターンになっている。
誰がこんな組分けをしたのか知らないが、一年から三年までのAからDまでの四組をシャッフルして二組ずつ色分けするという、根拠のない方法だ。これを考えた奴の頭をどついてやりたい。
そして出場種目はLHRで決める当日。
登校しながら瞳さんが聞いて来た。
「柚希はどの種目にするの?」
「えっ、何も決めて無いです。なるべく運動能力を要求されない種目が良いですね」
「あははっ、確かに柚希は向いて無さそうだね」
「瞳はどうするの?」
「去年と同じだなあ。混合リレーと玉入れかな。無難な所で」
「そうかあ。瞳は運動神経良いからな」
その日の授業も終わり、残りはLHRになった。早速選ばれた体育祭実行員が二人前に出て
「じゃあ、みんな体育祭の出場種目を決める。これに出たいという人いるか?」
「走り幅跳び出るぞ」
最初に名乗りを上げたのはサッカー部の子だ。それから後は盛り上がったように決まって行った。
「柚希、どうするんだ?」
「あっ、俺かあ。俺は…」
「山神、混合二人三脚と借り物競争に出る人が足らない。出てくれないか?」
体育祭実行員に声を掛けられた。
「柚希、良いんじゃないか」
「ああ、そうするよ。俺出るよ」
何も考えなく安請け合いをしたところに
「私も混合二人三脚と借り物競争出ます」
「北川さんね。OKこれでほとんど決まった。後は各自練習をしておいてくれ」
何だって!
体育祭実行員の終りの声を聞いた涼子先生が、
「はい、決まったみたいね。事前に練習する人は怪我しないようにね。怪我すると元も子もないわよ。では今日はここまで。帰って宜し」
祥子先生が教室を出て行くと他の生徒もがたがたと教室を出始めた。
「山神君」
やっぱり早速声を掛けて来た。
「ねえ、二人三脚の練習しようか?」
「えっと、俺生徒会の仕事あるから、出来ないよ」
「でもぶっつけ本番だと怪我するかも知れないわよ。私は嫌だなそんなの」
「じゃあ、他の人と組めばいいじゃないか」
「さっきの見て無かったの。他のペアは決まっているわ」
「えっ?本当か亮?」
周りに誰もいない。亮も望月さんも帰ってしまったらしい。武田も渡辺さんも部活へ行ってしまっている。仕方なしに
「じゃあ、今度練習しよう」
「いつするの?後、二週間もないよ。土日する?」
「うーん、ちょっと待って。この話明日にしよう」
俺は脱兎のごとく教室を出ようとして…手を掴まれた。俺足おそ。
「駄目、明日だとまた明日になる。今日からしよ」
「いや、いきなりは出来ないよ。体操服も持っていないし。生徒会にもそれ言わないといけないから」
「じゃあ、明日からね。体操服忘れないでね」
ふふっ、これでいい。このチャンスは大きい。
俺は、急いで生徒会室に行くと瞳さんは来ていた。彼女に混合二人三脚やる事になった事とその相手が北川さんだと告げると
「不味いわね。何か考えているんじゃないかしら」
「とにかく、姉ちゃんには生徒会優先にして貰って練習できる日を絞って貰う。そうすれば、最低限の練習時間になる」
「柚希の練習の時は、私も傍に居る。終わった後一緒に塾に行こう」
「そうだね、それがいいや」
こうすれば北川さんと二人だけの時間は練習している時だけだ。
姉ちゃんに事の次第を言って練習日を絞って貰った。出来るのは来週の月曜日と火曜日。体育祭の前日二日間だ。
次の朝、学校に行ってから北川さんに練習出来る日を言うと
「えーっ、それじゃあ全然足らないよ。日曜空いているでしょう。日曜練習しよう」
「日曜は空いていない。それにそこまで気合入っていないから」
北川さんが少し怒った顔をして
「分かったわ。当日怪我したら山神君の責任だからね!」
そう言って自分の席に戻ってしまった。面倒な事にならないと良いんだが。
校内での雰囲気も大分盛り上がって来た週明け月曜日の放課後、早速北川さんが近寄って来た。
「山神君、二人三脚の練習しよう」
「「えっ?」」
亮や望月さんが驚いている。
「柚希、いいのか?」
「ああ、練習しないと怪我するからな」
「それはそうだが…」
そこに瞳さんがやって来た。
「柚希、練習するんでしょ。見ているわ」
「上坂さん、あなたは部外者よ。出て行って」
「そんな事出来ないわよ。練習終わったら、一緒に塾に行くんだから。柚希とね!」
「…………」
まったく、この女(上坂)は。練習終わった後、私が山神君と一緒に塾に行こうと思っていたのに。まあいいわ。見せつけてやる。
俺と北川さんは、体操服に着替えてからグラウンドに出た。普段グラウンドは陸上部、野球部、サッカー部、テニス部が使っているが、水曜日から体育祭という事も有って、陸上部は、百メートル走の所を一般生徒に開放している。
俺達も他の人の邪魔にならない様に端に行くと
「北川さん、早速始めようか」
「駄目だよ、山神君。準備運動はしないと」
そう言って俺の方を向いて体を回し始めた。凄い彼女の大きな胸が一緒にグルングルン回っている。不味いと思い目を逸らせて俺も同じことをしていると
「山神君、肩と背中の柔軟しようか」
いきなり俺の両肩を掴んで来た。
「君も私の両肩を掴んで、少し足を開いて」
言われるままにすると彼女が前かがみになる様にして来た。よく二人でやる柔軟だ。自然と俺の目は彼女の胸元に行く。大きな胸が重力に従っている。胸元から少しだけ中が見える。意図的にしているのか、この人。
不味い、北川さんが柚希に意図的に自分の胸を強調して見せている。あの女、何考えているの。
「じゃあ、準備運動もここまでね。早速、足首を私のハチマキで絞めるわね。左足出して」
言う通りにすると彼女は自分の右足と俺の左足をハチマキで結び付けた。
「ふふっ、しっかりと結んだわ。後は君が私の肩に手を掛けて」
「えっ?!」
「こうだって」
俺の手を強引に自分の脇腹に持って行った。
「そこは肩じゃないよ」
「いいの、これでやってみよう。行くわよ」
彼女も俺の脇腹に手を回して来た。柔らかい。
「いちに、いちに、いち…」
バタっ、二人で躓いてしまった。
「大丈夫、北川さん」
「あははっ、上手く行かないものね。さっ、また始め…」
起きようとして北川さんが躓いて俺の方に体を乗せて来た。彼女の大きな柔らかい胸と細い体が押し付けられている。
「北川さん、どいて、どいて」
「起き上がれない」
ふふ、たっぷりと私の魅力を彼に伝えるの。
「うわっ!」
北川さんの体が俺からいきなり引き離された。瞳さんだ。
「北川さん、あんたわざとやっているでしょう」
「何を言っているんですか。躓いて転んだだけです」
「そう、じゃあ私が起こしてあげるから、早く柚希と離れて」
「あなたがしなくても自分で起きれるわよ」
あれ、さっき起き上がれないなんて言ってなかったっけ。
それから同じような事が何度かあり、一時間が過ぎてしまった。
「柚希塾あるから、それ終わらせて帰ろ」
「上坂さん、まだ終わっていないです」
「柚希は塾があるの!」
「北川さん、また明日やろう」
「でも…」
ちっ、あの女(上坂)邪魔しやがって。まあいいわ。明日もあるし、当日もある。
塾に行きながら瞳さんが怒っている。
「柚希、あの女と練習するの止めて。あれわざとしている」
「俺も何となくそう思っているけど、確かに練習しないとクラスにも迷惑掛けるし」
「…………」
あの女(北川)頭に来る。
そして翌日も同じ光景になった。
―――――
北川さん、攻めで来ましたね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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