第69話二年になって
本話から第三章に入ります。
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三学期の終りに色々有ったけど、無事に一年生を終了した。春休みに入ってからは、渡辺さんと武田がどうなったかは分からない。知る必要もないけど。
春休みは宿題の出ない休み。瞳さんと毎日二人で思い切り遊んだ。勿論あっちも毎日の様にした。前は二週間に一回とか言っていたけど、休みだからいいやと二人で変に合意してしまった。
最近、彼女の方が積極的でちょっと怯んでしまう時があるけど、二人でしっかり避妊しているから大丈夫とか言われて、調子に乗ってしまった。
そんな楽しい春休みも終わり二年生になって初めての登校日。俺は背が少し伸びて一年の時の制服が合わず、親に新調して貰った。それと二年になったのでネクタイのカラーが赤に金糸から青に金糸のカラーに替わった。
いつもの様に玄関を出ると詩織も出て来た。
「おはよう柚希」
「おはよう詩織」
「どうこのリボン?」
女子は赤と緑それに金糸のデザインから青に緑それに金糸のデザインに替わっている。
「うん、とてもよく似合っている。でも今年からクラス別々になるね。ちょっと寂しいけど」
「ふふっ、じゃあ柚希が文系に来る?」
「いや、それは出来ないけど」
俺達の通う中喜多高校は、二年の時から理系、文系に分かれる。理系がA、Bクラス、文系がC、Dクラスだ。それぞれの組分けは中間、期末の試験点数によって順位付けられる。
電車に乗ると途中から亮も合流した。彼は俺と同じ理系を選んでいる。学校のある駅に着くと瞳さんが改札で待っていた。
「みんな、おはよう」
「「「おはようございます」」」
瞳さんは俺の隣に後ろに亮と詩織が並ぶ形で登校した。下駄箱で新しい上履きに履き替えるとみんなで掲示板に行った。
クラス分けを見る為だ。亮がAクラス、詩織がCクラスは間違いないだろうけど、俺は心配だった。
有った。Aクラスだ。瞳さんも三年のAクラスになっている。彼女は当たり前だろうけど。
「柚希良かったな」
「ああ、学年末考査頑張ったからな」
「柚希、学年末考査だけじゃないよ。二学期末考査も対象になっている。両方とも良かったんじゃない?」
俺にはそんな記憶はないが、良かったんだろう。詩織と瞳さんと別れて二年Aクラスに行くと、武田、渡辺さんも居た。結構一年の時から知っている子が多くてホッとした。
取敢えず席に座っていると予鈴が鳴って、少しして教室の前扉が開いて新しい担任が入って来た。あれっ祥子先生だ。
「私が君達の新しい担任、長崎祥子です。宜しくね。と言っても知っている顔が多いか。
じゃあ、早速廊下に出て。始業式が始まるから体育館に行くわよ」
長い校長先生の話が終わり、各学年主任の話が終わり、最後に姉ちゃん、いや生徒会長山神理央の挨拶が有って、やっと終わった。
でも校長や学年主任の話より姉ちゃんの話の方が皆夢中になって聞いているのは気の所為か?
教室に戻ると直ぐに祥子先生が入って来た。連絡事項を俺達に伝えた後、チラッと時計を見て
「さてと、席替えしようか」
「「「おおーっ!」」」
何故か喜んでいる。そんなに嬉しい事か?
「皆、この箱に席番号の付いた札が入っている。廊下側前から順番に取って」
この箱、春休みの間に作ったのかな?先生って大変だ。
俺は最後から二番目、皆一喜一憂しているけど残りは俺と渡辺さんだけだ。
俺と一緒に渡辺さんも教壇にある箱の中から一枚取った。
えっ?窓側席一番後ろ?これはラッキーなのか、どうなのか分からん?
「みんな、引いたわね。じゃあ、自分の席に移動して」
ガタ、ガタ、ガタ。
俺はほとんど動かずに後ろに回ると、えっ、俺の前に渡辺さんが座った。
「ふふっ、山神君また一緒だね。一年間宜しくね」
「あっ、はい」
そして俺の隣にはなんと亮が座った。
「柚希、一年間宜しくな」
「ああ、亮が隣で良かったよ」
亮は俺との会話もそのままに何故か前に座った女の子と話をしている。誰だろう。あっ、バレンタインデーの時、亮の席にいた子だ。その子が俺を見ると
「あなたが山神君ね。私は望月真由美。宜しくね」
「えっ、なんで俺の名前を?」
「ふふっ、自分が校内で有名人なの知らないの?学校一、二を争う美女二人、山神生徒会長の弟にして上坂瞳さんの彼氏。そして私の大事な亮の親友。分かったかな?」
「…………」
俺は何も言えなかった。
「柚希、そう言う訳だ。真由美の事宜しくな」
「亮、後で詳しく教えてくれ」
「山神、俺も宜しくだ」
「えっ?!」
隣に気を取られていると亮の隣、真ん中一番最後の席に座ったのは武田だ。
「ふふっ、山神君。今年も楽しくなりそうね」
「…………」
渡辺さんに言われて、俺はまた何も言えなくなった。楽しくなるってどういう事?
「さあ、皆座ったわね。この席でこれから一年間行くからね。ハイでは今日はここまで。全員帰って宜しい」
祥子先生が出て行くと皆が一斉に帰りだした。
「亮、どういうことだ?」
「まあ、明日の昼休みに話すよ。今日は真由美と用事が有るんだ」
「じゃあねえ、山神君」
二人が一緒に帰って行った。ふと見ると渡辺さんも武田もいない。俺も帰ろうと席を立った所で、知らない女の子が寄って来た。
「山神君。私、北川香澄。私の席は、あそこよ」
彼女が指差したのは、窓側から二番目列、前から三番目の席だ。背中の途中まである長い髪の毛。細面に切れ長の大きな瞳。スッとした鼻に薄い唇。身長は瞳さんより少し低い位だ。一目で分かる美少女だ。でも全然知らなかった。
「そんな不思議そうな顔をしなくて良いわ。一年生の時は別のクラスに居たから。私の事よく覚えてね。また明日」
「…………」
何なんだあの人?
あっ、いけない早く行かないと瞳さんが待っている。急いで下駄箱で履き替えて校舎の出口に行くと
「柚希、遅かったじゃない。どうしたの?」
「うん、ちょっと席替えでごたごたして」
「なにそれ。まあいいわ。早く帰ろう。今日は私の家でお昼だからね」
「うん、楽しみにしている」
「そうだ柚希、塾入らない?」
「えっ、塾?」
「そう、私今年から塾に入る事にしたの。でも春休み柚希と楽しかったから入塾テスト受け損なって。でも四月の終りからGWの特別コースと五月からの入塾が出来る。一緒に入ろう」
「いや急に言われても。全然頭付いていけない」
「じゃあ、今から説明するね。入るのはここの駅の前のビル三階にある可愛塾。三年生向け理系コース。柚希は二年生理系コースに入って。
そうすれば塾に行っても柚希と一緒に居られる。理系コースでも色々別れているから、それはまた後で二人で考えよう、ねっ、入ろ」
「入ろって言われても親に相談しないといけないし」
「柚希の所はお父さんが有名なあの大学の教授なんだから、あなたが塾に入って勉強したいって言ったら喜んでくれるわよ」
「そうかなあ?」
「それも有るけど、早く家に行こう。お昼、お昼」
何故か春休みから瞳さん性格変わった様な。思い切り甘えてくる感じになっている。
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北川香澄、何者?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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