第11話 上坂先輩と一緒に


 今日は月曜日それも午前八時だ。いつもなら学校に遅刻しそうな時間だが、今日と明日は中喜多祭の代休。だからのんびりと過ごすつもりでいる。

 

 昨日の夜、上坂先輩からデパートのある駅で待ち合わせしようと言って来たが、あまり乗り気ではない。


 先輩が嫌いではないが、あまり関わりたくないというのが本音だ。彼女は綺麗だ。身長も俺と同じ位、女性としては高い方だろう。成績優秀、運動優秀、スタイルは抜群、出ている所はしっかりと出ている。学校内で知らない人はいない。


 何も無い俺がそんな人と会っていたら悪目立ち過ぎる。それこそ嫉妬や妬みからいじめられるかもしれない。


 そんな事にはなりたくない。一応友達という事にはしているけど出来れば校内での接触は避けたいところだ。


 とはいえ学校以外では会うという約束を反故にする訳には行かない。ベッドの上でダラダラしていると午前八時半になってしまった。仕方ない起きるか。



 着替えて顔を洗いダイニングに行くと母さんと姉ちゃんが、食事をしていた。

「あらっ、柚希起きて来たの。おはよう、朝ご飯食べてね」

「柚希おはよう。疲れた顔しているね」

 


「母さん、姉ちゃんおはよ。そうでもないけどちょっと疲れた。姉ちゃんは元気だね」

 本当は、昨日の梨音の事もあり、精神的に疲れているのが本音だ。


「まあね、生徒会役員はクラスの手伝いしないし、順番で校内を見回りするだけだから。今日はどこか行くの?」

「ああ、ちょっと約束が有って」

「上坂さんと会うんでしょ。宜しく言っといて」

「えっ、何で知っているの?」

「だって、彼女嬉しそうに私に話していたから。彼女助けたんだからこれからは守ってあげないさい」

 会った時にもっと口止めしておこう。



「何で俺が上坂先輩を守らなければいけないの。偶々一回だけ助けただけ。その所為で酷い目に遇った。

 なんでそんな人をこれからも守らなければいけないんだ。出来ればもう関わりたくない」

「へーっ、中喜多高校一の美少女に好意を持たれてそれを嫌がるとは、あんたも大した男だね」

「俺みたない男があの人と付き合ったら、あの学校じゃ生きて行けないよ」

「ふふっ、生徒会が守ってあげる」

「余分なことしなくて良いから」


「ほら、二人で話してないで早く朝ごはん食べて」


 俺はコットンパンツと長袖シャツ、それにパーカーを着て待合せ場所に向かった。今日は花曇り。この時期にしては少し寒い。





 私、上坂瞳。今日は、あの時私を助けてくれた山神柚希君と会う事にしている。あれ以来、なんとか友達という定義の中には入れてくれたけど、実際何もしていない。だって校内では親しくしないと約束しているから。


 人間って、止められるとやりたくなるのよね。でも彼の迷惑になったら本末転倒。だからやっと待ちに待った彼とのデート。

 でも彼はデートって思ってくれているのかな。私だって彼への恋心なんてない。ただ助けられて何も出来ない自分が情けないだけだ。


 彼が居なかったら私の人生はどれだけおかしな方向へ行ったと思うと、何が何でも私の気が済むまでお礼をしたい。


 えーっ、ちなみにまだステディな人を持ったことはないでのもちろん経験は無いですよ。


 だから異性と休日に会うなん初めての事、どうればいいのか会って何をすればいいのか迷ってしまった。


 本当は校内で誤解を受ける事はない様にしているけど、彼のお姉さん山神理央(やまがみりお)にだけは話してみた。絶対に他言無用という事で。


 でもあまり役に立たなかった。何故かって、身長は私と同じ位、肩まである黒髪、成績優秀、そして何よりも美人、校内でも相当に人気がある。


 でも彼がいる形跡は無いし、その上大分ブラコン気味、弟の事になるとまるで人が変わった様。

 

 だからこの前、彼が中喜多祭に元カノと一緒に来た時の対応は激しかった。いつもはあんな事を言う人では無いのに。

 まあそんな訳で、聞いても柚希君の自慢話ばかり。



 もう午前九時、早く起きて着替えないと。朝食も取ってお化粧は嫌いだけど、今日だけは少しだけする。


 待合せの場所は、私の家の最寄駅の隣駅、近くて良かった。さて何を着て行こうかな。




 俺、山神柚希。約束の駅に改札に十五分前に着いた。流石に先輩はまだ来ていなかった。スマホを触りながら待っている事十分、エスカレータから綺麗な女性が降りて来た。


 薄いピンクのリップをして少し化粧をしているのか綺麗な顔をはっきりと際立たせている。濃い白のブラウスに薄いブラウンのロングスカート、白いパンプスだ。

 周りの人の視線が遠目でも分かる。その女性が改札を出ると


「柚希」

 周りにはっきり聞こえる声で俺を呼んだ。目の前にいるんだから大きな声で呼ぶな。


「待ったあ?」

「いえ」

「そっかあ、どこ行こうか。柚希どこか行きたいところ有る?」

「全然分かりません」

「…分かった。じゃあ、映画からにしようか。ちょっと待ってね」

 先輩はスマホを取出して調べ始めた。


「あっ、ねえこれどうかな。この前公開になったばかり」

「良いですけど席取れますかね?」

「行ってみよ」



 先輩に連れられて映画館に行くと、直ぐに上映が始まるようだ。空席を調べると場所は良くないが前の方の席が空いていた。

「柚希、空いている。見ようか」

「はい」


 先輩が二人分の代金を払おうとしたので、

「俺払います」

「何言っているの。私が誘ったんだから」

「じゃあ割り勘にしましょう」

 私が払っても良かったのに。



 館内に入ると結構混んでいた。二人で座ると

「ふふっ、うれしいな一緒に映画見れるなんて」

「はい、俺も嬉しいです」

「ほんと!」

「はい」

 こんなに綺麗な人と一緒に映画見て嬉しくない男子なんていない。俺だって普通の男だ。


 映画は、日本の有名な若手俳優と女優の恋愛ものだ。結構心にしみるものが有った。


―――――


 さてどうなりますやら初デート?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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