第77話 それぞれの思惑


  俺、武田信之。小林の件で俺が渡辺さんを助けようとして怪我をして病院に入院した。

 病院に入っている間、渡辺さんは責任を感じているのか毎日、学校が終わると見舞いに来てくれた。偶にはプリントも持って来た。これは貰った翌日の昼間にこなした。


 渡辺さんとは色々な話をした。俺の小さい頃の話、バスケを何故始めたかの話、中学時代から言い寄る子はいたけど、付き合わなかったという話。


 その都度、渡辺さんはとても楽しそうに聞いて笑ったりしていた。渡辺さんも何故陸上をやり始めたのかとか、中学まではどうだったのかという話をしてくれた。


 楽しい時間が過ぎて行く中で、俺は四度目の告白を渡辺さんにした。そしてとうとうOKを貰えた。


 その後は順調だった。彼女静香も四月から陸上に復帰して、俺もバスケに復帰した。帰りも待合せて毎日一緒に下校した。


 朝練は俺だけだったけど、彼女が早めに来て改札で待合せて一緒に登校してくれた。そして土日も会った。


 その間にキスも出来た手も繋げた。とても順調だった。俺だって正常な高校男子、そこまで来ればどうしても次を求めてしまう。


 だから思い切って言ってみた。渡辺としたいって言ってみた。もしかして直ぐにOK貰えるかと思ったが、不安な事が有るらしく中々うんと言って貰えない。


 俺も初めての事だから、彼女の気持ちも分かる。でも何日も待たされると流石に俺のどこが悪いのか聞いてみた。


 何も悪く無いという。俺の事、ずっと好きだとも言ってくれた。じゃあと思い、中間テストが終わった金曜日に誘ったらこの日も駄目と言われた。


 頭に来て先に帰ってしまったけど、日曜日のデートは来てくれたので、金曜日先に帰った事を謝った。そしてまた誘ったら体調が悪いとか言われた。


 流石に怒る様にいつ出来るのか聞いたら、必ずするからもう少し待ってくれと言われた。


 何が理由なのか分からない。俺とするのが嫌でもないらしい。じゃあ何故?最近はこればかり考えている。


 どうすればさせてくれるんだろうか。俺が初めてだって言ったからかな?待つしかないか。


 バシッ!


「痛い!」


「武田何処見てんだ。ボールを見ろ!」

「はい!」


 いけない。練習にまで影響してしまっている。何とかしないと。でも誰にも相談できないしな。先輩達はどう見ても相談に不向きな人種だし。





 私、渡辺静香。先週の金曜日。山神君と別れた後、彼を偶然にもつけたら、山神君と上坂先輩がラブホに入って行く姿をスマホで撮影した。これを学校の先生に言えば、あの二人は間違いなく停学処分、悪ければ退学処分になる。


 だからこれをネタに山神君に私の初めてを貰ってほしいと言おうと考えた。もしかしてしてくれるかもしれない。


 でもよく考えたら、それから後は彼とは絶交になる。そんなの嫌だ。例え私の彼が信之でも山神君とは毎日楽しく話していたい。


 ラブホに入るという証拠を撮ったは良いがこれじゃあ意味がない。人に頼む様なものでも無いし。

 彼が傷つかずに、上手く私との関係を持つことが出来ないだろうか。そしたらその後は信之でもいい。


 信之はずっと待っていてくれる。でもいつまで待っていてくれるか分からない。彼は今でも女の子から告白されている。時間は無いんだけど。


 もしこのまま私が信之に呆れられて彼から別れを言わるのは嫌だ。せっかく彼と恋人同士になったのだから。


 今日も山神君は私の後ろに座っている。松本君や最近知った松本君の彼女望月真由美さんと仲良く話をしている。


 武田君とは朝一緒に登校しているが、朝練終わった後、二人で話す事が少なくなってしまった。話をしていても彼に笑顔はあまりない。早く何とかしないと。


 そう言えば二年になって知った北川香澄さんが山神君にしつこく付きまとっている。

 武田君からも松本君と仲間になって北川さんが話しかけて来ようとしたらブロックしてとお願いされている。それだけは大賛成だ。やっと静かになった彼のまわりを五月蠅くさせる人は嫌いだ。





 私、北川香澄。上坂瞳を貶める為にその彼氏である山神君を篭絡しようと考えたが、あっという間に二ヶ月が過ぎてしまった。


 相手は男子高校生。私は容姿に自信がある。色香で簡単に落とせると思ったが、彼は中々ガードが固い。挙句彼の周りは結構しっかりと友達関係が出来ていて、最近は近付く事も出来ない。


 唯一、毎日の塾通いで話す事は少し出来るが、それでは全然意味がない。あの子が私に興味を持って、私を落とそうとしてくれればそれで成功なのだが、振り向いてもくれない。


 積極的に印象付ける信長型が上手く行ったので、次は豊臣型、金品(私)を餌に篭絡しようと思ったが中々落ちない。どうしたものか。


 しかし、あんななんの取り得もない男がどうしてこのクラスでは人気があるんだ。それにあの女(上坂)まであいつを好いている。


 見ていれば分かるが相当の仲だ。手の者を使って強引にするのもいいが、それでは効果がない。まるで私が単なるヤリ女になってしまう、困った。作戦変更も視野に入れて考えないと。





 俺、山神柚希、亮や望月さん、武田や渡辺さんのお陰で北川さんからのアプローチをブロック出来ている。


 彼女が何を目的として俺に積極的に近づこうとしているのか分からない。ただそのやり方に少しだけ悪意を感じる。


 うぬぼれる訳はないが、素直に俺の事を好いているならもう少し優しく接してくるんじゃないかな。


 だとすればその目的がはっきりするまでは、完全に彼女北川さんをブロックするしかない。でもいつまでも同じ方法が続くとは思えない。今のうちに新しい対策を考えておかないといけないのかもしれない。


 もうすぐ体育祭だ。生徒会の仕事をしているのでそんなに自由時間は無いと思うが気を付けないと。


―――――


 皆さん、それぞれの思惑で必死です。頑張れって言えないか?


次回をお楽しみに 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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