第65話 苛め対策
昨日、渡辺さんから苛めを受けている事を聞いた俺は、朝、駅に行くまでの間に詩織に渡辺さんから聞いた事を話した。
「やっぱりねえ。でも武田君が渡辺さんにどうにかすると言っておきながら、今回の件が起きるのはちょっとがっかりだな。もう少し言った事責任取る人かと思っていたのに」
「でもまだ二回目だよ」
「会う回数は関係ないわ。一度目は仕方ない様だけど」
「詩織どうすればいいと思う?」
「うーん、やっぱり武田君が自分で解決するしかないわね。その間は、彼は渡辺さんと会わないってところかな」
途中、亮が電車に乗って来た。学校のある駅で降りると瞳さんも合流した。
亮は
「設楽さんの言う通りかな。武田が渡辺さんに約束した事を守っていない事は事実だし」
と言うと詩織が
「柚希、武田君、渡辺さんが苛めに有ったの知らなかったら。つまり武田君はお昼休み月水金は一人で食べると取巻きに言っているけど実際は渡辺さんと食べている。
その日渡辺さんが苛めに有っているのを知らないなら彼から取巻きに渡辺さんを苛めないでと言うのはおかしい。柚希が武田君に教えたら。でも注意しないと苛めがもっと陰湿になる」
「分かった、ちょっと昼休みにでも武田に話してみる。良いかな瞳」
「いいけど。お昼は一緒に食べて」
「うん、その後で」
三人で教室に入ると渡辺さんが困った顔をしていた。
「おはよ山神君。ちょっといいかな?」
「あっ、良いけど」
渡辺さんは俺を廊下に連れだすと
「下駄箱を開けたら上履きに画鋲が入っていた。見て来れ」
彼女の手には六個もの画鋲が有った。
「分かった。今日の昼武田に相談してみるよ」
「お願い」
一限目の授業が終わると直ぐに武田の所に行って二人で廊下に出た。
「武田、渡辺さんの事で昼食べ終わったら話が有るんだけど良いか?」
「えっ、わたなべさんの事?別に構わないけど」
何だろう。山神が渡辺さんの事で俺に言う事って?
午前中の授業が終わり昼休みになると俺は瞳さんと一緒に学食に行った。廊下を二人で歩いていてももう奇異は目で見る生徒は大分少なくなった。また嫉妬の目が戻ったけど。
学食で瞳さんの作ってくれたお弁当を食べながら瞳さんが
「柚希、来週はバレンタインデーだね。美味しい手作りチョコ作るから楽しみにしていて」
「ほんと、楽しみにしている」
「柚希、今週の土曜日なんだけど、買い物行きたいんだ。良いかな?」
「構わないけど制服で行くことになる。出来れば日曜が良いな」
「じゃあ、土曜日は私の家に来る?」
「えっ?いいけど」
何となく結果が見えるような。
「瞳、そろそろ教室に戻る」
「分かった。私も戻るわ」
俺は教室に戻ると渡辺さんが一人お弁当を食べ終わった所だった。武田を見ると彼も終わっている。直ぐに武田の所に行き視線を送ると直ぐに立った。
廊下の人が少ない所で
「武田。お前渡辺さんが、取巻きから苛めに有っているの知っているか?」
「えっ?!いやそんな事知らない。それは事実なのか?」
「どうもお前と渡辺さんが一緒に学食で食事をしている昼休みの間に渡辺さんに嫌がらせをしているらしい。でも今日は食べる日でもないのに朝、下駄箱に入っている上履きに六個も画鋲が入っていた」
「…………」
武田は黙ったままだ。仕方なく
「武田さんの苛めが消えるまで彼女はお前とお弁当食べたくないそうだ」
「そんなぁ」
「でも約束したよな。あの四人でゲーセンとファミレスに行って帰り際に。そして苛めが始まったのは、それ次の日かららしい」
「…………」
俺が渡辺さんに一緒に食べようと誘った日だ。
また黙ってしまった。
「だけど武田が露骨に取巻きに苛めをするなとか言ったら、余計陰湿に渡辺さんを苛める可能性がある。何とかしないと不味いぞ」
「参ったなあ。全く知らなかった。朝来てもあの子達は普通に接して来ていたから。でも苛めている証拠を掴まないと言い様がない。山神助けてくれ」
「えっ、俺が?何かいい案有るのか?」
「証拠を掴む為にちょっと松本に協力して貰わないといけないが」
武田から案を聞いたけど、亮に迷惑が掛かる可能性もある。取敢えず亮に聞いてから実行するという事にした。
放課後、生徒会室に行く前に亮に作戦を話した。
「うーん、嫌だなあ。もし俺が撮っていることバレたら俺が苛められそうだ。あの子達クラスの中じゃカーストトップだからな。
それに上手く出来たとして証拠をどうするんだ。取巻きに見せたって口先だけの反省だろうし、このレベルじゃ先生動いてくれないよ。
むしろ先生に言ったら余計酷くなる。渡辺さんが肉体的に被害を被ったなら話は違うだろうけど」
「うーん、困ったなあ。いい案が無い」
「柚希、そろそろ生徒会室に行かないと」
「武田、取敢えずこの案保留な」
「分かった」
亮の言っている事がどう見ても正しい気がする。でも渡辺さんに直接被害が及ぶ事は避けないと。
生徒会の今日の仕事も終わり、瞳と駅まで向かっている時
「柚希、あなたが優しいのは分かるけど渡辺さんの事でそこまで悩むのはおかしいわ。だって柚希は第三者だし。
渡辺さんは、あなたに気が有るから色々言って来るのよ。それを見ている武田君もだからあなたを頼りにする」
「瞳、そんな事言っても知らない振りは出来ないよ。何とかしてあげないと」
柚希の優しさにつけ込んで渡辺さんが彼に言い寄っているだけ。だから武田君も柚希に頼ってしまう。柚希の気持ちがあの二人に割かれるのは面白くない。もっと私の事見ていて欲しい。
―――――
中々良い案が浮かばない柚希です。私ならやっぱり勝手にしろ…とは言えないですねー。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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