第48話 信じられない事


 俺、山神柚希。もう三週間連続で瞳さんとは土日会えなくなった。再来週から学期末考査が始まる。中の中を目指す俺は普段予習復習だけはやっているので、簡単には復習するが、気合は入れない。


 まあそう言う訳で瞳さんと会えない俺はデパートの有る街の本屋に行く事にした。そこでぶらぶらするつもりだ。


 午後一時に改札を抜けて本屋のあるデパートに行こうとしたところで信じられない物を見てしまった。


 なんで?お父さんの用事じゃなかったの?俺が見たのは瞳さんが知らない男と談笑しながら歩いている姿だった。どういう事。でもどうして?


 疑問が頭に浮かんだが、直ぐに駆け寄って問質そうとした。でも手まで繋いでいる。なんて事だ。何となくスマホで二人の姿を撮りながら付いて行った。


 えっ、こっちって。そんな。これ以上はついて行く事が出来なかった。気持ち悪くなって来たからだ。


 道路わきにしゃがみながら二人の後姿を見るとラブホ街に消えて行った。そこまではスマホに撮れた。


 どうして、どうして、どうして?



 後はどうやって家に帰ったのかなんて分からなかった。家の玄関に着いた後うずくまってしまった。




「柚希、どうしたのこんな所で?」

「姉ちゃん」


 何も言えずに姉ちゃんに抱き着いて泣いてしまった。随分泣いていたようだけど姉ちゃんは受け止めてくれた。



「柚希、何が有ったのか教えて」

 俺はスマホの映像を見せながら瞳さんに振られた事を話した。


「上坂さんが!信じられない。まさか柚希を裏切るなんて。許せない」



 その日は部屋でただぼうとしていた。信じていた。瞳さんの事を信じていた。だから他の子と二人で会う事も絶対にしなくした。

 

 でも瞳さんは、何も言わずに俺に父親の用事とか言って他の男とデートしていた。そしてラブホまで行くなんて。



 次の日曜日、姉ちゃんが俺を心配して部屋に一緒に居てくれた。時々抱きしめてくれた。

「柚希、私が付いている。彼女にはもう会わせない。生徒会も止めさせる。柚希は毎日来なさい」

「うん」




 翌月曜日、俺が玄関を出ると同時に詩織も玄関を出て来た。

「柚希、おは…。どうしたのその顔?」

「詩織おはよ。俺、瞳に振られた」

「えーっ!」

 土曜日見た事を簡単に話した。


「信じられない。あの上坂先輩が柚希を裏切るなんて」

「でも事実だ。スマホで録画もある」


 駅に着き電車に乗って、途中亮が乗って来たけど俺の顔を見て驚いていた。でも電車の中じゃ話せない。学校に着いたら話す事にした。


 学校のある駅の一つ前で梨音が乗って来た。俺の顔を見て驚いていたけど挨拶だけした。



 教室について直ぐに

「亮ちょっといいか」

「ああ」


 私、神崎梨音。電車に乗った時、柚希がめちゃくちゃ落ち込んでいた。今も松本君と直ぐに廊下に出てしまった。どうしたんだろう。渡辺さんも私と同じ感想の様だ。



「亮、俺、瞳に振られた。これを見てくれ」

「えっ、嘘だろ」

 スマホの録画を見せた。

「信じられない。あの上坂先輩が柚希を裏切るなんて」

「だから今日から俺は瞳とはもう離れるから」

「分かった」


 私、渡辺静香。山神君が物凄く元気のない顔をしている。どうしたんだろう。



 午前中の授業は何とか聞けたけど集中は出来なかった。そして昼休みになった。


「柚希、学食行こう」

 彼女が何食わぬ顔で来た。


「亮、購買に行こう」

「えっ?柚希、私のお弁当の日だよ」


 柚希は私の顔をじっと見ている。そして

「上坂さん、その弁当は俺じゃない男に食わせればいいだろう。亮いこう」

「えっ、えっ、どういう事、柚希待ってよ」

「うるさい。浮気女が。俺を裏切ったんだろう。もうあの男と一緒に居ればいいだろう」

 

 クラスの中がざわついている。



 柚希が行ってしまった。彼は何を言っているんだろう。私は分からないままに教室に戻った。そうしたら


「上坂さん、それ柚希のお弁当だよね。もう作らなくて良いわ。そして弟には近づかないで。生徒会室にも来なくていいから」

「山神さん、何を言っているの?」

「よくそんな口がきけるわね。私はあなたを信じていたわ。先週の金曜日まではね。でも土曜日に父親の仕事と嘘を言って、他の男とラブホに行くような女は弟には相応しくないわ。もう弟に近付かないで」


 クラスの皆が驚いた顔をしている。そして段々私の方に冷たい視線を送って来た。


「ねえ、聞いた。上坂さん。山神さんの弟さんと付き合っていたのに他の男とラブホだってさ」

「ちょっとばかり顔が良いからっていい気になったんじゃないの」

「ふん、いいきみよ」



「山神さん、嘘です。私は柚希以外の人と会う事もましてラブホなんて行っていません」

「よくそこまで嘘を付けるわね。柚希からあなたがラブホに入って行く姿をスマホで見せて貰ったわよ」


「ええーっ、上坂さんそんな事までしたの!」

「うわー、普段淑女の様な顔をして、良くやるわ」

「地元企業の社長令嬢だからってつけ上がってるんじゃないの」


 

 私は堪らなくなって教室を飛び出した。まさか、あの時、柚希が近くにいたなんて。でも私はラブホなんて行っていない。どうしてそんな映像があるの。




 俺と亮が購買から帰って来るとクラスの皆が憐れむ様な顔をしていた。武田も何か言いたそうな顔をしているが、取り巻きが邪魔で来れない様だ。


「柚希、食べようぜ」

「ああそうだな」



 私、神崎梨音。あの上坂先輩が柚希を裏切って他の男に。これは凄いチャンスだわ。柚希の性格は十分に知っている。信じたが故に裏切られた時、爆発するような感情を持っている事を。私もそうされた。でも私は柚希を裏切っていない。急がずに必ず柚希と元に戻る。


 私、渡辺静香。まさかのチャンスだわ。神崎さんも同じ考えなのは顔を見ていても分かる。でも彼女は一度は裏切った女。絶対に私の方が有利。

 でもこれを機に他の女子も動く可能性が高い。その前に何とかしないと。


 山神君と松本君がお昼を食べ終わると数人の女の子が寄って来た。


「山神君。元気出して」

「もし、何か有ったら声を掛けてね」

「今度一緒にお昼食べようか」


 やっぱり近寄って来た。やはり早く動いた方がいい。山神君に声を掛けようとしたところで予鈴がなってしまった。でもこれからはあの女を気にしなくていい。


―――――


 なんか大変な事になっています。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る