第73話 思惑の行先
私、北川香澄。中喜多高校二年生。山神柚希と同じクラス。一年の時は彼自身にはあまり興味が無かったというか存在そのものを知らなかった。
だけど二学期の時、あの上坂精密機器の娘である上坂瞳と付き合っているという情報を知ってからは、興味の対象になった。
というか、上坂瞳と付き合っているという事で彼に興味を持った。理由は上坂瞳が気に入らないから。
あの人は、あるパーティで私を辱めた。
私が中学二年、彼女が中学三年の時、私の父が運営している北川財団法人主催のパーティの時、会員として招かれている上坂精密機器社長の一人娘としてそのパーティに親と一緒に参加していた。
父が上坂社長との挨拶の時、大事な会員様のお嬢様だから、彼女と仲良くしなさいと言われた。
彼女と少し話をした後、一緒に飲み物を取りに行った時、カウンターに置いてあったジュースを取ろうとして彼女の足に引っ掛かり、そのまま倒れてしまった。お気に入りのワンピースは汚れる、グラスは割れる、挙句私は転んでしまった。
あの人は心配そうな顔で私に声を掛けて来たけど、あいつが絶対に意図的に私に足を掛けたと思った。私がジュースを取って向きを変えた時に彼女の足が出たのを見たんだ。
その時はお父様からは叱られるし、周りからは嘲笑の目で見られるし、悔しくて仕方なかった。だから同じ思いをさせてやろうと思った。でもきっかけが無かった。別の中学だったからだ。
その後、もう一度別のパーティで偶然に会った時、中喜多高校に行くと言っていた。準進学校レベルの学校に何故行くのか分からなかったが、私も同じ高校に通いチャンスを狙っていた。
だけど、中々チャンスは巡ってこなかった。そんな時、上坂瞳に彼氏が出来たという噂を聞いて、周りから聞き出したところ、山神柚希という子が彼女の彼だという事が分かった。
隣のクラスだったので彼を見に行ったが、何も取り得の無い男子だけど、何故か美少女の神崎梨音と背が高くスレンダーな渡辺静香という子からも好意を寄せられていると知った。
そして、理系を目指すという情報も得ていたので、敢えて私も理系を選択し、彼のいるクラスになった。
そして行なったのが、私を印象付ける事。しつこい位にした。彼の態度からして十分に知ってくれたようだ。
今度は私に振向かせる事。容姿には自信がある。自分では上坂瞳に決して劣らないと思っている。
彼女と付き合っていると言っても高校男子だ。いくらでもやりようはあるだろう。
調度良い事に同じ塾に通う事になった。これは天啓だ。彼氏を落とせば、必ず上坂瞳は何かをしてくる。そこがチャンスだ。
俺、山神柚希。GWに入り、瞳さんと一緒に塾に通う事になった。毎日学校の有る駅の改札で待合せをして塾に入る。
彼女とはコースが違うので、受講時間も違うけど、全般的に彼女の方が長い。だから彼女が終わるまでは俺が自習室で待って一緒に帰る事にした。
塾に入ると直ぐに別れてそれぞれ受講する教室に向かう。瞳さんは三階、俺は二階に教室がある。
早めに着いているので、並んでいる三人座りの長机の真ん中辺りで座っていると
「おはよう山神君」
チラッと見ると北川さんだ。今日も明るいクリーム色のオープンネックのブラウスにカーデガン、それに茶色の膝までのスカートを履いている。
彼女もこのコースを受けたのか。そのままで挨拶を返した。
「おはよう北川さん」
彼女は俺の隣に座ると
「今日から一緒だね。宜しく」
「ええ、そうですね」
「つれないなあ、学校でも同じクラスなんだから仲良くしようよ」
俺の腕を指でツンツン付いてくる。この子の距離感ってバグっているのか。
「あのそういう事は止めて下さい」
「いいじゃない。挨拶代わりよ」
先生が入って来た。
最初の講義が終わって、次の講義のテキストを取出して見ていると
「あっ、ペン落としちゃった」
彼女は一度席を立つと自分の椅子を引いて、机の下にあるペンを取ろうとした。つい見てしまった。
首周りがラフなブラウス。彼女が下を向いた時、思い切り可愛いピンクのブラが目の前に有った。結構大きい。彼女が起き上がって来たので、不味いと思い直ぐにテキストに目を向けた。
結構大きかったな。瞳さんとしている時の彼女の胸を思い出してしまった。同じ位かも知れない。…何考えているんだ俺は。勉強に来ているのに。集中しないと。
ふふっ、思い切り見せてあげた。案の定彼はしっかりと私のブラと胸を見ている。これでいい。段々私に興味を持つようにさせてあげる。彼も男子高校生だもの。
その後、二つ講義を受け今日の受講分は終わった。瞳さんも終わっているはずなのでフロントに向おうとして階段に行こうとすると北川さんが
「ねえ、この後、二人で今日受けた講義の復習しない?」
「この後は用事があるので出来ません」
「そっか、じゃあ仕方ないね。また明日」
まあ、同じ講義を受けた人間なら、あう言うのは当たり前か。フロントに降りると瞳さんが待っていた。
「柚希」
「瞳さん、昼食どうします?」
「駅の傍のファミレスでも行こうか。我が家で私が作っても良いけど?」
「いえ、それは悪いです。ファミレスで食事をした後、図書館で一緒に今日の講義の復習をしましょうか?」
「いいわね。でもファミレスで昼食後は私の部屋でしようよ」
ちょっと意味深いけど。
「でも…」
「いいでしょ柚希。私の家近いし」
「分かりました。そうしましょうか」
二人がフロントから外に出て行った。仲良さそうに手を繋いでいる。でも今日はここまでね。
まだ、講義は後、三日間ある。それに来月からは毎日あの二人もここに通う。チャンスは十分にあるわ。
―――――
北川さん、何を考えているんですか?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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