第6話 姉ちゃんと梨音

文末にお願いがあります。


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 俺と梨音は、クラス委員に変わって教壇に立つと

「中喜多祭実行員に選ばれた山神柚希です宜しく。早速催し物を決めたいと思います。やりたいもの挙げて下さい」


「喫茶店」

「絵画展」

「粘土細工の実演」

 梨音が黒板に書いて行く。しかし出が悪い。

 やはりはじめてだからだろうか、訳の分からない物しか出てこない。


「出店(模擬店)、焼きそばとか」

「あっそれ良いね」


 あまり出てこないので

「じゃあ、どれが良いか多数決しようか。右から聞くぞ」

……。


「投票の結果、出店になった。なにやる?」

「焼きそば」

「焼き鳥」

「蛸焼き」

「唐揚げ」

「おでん」

「トン汁」

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 これは随分出た。やはりこれも梨音が黒板に右から書いて行った。

「あんまり多く出てもまとまらないから、この辺で多数決にするか。右から聞くぞ」





「じゃあ、焼きそばに決まりだ」

決まった後どうするか分からないので窓側に座っている祥子先生に


「先生この後どうするんですか」

「えーとね。決まった催し物の大体の必要な予算と実行計画のアウトラインを決めて、生徒会に持って行く。そこで了承されれば、実行計画の詳細を作って、皆でその通りやるの。一年だから分からない所は生徒会の担当役員が教えてくれるわ」


 この後、何食くらい売れるんだとか、道具はどうするなど決めて生徒会に持って行く事になった。

 これが決まれば実行計画だ。班決めして交代でやる事になる。材料の手配先や発注も決めないといけないらしい。生ものは学校の冷蔵庫を借りるそうだ。まあ手分けすればなんとかなるだろう。



クラスの催し物プランを生徒会に持って行くと

「えっ!」

「あら、山神君。どうしたの?」

「中喜多祭の実行委員になったのでクラスで決まった催し物を出しに来たんですけど。上坂先輩は?」

「奇遇ね。私も中喜多祭の実行委員よ。仲良くやりましょう」

 ウィンクしてきやがった。校内じゃ何も行動起こさないって約束なのに。


「どうしたの上坂さん?」

「あっ山神さん、弟さんが中喜多祭の実行委員になったんだって。催し物とプラン持って来たわよ」

「えっ!」


 生徒会の入口から奥の方を見ると俺の姉山神理央(やまがみりお)が視線をこっちに流した。そう言えば姉は生徒会副会長だった。

 中喜多高校二年Aクラス、身長百六十八センチ、肩まである黒髪、弟の俺が言うのもなんだけど美人系、成績優秀、運動能力駄目、彼無し。俺に対してブラコン気味。

不味い事にならなければいいんだが。早速こっち歩いて来た。


「柚希、そうか実行委員か。お姉ちゃんが色々教えてあげるからね。ところで隣にいる子って…」

「お久しぶりです。山神先輩、神崎梨音です」

「…柚希どういう事。なぜこの女が」

 姉ちゃんが凄い目つきで梨音を睨みつけた。姉ちゃんは、俺が梨音にどんな振られ方をしたか知っている。その時の怒り様は尋常じゃなかった。不味いぞこれは。



「二学期から俺達のクラスに転入して来たんだ。そして中喜多祭の実行員副担当」

「…柚希私が手伝うからその女は首にして」

「姉ちゃん、それは出来ないよ」

 梨音が今にも泣きそうな顔をしている。


 姉ちゃんが梨音の顔をじっと見た後、

「神崎さんどういうつもりで転入して来たのか知らないけど絶対弟に近付かないでよね。

 柚希、催し物が通るかは他のクラスとの調整になる。明日の昼休み聞きに来て。準備詳細や実施上の注意事項もその時渡すわ」

「分かった」


 それだけ言った後、自分の席に戻って行った。生徒会役員以外ほとんどいなかったのが良かった。


「神崎さん取敢えずクラスに戻ろう」

 頭をコクンと頷くと生徒会室を梨音は出た。



俺達が生徒会室を出て行った後、

「山神さん、どういう事?」

「大きな声では話せないけどね。柚希の側に居た女の子、柚希の元カノ。二年間とても仲良かったんだけど、いきなり新しい彼が出来たとか言って渡米してしまったの。その時の柚希の姿は見られた物じゃ無かった。まさか帰国していたとは。私の大事な弟をあんな目に合わせたあの女は許せない」

「そういう事か」


 私、上坂瞳は柚希を私に振向かせる良い材料が見つかったと思った。あの子利用できる。




 俺はクラスに戻る途中、梨音の肩の落とし方につい

「梨音、そんなに肩を落とすな」

「そう言われても…」

「その姿でクラスに戻ったら俺が何か言われそうだ。普通にしてくれ」


 頭をコクコクとしか頷かない。これは不味い。でもどうしようもない。LHRの時間ももう終わりだ。どうするかな。


 そう思っている内に自分達のクラスに着いてしまった。仕方なくそのまま教室に入るともう祥子先生は居なく、教室の中はガヤガヤ五月蠅かった。

「みんな、催し物が出せるかは明日の昼に分かるそうだ。それまで待ってくれ」


 みんなこちらを向いて分かったという顔をしている。それにしても実行委員やる事が多そうだ。幸い梨音は何気ない顔で自分の席に戻って行った。




 午前中の授業も終わり昼休みになると早速梨音が声を掛けて来たが、今日は亮と食べると言って断った。流石に亮は今日は居なくなっていない。


「柚希購買でパン買って外で食べるか」

「そうだな。そうしよう」

 ほんとこいつは気が回る奴だ。



 俺達は購買でパンを買い自販機でジュースを買った後、下駄箱で履き替えてグラウンドの端にある木の下に行った。ここなら誰にも聞かれることはない。


「さっ、柚希、上坂先輩の事教えて貰おうか。後、神崎さんの生徒会から戻った後のあの寂しそうな顔の理由も」

 やっぱり気付いていたか。


 俺は、上坂先輩と友達レベルで付き合う事になった事、校内では意図的な接触はしない事、会うのはお互いの都合が会う放課後か休みの日である事等、全部に話した。


「そうか、上坂先輩は柚希の彼女になるのか。いいなあ俺もあんな綺麗な彼女が欲しい」

「誰が彼女になるんだ。俺と釣り合う訳無いだろう。それにそんな事校内でばれてみろ俺の高校生活が終わってしまうぞ」

「でも聞いた限りでは、上坂先輩、柚希の事気に入っているとしか聞こえないが」

「そんな事分からないよ。お礼の気持ちが覚めたら離れていくんじゃないか」

「そうかな。そんな事無いと思うけど」


「亮、とにかくこの事は絶対に口外無用だ」

「詩織はどうするんだ?」

「彼女は薄々気付いている」

「そうか、まあ分かった。口外はしないが進捗は教えてくれよな。柚希を守るためだからな」

「分かったよ」

「じゃあ、神崎さんの事だ」


 俺は生徒会室での出来事を話した。

「そうかあ、それはきついなあ。でも柚希のお姉さんってお前に相当ブラコンだからな。理由が不明のままお前にくっ付いて来た神崎さんを見れば絶対そうなるよ。

 それにしても上坂先輩といい、神崎さんといい、そして柚希のお姉さんといい、大変な状況には間違いないな。これから大変になるぞ」

「だから亮に話しているんじゃないか」

「分かっているって」


 この時予鈴が鳴った。


「この後は放課後だな」

「駄目なんだ。これから放課後は結構実行委員の仕事が入っている。今日も実行計画の精査ミーティングが生徒会で有るんだ」

「そうか、それも大変か」


―――――


 おやおや、柚希色々抱え始めましたね。どうなりますやら?


次回をお楽しみに


読者の皆様へ

(近況ノートに同様の事を書かせて頂いています)


こういう事をお願いするのは、本望では無いのですが、やはり寂しいと思う気持ちもあります。

理由は作品のフォロー数に比べて★が少なくないのです。

★は私の書く力の表れなので、こういう事をお願いするのは不躾と重々分かっておりますが、執筆意欲向上の為にもご協力頂けると幸いです。


宜しくお願いします。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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