第47話 何かがおかしい
前話までが第一章のというところです。
本作品の題名の二つ目の意味が幕開けです。第二章お楽しみ下さい。
―――――
俺、山神柚希。昨日梨音にきつく言った。心の中ではそこまで言うのかという葛藤も有ったが瞳さんと約束した。俺が二人だけで会える女の子は瞳だけだと。だから厳しい態度を取った。仕方ない事だと思っている。
一緒に登校する詩織と亮が途中で梨音が乗ってこない事に俺に質問して来たが分からないと答えておいた。先に学校に行っているのかもしれない。
教室に入ると
「おはよう山神君。神崎さんは?」
梨音はまだ来ていない様だ。
「おはよう渡辺さん。さあ、俺にも分からないよ」
予鈴が鳴り祥子先生が入って来ると
「神崎さんは体調不良の為、今日はお休みです」
一瞬クラス内がざわついた。何故か武田がこっちを向いている。
午前中の授業も終わり梨音がいない事で亮に
「亮、一緒に購買に行くか」
「ああ、そうするか」
購買は早く行かないと美味しいパンは売り切れる。急いで亮と一緒に行ったが、
「カツサンドもウィンナーパンも焼きそばパンも無いな。仕方ない。学食行くか」
「ああ、そうするか」
学食に行くとこちらもカウンタには一杯並んでいた。でも腹は満たさないといけない。二人で唐揚げ丼の大盛りの食券を買ってカウンタに並び待っていると
「どうしたの柚希。今日は神崎さんのお弁当の日じゃなかったっけ?」
「あっ、瞳。今日梨音が休んでしまって」
「連絡は無かったの?」
「学校には有りましたけど、俺の所には特に」
おかしいわね。理由は分からないけどあの子が学校を休むなら学校より先に柚希に電話するはず。何か有ったのかしら。
「柚希、唐揚げ丼受け取ったら一緒に食べようか?」
俺は亮の顔を見て
「亮良いか?」
「俺は別に構わない」
そう言う訳で俺と亮は瞳さんとその友達と一緒に食事を取る事にした。亮が随分瞳さんの友達から声を掛けられていてその度に顔を赤くしていたけど。
梨音は次の日も来なかった。流石に心配になった。連絡は学校だけだ。仕方なく瞳さんに昼休みお弁当を食べている時、水曜日の事を話し彼女が心配であることを告げた。
「柚希、その気持ちはあくまで友達として心配しているのよね。だったら松本君なり設楽さんなりと一緒に行って」
「分かりました」
姉ちゃんにも理由を言って今日の放課後生徒会室に顔を出せない事を告げた。教室に戻って詩織と亮に一緒に梨音の所に来て貰えないかと頼んだが、用事が有るという事で一緒に行く事は出来なかった。
中休みには瞳さんに会いに行く事は出来ない。二年生の階に行くのは結構ハードルが高い。スマホの利用は緊急を除き禁止されている。
放課後、生徒会室に行くと瞳さんは都合が悪いから今日は生徒会室には来ないと言われたそうだ。
直ぐにスマホで連絡したが出ない。仕方なしに梨音のマンションに一人で行く事にした。
彼女のマンションのある駅で降りてその場で電話した。
スマホが震えている。画面を見ると柚希だ。震えているスマホをじっと見た。出ても何も解決できない。そのままにしていると切れた。
もう一度掛かって来た。今度は出る事にした。
『はい』
『梨音か、これからそっちに行って良いか?』
『なんで来るの?』
『梨音が二日も休んだから心配になった』
『女の子と二人で会うのはあの人に禁止されているんでしょ』
『そう言う事では無いだろう。梨音が心配なんだ』
『私は大丈夫。月曜からは学校に出れるから』
『本当に大丈夫なんだな?』
『大丈夫じゃなかったら来てくれるの?』
『今行くと言った』
柚希が私を心配して来てくれると言っている。部屋に入れたらもしかしたら、でもそんな事は望んでも仕方ない。今会っても同じ事。
『柚希、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから。来なくていい』
『本当に大丈夫なんだな?』
『大丈夫』
梨音がスマホを切った。とても寂しそうな声で話していた。原因は俺で有る事は間違いない。
でも月曜から学校に来ると言っている。これ以上する事は無い。俺はこのまま帰る事にした。
私、上坂瞳。今日の生徒会室には行かなかった。柚希がいない生徒会なんて興味が無い。生徒会長の山神さんに用事が有ると言って帰って来ると珍しくお父さんが家にいた。
「瞳話が有る」
「何お父さん」
「明日からの土日、お父さんと一緒に東京に行ってくれ。会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
「ああ、詳しくは向こうに行ってから話す」
土日は柚希とのデートの日。でもお父さんのお願いでは断れない。仕方なしに柚希に電話する事にした。
家に戻って少しすると瞳さんから電話が有った。
『はい柚希です』
『柚希。私、明日からの土日だけどお父さんの用事で会えない。凄く寂しいけど仕方ないの。ごめんなさい』
『そうですか。残念です。俺もとても会いたかったのですけど』
『来週は会えるし、学校でも会えるから』
『はい』
瞳さんの声の音がいつもと違う。でも気の所為か。父親の用事では仕方ないな。
翌月曜日、梨音はいつもの様に電車に乗って来ていつもと同じように挨拶した。本当に体調が悪かったのだと思った俺は、これ以上梨音が休んだ事を考える事はしなかった。
昼休みになり、いつもの様にお昼を一緒に食べている時、やはり気になって聞いた。
「瞳、土日のお父さんの用事って何?」
「えっ、ああ大した事無かった。お仕事の関係で人に会うから一緒に来てくれって言うだけ」
「そうか。大変だね。瞳のお父さんは社長さんだから色々有るんだ」
「うん、今度の週末は会おう」
「もちろん」
柚希には言えなかった。お父さんが用事と言ったのは、私に取引先の社長の長男と引き合わせる為。
お父さんの会社の大事な取引先なので仲良くしてくれと言われた。
家に帰り、お父さんに私はお付き合いしている人がいるから、あの人とは付き合いませんと言うと仲良くするだけで良いんだと言われた。
柚希に私以外の女性と二人きりで会わないでと言いながら、お父さんの頼みとはいえ、柚希以外の男の人と二人で会う事は出来ない。
会えないと強く言ったけど、大事な取引先だと押し切られた。
翌土日も瞳さんから用事が有ると言われて会う事は出来なかった。学校ではいつもの様に振舞う瞳さんに聞いても先週と同じ様にお父さんの仕事の関係だと言っていた。
彼女のお父さんは地元の大企業の社長。東京にも関連会社があり、忙しい人と聞いている。そういうお父さんを持っているのだからこういう事も有るのだと俺は思っていた。
でも学校ではいつもと同じ。一緒にお昼ご飯を食べて花壇の水やりや生徒会長の指示で他の役員の手伝い資料整理などをした。
そしてやっと来た週末。もうすぐ学期末考査も始まる。本当は勉強しなければいけないけど二週間連続で瞳さんと会えない俺は下校時の歩いている時
「瞳、明日は会えるよね」
「ごめんなさい。お父さんの用事で会えない」
「瞳、三週間の親の用事って何?おかしいだろ。はっきり教えてくれ」
流石に俺も気になった。
「ごめん仕事の関係で詳しくは言えない」
「そうなのか。分かった」
いつもは仲良く改札に入ってホームの上下線で別れるのに柚希は一人で行ってしまった。私が悪い事は分かっている。でもどうしようもない。
―――――
瞳さんどうしたのかな?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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