第76話 考えても解決出来ない事もある
俺と渡辺さんは何も話さずにお昼を食べた。話ようがない。だって今の俺では絶対解決できない問題だ。
「俺、ドリンクバーに行って来る。何か持って来る?」
「じゃあ、オレンジジュースお願い」
俺はドリンクバーに行って、グラスに氷を入れた後、オレンジジュースを入れながら渡辺さんを見た。下を向いているだけだ。
自分の分もグラスに氷とコークを入れてテーブルに戻ると渡辺さんが体を起こしてすがる様な目で俺を見ている。答えなんか無いよこれ。
「渡辺さん、武田と…そのあれするのは嫌なの?」
下を向いて首を横に振っている。
「いずれ知らないといけないと思っているけど…。でも最初はやっぱり…」
「やっぱり何?」
「ううん、何でもない。でも最初は山神君に教えて欲しいなって。だって上坂先輩と一杯しているんでしょ」
「そういういい方は、ちょっと。…確かにしているけど」
「だから知っている山神君に手ほどきして貰えば信之とも出来るかなと思って」
「あの、それって本音?」
「うん」
えっ、どこかのラノベじゃ、男子が女子を騙してこんな事するんだろうけど、ちょっと反対だよな。それに渡辺さんのお願いは流石に受け入れられない。
「渡辺さん、無理だよそれは。武田は何て言っているの?もちろん俺の事の話じゃなくて。そのもう経験あるとか」
「彼も初めてなんだって。だから不安になっちゃって」
なんとか山神君にして貰わないと。
「じゃあ、武田と良く話せば。俺だって梨音の時が初めてだったし。あっ!」
自分で言って恥ずかしくなった。口を滑らすとはまさにこの事。やっちまった。
「ふふっ、山神君って正直ね。変に経験者の人よりいいわ。お願い。一度だけでいいの。ねっ、お願い」
両手を顔の前で合わせて俺をジッと見ている。
「いや、それは流石に無理、絶対に無理」
「でも考えて。私は山神君しかいないの。貴方だけが私の初めてをあげれる人なの」
「ちょ、ちょっと外に出ようか」
流石にここでは、話し辛くなって来た」
「うん、出よう」
この流れで。なんとか。
俺達はファミレスを出た後、駅の改札の方に向かった。
「山神君、このまま行こう」
言っている事は分かるけど出来ない。
「ねえ、お願い、信之と私の為と思って」
いやいや、流石にそれは違うでしょう。しかしこんな相談確かに瞳さんが一緒では出来ないな。ここは逃げるが一番だ。
「渡辺さん、もう午後二時だよ。この話、また今度にしよう。俺の頭が付いていけなくて」
「でも今日がいい。明日もし信之が言って来たら…」
「それほんと俺無理だから。じゃあね渡辺さん」
俺は改札を入ると直ぐに瞳さんに電話した。直ぐに出てくれた。渡辺さんと話している間にムズムズして来た。
「柚希終わったの」
「うん、相談は解決できなかったけど、とにかく今は解散した。これから瞳の家に行っていい?」
「今日は家族がいる。外で会おうか。ここの改札で良いかな?」
「うん、今ホームだから電車乗ればすぐだから」
「じゃあ、改札出ないで待っていて」
「了解」
俺達は、デパートのある街に来ていた。
「柚希、どうしようか?」
「瞳、会っていきなりだけど…。いいかな?」
「えっ?あっ、そういう事。うん良いわ。周りに気を付けて行こうか」
……………。
「柚希どうしたの。今日凄いよ」
「今日は思い切り瞳欲しくなって」
「じゃあ、一杯して」
山神君、私と別れた後、私が帰るホームに来た。彼の家は反対方向のはず。おかしいなと思ってついて行くと私が降りる駅の隣の駅で降りた。
私も気付かれない様に降りると上坂先輩が改札に来た。彼女の家はここなのか。何処に行くのかなと思ってついて行くとデパートのある駅に降りて、そのまま来たのがここラブホ街。二人は躊躇なく入って行った。慣れているみたいだ。
バッチリスマホにも録画した。これをネタに使えば彼は抱いてくれるかも知れない。もしかして私を選ぶかも知れない。
渡辺さんが俺達に付いて来たとは露知らず、午後六時までここにいた。
私、渡辺静香。日曜日、信之と会った。昨日勝手に帰って悪かったと謝ってくれた。基本的にはとてもいい人。この人だって決して悪くない。素行だって良いし、心も優しい。我儘言っているのは私の方。
今日もお願いされた。そんなにしたい事なんだろうか。でも今日は調子が悪いと言って断った。流石に、いつならいいのと聞いて来たので、もう少し待って。必ずするからと言って我慢して貰った。ごめん信之。でもこれだけは譲れない。私の初めては山神君。
俺、山神柚希。月曜日、いつもの様に亮、詩織そして瞳さんと登校した。今日は珍しく雨の日。傘があるのでいつもの様な距離は取れない。
瞳さんが相合傘で行こうと言ったけど、お互いが濡れるから止めた方が良いと言って断ったら、ブーイングされた。それを見ていた亮と詩織が笑っていたけど。
今日は中間考査の成績上位四十名が発表される。理系Aクラス、文系Cクラスの人達は、この順位表に入っていないと学期末考査を頑張らなくては行けなくなる。
まあ、俺はBクラスに落ちようが興味ないのでそのまま通り過ぎようとすると瞳さんに手を掴まれた。
「柚希、ちゃんと見ないと」
「えっ、でも…」
「柚希、凄いじゃない三十番に入っているよ」
詩織が教えてくれた。
「えっ?!」
本当だ。亮は五番だ。詩織も七番に入っている。一桁台なんて俺には縁の無い事だ。
「柚希、学期末考査は一桁台目指そうぜ」
「亮、それはアリが宇宙までジャンプするより難しい」
「比喩が何とも言えないな。でも大丈夫さ。柚希には優秀な彼女や友達がいるじゃないか」
「…………」
なんとも言えない指摘だ。瞳さんはともかく友達って言っても亮と詩織は仲が良いけど一緒に勉強した事ない。誰の事言ているんだろう。
山神君は、三十番か。まずまずの場所ね。これなら伸びしろは十分ある。あの子の地頭はいい。問題の間違いはそもそも本人が覚える気が有るのかって程度の所ばかり。これも材料に使えそうだ。
「北川さん、凄いわね。二番なんて」
「まあこんなものよ」
一番はつまらないから。
―――――
しかし、渡辺さん、柚希に何処で仕掛けるのかな。不安です。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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