第75話 危うきは近寄らせないのが一番


 GWも終り今日からまた学校だ。玄関を開けると詩織が玄関から出て来るところだった。お互いいつも同じ時間の電車に乗るんだから当たり前か。でもここまで一緒だと流石幼馴染という所だな。


「おはよう詩織」

「おはよう柚希」


「詩織、クラスの北川さんって知っている?」

「知っているわよ。北川一族の子でしょ。資産家で昔からの大金持ちよ。北川財団を運営しているんじゃないかしら」

「へーっ、詩織良く知っているね」

「まあちょっとね。あんまり好きな子じゃないけど」

「なんで?」

「ちょっとタカピーなところがあるよ。まあ育ちが育ちだから仕方ないけど」

「そうなんだ」

  なるほどな。あの遠慮しない態度はそんな所から来るのか。


「北川さんがどうしたの?」

「始業式の時からしつこくて」

 俺は詩織にGW中の北川さんの俺に対する行動を話した。


「うわーっ、それは災難ね。でもどうしてそんな事するんだろう。柚希に上坂先輩という彼女がいる事は学校じゃあ、みんな知っているのに?

それに彼女に好意を持っている男子多いから、今更柚希も無いと思うんだけど」



 そんな話をしながら電車に乗り途中亮が乗って来た。学校の有る駅を降りると瞳さんが改札で待っていた。

「柚希、松本君、設楽さんおはよう」

「「「おはようございます」」」

「瞳、ちょっと亮と話が有るから」

「分かった」

 何だろう。でもこの場所で話すのだから変な事じゃないだろうけど。


「亮、頼みがあるんだ」

「なに?」

 亮にも詩織に言った事と同じ話をした。


「だから、彼女が俺に近付けない様に朝とか、中休みに俺と話すようにしてくれないかな?」

「まあ、そんな事は簡単だけど。真由美にも話してみる。武田達の協力もあれば、結構ブロック出来るんじゃないか」

「そうだな」



 俺は教室に入ると朝練から戻って来ている武田を廊下に連れだして協力を頼んだ。


「任せてくれ、山神の頼みだ。がっちりディフェンスしてやるぜ」

「頼むよ」



 俺達は教室に戻ると、早速北上さんが寄ってこようとしたけど、俺が、隣にいる亮と話しをし始めたので諦めたようだ。


 中休みも周りに座っている渡辺さんや望月さんが話しかけて来たので彼女が近づかないですんだ。



 何かおかしいわね。私が山神君に近付こうとすると、必ず周りの子が彼に話しかける。なんで?でもたまたま今日だけかも知れないし。いつでも話しする訳じゃないだろうし。



「どうしたの北川さん、最近山神君の所ばかり行こうとしているけど?」

 隣に座っている女の子が話しかけて来た。


「何でもないわ。どんな子かなと思って」

「ふーん、北川さん山神君に興味あるんだ。でもライバル(恋敵)は強力だよ」

「そういう意味じゃないし、そんな事関係ないけどね」



 

 お昼休みは瞳さんと一緒なので北川さんが近寄る事もない。放課後は瞳さんと一緒に生徒会の仕事とそれから塾だから彼女が近寄って来るのは塾で授業を聞いている時だけ。流石に授業中は話しかけたりして来ない。


 だけど、瞳さんが塾授業二時間の時が問題だった。直ぐに帰れば良いのに何故か自習室で俺に絡んで来る。

理由を聞くと言う訳にもいかないし、そんな事言ってもはぐらかされるだろうから。やっぱりこのままにするしかないのかな。



 そんな感じで二週間が過ぎ、中間考査がやって来た。

「柚希、中間の間は塾が無いけど、あの子が近づかない様に毎日一緒に帰って勉強しようか?」

「構わないけど、三年と二年じゃ、一日の考査時間が違うから、結局瞳と会う隙間がでる。だから、考査が終わったら、直ぐに家に帰るよ」

「えーっ、それじゃあ考査の間会えないじゃない」

「四日間だけじゃないか」

「でもう」


 

 中間考査の初日、考査が終わると

「山神君、私と明日の教科の勉強しない?」

「えっ?!」

 言って来たのは渡辺さんだった。

「武田は?」


「うん、今日はちょっと」

 俺はチラッと北川さんを見るとあれっいない。帰ったのかな?


「そうか、そうだよね。山神君、上坂先輩がいるもんね」

「中間考査中は会わないから、思っている意味とは違うよ、本当に家で自分で勉強するんだ」

「そうなんだ。じゃあ仕方ないか」

 どうしたんだろう渡辺さん。寂しそうな顔をして帰っていっちゃった。


 


 今日は金曜日、火曜から始まった中間考査も終わった。早速下駄箱に向おうとすると

「山神君」

「何、渡辺さん?」

「ちょっと相談に乗って欲しい事があるんだけど」

「えっ。相談?」

 困ったな。もう瞳さんは待っているだろうし。


「今日でないといけないかな?」

「出来れば、早い方がいい」


 どうしよう。無下に断るのも悪いし。

「ねえ、その相談、瞳が一緒じゃ駄目?」

「それはちょっと」

 

 仕方なく、俺は渡辺さんを連れて校舎の入口で待っている瞳さんの所へ行った。そして

「瞳、今日渡辺さんがどうしても相談があるんだって、今日でないといけないと言っている」

「渡辺さん、柚希に何の相談があるの。私が居ては駄目なの?」

「ちょっと」

「まさか、まだ柚希に未練がある訳じゃないわよね」

「そうじゃないです」

「じゃあ、私が居ても良いじゃない」

 絶対柚希を他の女の子と二人だけなんかにしたくない。もしもの事もある。


「すみません。山神君に相談したいんです」

「他の人じゃ駄目なの」

「はい」


 渡辺さんが辛そうな顔している。なんか余程の理由があるんだろう。


「瞳、渡辺さんと二人で少し話させてくれないか?」

「でもう。じゃあ、じゃあさ、話し終わったら絶対に私の所に直ぐに連絡して。その後私が柚希と会う」

 万一の事が有っても直ぐに会えば分かる。


「それでもいいよ。いいでしょ渡辺さん?」

「はい」



 瞳さんはブツブツ言いながら改札に入って行った。

「渡辺さん、そこのファミレスにしようか。因縁良くないけどこの辺じゃそこだけだから」

「うん」



 俺達は、ファミレスに入ると混んでいたが、案内された場所が端の方だったし、周りにうちの学校の生徒がいないのでそこに決めた。ドリンクバー付きのお昼の注文をしてから


「渡辺さん、相談って何?」

「山神君、信之が」

「えっ…?」

 もう武田を名前で呼んでいるんだ。でも渡辺さんの下瞼に涙が溜まっている。それからゆっくりと彼女は話し始めた。



「武田君に助けて貰った後、毎日病院にお見舞いに行って。幸い話は出来たので色々な事を彼と話した。

 私が勝手に想像していた信之と違ってとても優しくて、考えもしっかりしていて。だから病院で彼から四度目の告白をされた時、私も付き合うと言ったの」


 なるほど、だから後もずっと武田と一緒だったんだ。


「学校の帰り彼はバスケがあるから、私も陸上を再開して帰りも一緒に帰った。土日も一緒にデートしたの」

「良かったじゃいか」



「でも、GW辺りから彼、私に体を要求して来た。高校生なんだからそうなのかなと思ったけど、心の準備が出来なくて…。もちろんキスはしたけど

 それから会う度に私を誘う言葉を言って来た。でもそれを断っている内に、段々信之が淡白になって来て、最近は一緒に帰っていない。今日もそう。帰りにしようと言われたけど、断ったら一人で帰るって言われて。どうすればいい山神君」


 これはまた重い相談だぞ。


「山神君って知っているんだよね。あれってどんな感じなの?」


 それ男の俺に聞く?



「出来れば、山神君教えてくれない。そうすれば信之とも出来るかもしれない」

「ちょ、ちょっとそれは無理だよ」


 注文の品が運ばれてきたので会話を中断した。彼女はボンゴレスパ。俺は生姜焼きセット。ここは会話を切った方が良いと判断した俺は、


「渡辺さん、取敢えず食べようか。お腹が満たされれば、いい案が出るかもしれない」

「…………」



 山神君に無理な相談なのは分かっている。でもやはり最初は。信之と付き合い始めたけど、本音を言えば山神君がいい。でも上坂先輩とは別れそうにない。だったら最初は彼にあげたい。信之がそれで私を捨てるならそれだけの男だ。


―――――


 渡辺さん、何という……。


次回をお楽しみに 


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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