第63話 ゲーセンは思ったより面白い
ゲーセンに行く日になった。放課後になり武田が部活に行く振りをして直ぐに教室を出た。いつもの取巻きもそれを気にせずに三々五々帰って行く。
それを見た俺と渡辺さんは、自分のバッグを肩に担いで教室を出た。行先は図書室だ。二人で図書室に行くと瞳さんが待っていたけど、俺が渡辺さんと一緒に歩いて来たことに不満顔だ。でもそれはあえて無視をした。
本を読むわけでもなく、何となく椅子に座って待っているとしばらくして武田がやって来た。部活の大きなバッグは手に持っていない。どこかに預けたのかな?
声を出さずに目線だけで合図をすると四人がバラバラになって図書室を出た。下駄箱で履き替えて校庭から下る坂の所で一緒になるつもりだ。
歩き始めると自然と並びは俺と瞳、武田と渡辺さんになった。後ろで武田が一生懸命渡辺さんに話しかけているけど、今一盛り上がっていない。なんとかゲーセンまでもたしてくれ武田。
ゲーセンは残念ながら学校の近くに無い。デパートのある駅の傍、有名な家電店が入っているビルの一階にある。結構広い。
ゲーセンに着くと
「さて、何やろうか。武田お薦めは?」
「うーん、シューティング、エアホッケー、クレーンゲーム。バスケ、カーレース。どれが良いかな」
「じゃあ、エアホッケーからにしない」
瞳さん、この前これで俺に勝ったからか。だけど今日は負けないよ。早速、俺と瞳さんがやった。
結果、俺のボロ負け。彼女は運動神経がいい。帰宅部の俺には彼女の打つ腕の動きについていけなかった。
次は武田と渡辺さん。二人とも運動部だ。二人でいい線行くと思っていたが、なんと武田の惨敗。何という事だ。
三位決定戦。俺と武田。武田の勝ち。これぞ帰宅部の埃?
次は一位決定戦。瞳さんと渡辺さんだ。
シュー、カシッ。シュー、カシッ。シュー、カシッ。シュー、カシッ。
凄い二人共譲らない。だが、瞳さんの放った一撃が見事に渡辺さん側のポケットに入った。
渡辺さんも負けていない。でも結局瞳さんが勝った。渡辺さんが思い切り悔しい顔をしている。
「山神、次はどうする?」
「じゃあ、カーレースで」
四人同時のスタートだ。これはちょっと得意だ。
「あっ、山神いきなりかよ」
「ふふっ、これは得意なんだ」
「俺も負けねえぞ」
「きゃーっ」
どうも瞳さんはクラッシュしたらしい。コースに戻るようだ。
「きゃあ」
渡辺さんもクラッシュだ。
最終コーナーで武田が抜いていったが、スピードの出し過ぎでクラッシュ。その間に俺がゴールして勝った。
「はは、エアホッケーじゃあ負けたけど、これで勝ったぜ」
「じゃあ、シューティングだ」
これは二人一チームで対戦。最初に武田と渡辺さんがやって貰う。
「ここは渡辺さん、俺に任せてくれ」
武田が渡辺さんをかばう様にして敵を倒していく。凄い。
「あっ、いけない。渡辺んさん、そっちに行った」
「え、ええ、ええーっ」
あっという間に渡辺さんがやられた。
「渡辺さん、もう一度やろう」
「えっ、うん」
おっ、これは良いぞ。なんと武田が左手に銃を持ちながら、夢中になっている渡辺さんの銃を持つ手を握って敵が来る方に撃っている。凄い、器用だ。
何とファーストステージをクリアした。
「武田君凄い」
「任せて下さい。渡辺さん」
残念ながらセカンドステージは、さっきの様には行かずに終わってしまった。
「惜しかったね武田君」
「うん、でも渡辺さんも良かったです」
おっ、これは良いぞ。ここでクレーンゲームに行くか。これで武田が渡辺さんに何かプレゼントできれば。
「武田、クレーンゲームに行くか」
「おう」
「瞳、何が欲しい?」
「あの白い耳の長いウサギ」
有名なキャラだ。
何とか四百円でゲット。
「はいこれ」
「ありがとう柚希」
ちょっと渡辺さんの目が痛い。
「渡辺さん、何が良いですか。俺が取ります」
「じゃあ、あの白色のワンちゃん」
あれも有名なキャラだ。頑張れ武田。
武田も四百円でゲット。
「はい、渡辺さん」
「ありがとう武田君。今度は私がやってみる」
これは良い流れだぞ。
でも渡辺さん中々取れない。
「渡辺さん、俺がクレーンの位置見ているからそれに合わせてみて」
「うん」
なんと、三回のチャレンジで取れた。
「やったぁ、武田君」
「上手いよ、渡辺さん」
これは良い状況だ。ちらっと瞳さんを見ると不満顔だ。どうしたの?
「柚希、私もやりたい」
そういう事?
「柚希がクレーンの位置見て」
「分かった」
四回で取れた。
「柚希やったよ」
「うん、上手だよ瞳」
瞳さんが喜んでいる。ちらっと武田を見ると渡辺さんと話をしている。決め手はファミレスに入って、先に瞳さんと抜ける。これで決まりだ。
「そろそろ喉渇かない」
「そうだな、山神、駅の傍の〇ックに行くか」
「瞳、渡辺さんいいかな」
「「うん」」
俺達がゲーセンを出て行く時、敵意に満ちた視線が俺達に向けられている事を気付かなかった。
四人で〇ックに入り瞳と渡辺さんに席を確保して貰う。俺は瞳さんの注文を、武田は渡辺さんの注文を聞いた。二人でカウンタに並んで待ちながら
「武田、いい流れだぞ」
「ああ、何とかこのまま行きたいものだが」
「自信を持って行け。今の状況なら大丈夫そうだ」
俺達は注文の品をそれぞれトレイに乗せて席に持って行く。俺は瞳さんの隣に、武田は渡辺さんの隣に座った。そして武田と渡辺さんがトレイを共有、俺と瞳さんがトレイを共有だ。いい雰囲気。ここは俺が口火を切る。
「ゲーセン思い切り盛り上がったな」
「ああ、山神がエアホッケーでボロ負けした時は焦ったけど」
「いやいや、俺はお前と違って帰宅部だからあの結果が正しい。でもカーレースじゃ負けなかったよ」
「そう言えば山神と上坂先輩、シューティングしなかったな?」
「あれは苦手なんだ。やる前からゲームオーバーだよ」
三十分位が経ち、大分盛り上がって来た所で
「武田、ちょっと行かないか」
トイレとは言い辛い。直ぐに理解してくれたようだ。
「ああ、付き合う」
二人でトイレに入ってから
「武田、雰囲気何とかなりそうだな。このまま俺達抜けるから」
「いや待ってくれ。もう少し一緒に居てくれ。分かるんだ。まだ渡辺さんが俺に警戒している事」
「そうか。じゃあ一緒に帰るか」
「ああ」
結局俺達は一時間近く一緒にいて〇ックを出た。
「出て行ったわよ。何あれ。今日武田君、部活じゃなかったの?」
「違ったみたいね。一緒に居たのは山神君と渡辺さん、それに上坂先輩」
「山神君は上坂先輩と付き合っているから分かるけど、なんで渡辺さんが武田君と一緒に居るのよ。さっきだってゲーセンにいて楽しそうに二人で笑っていたし。面白くないわね」
「でもなんであの組み合わせなの?」
「分からないわ。多分渡辺さんが武田君と一緒に居たいから山神君に頼んだんじゃない。武田君と山神君仲いいし」
「そうか。あんまりつけあがる様ならお灸据えないとね」
「そうだね」
私、渡辺静香。今日は山神君に誘われて武田君、上坂先輩と一緒にゲーセンに行って、〇ックに行って楽しい時間を過ごした。
駅で別れ際に武田君が
「あの渡辺さん、これからも会ってくれるかな?」
「武田君今日は楽しかったわ。でも私はあなたの取巻きになる気はないの」
「じゃあ、俺があの取巻きから離れればいいのか」
「そうね。先ずそれが最初かな」
「じゃあ、連絡先の交換してくれるかな?」
「取巻きが離れたら」
彼は少し残念そうにしながら、私達と反対方向のホームに行った。私と山神君と上坂先輩が一緒の方向だ。
上坂先輩が最初に降りた。次は私の駅だけど山神君と二人きりになれた。
「ねえ、山神君。次の駅で降りない。もう少し話をしたいんだけど」
「うーん、この後用事があるんだ。ごめん」
「そっかあ、仕方ない。じゃあまた今度。今日は楽しかった」
「それは良かったよ」
私が電車を降りて電車がホームから出て行くのを見送った。彼は上坂先輩ととても仲が良い。でも隙もある気がする。まだ諦める必要はなさそう。
―――――
ゲーセンでの視線と〇ックでの声。気になります。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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