第5話 神崎梨音の気持ち
私、神崎梨音、中学三年の卒業式の直前に大好きな、いえ思い切り愛している彼を振って渡米した。
彼とは中学に入って知った。一年間同じクラスだった。最初はクラスメイトの一人として接していたけど、彼の誠実さや優しさ、友達への思いやりに段々と惹かれて行った。
二年になり偶然にもまた同じクラスになった。そしてGWに入る前に彼から告白された。一年の時からずっと好きだったと。もちろん私はそれを喜んで受け入れた。
それからは毎日が楽しかった。放課後や休日はいつも一緒に居た。夏休みもずっと一緒に居た。三年になってクラスが別れても同じ。登下校も一緒、放課後も一緒にいた。
転機が訪れたのは、お父様からの一言。来年四月からUSへ二年間転勤になる。だから家族全員で渡米するという言葉だった。この意味は彼と二年も会えないくなるという事だ。私はお父様に一人暮らししてでも日本に残ると言ったけどお母様にも毎日の様に説得された。
両親は私と柚希がどれだけ仲がいいか知っている。だから分かっていただろうに。でも家族全員で行く事を変える事は出来なかった。親戚はいるが他県、とても学校に通える距離ではない。
彼に正直に言ったら理解してくれると思う、でも私の心が理解出来ないそれほど私は彼を愛していた。彼の優しさが無いと生きれない程になっていた。
だから今となってはあまりにも馬鹿な事を考えた。私が私自身に嘘をつく為に、新しい彼が出来たと心の中に思わせた。そこから少しずつ彼と距離を取り始めた。
心が壊れそうなくらい辛かった。でもそうでもしなければ彼と二年間も別れるなんて出来ない。彼は日本で新しい恋人を作ってしまうのが怖かった。だから自分に言い聞かせた。これで良いんだと。
でも渡米してからは余計彼への思いが募り学校に行く事が嫌になってしまった。両親は心配したけど単純な日本への心残り位にしか思っていなかったようだ。
渡米して四か月後、私は思い切って両親に自分の気持ちを打ち明けた。日本に帰れなければ学校にも行かないと。
何度も話し合った結果、ようやく八月過ぎに納得して貰えて。それから彼の入学した高校への編入手続きや帰国手続き。一人暮らし用のマンションの準備等を急いで行ってやっと今日、転入する事が出来た。
彼の為に日本に帰って来た。だから馬鹿な考えを正直に話せば、彼は理解してくれる、また元通り恋人同士に戻れると思っていた。
でも彼からの言葉は私の考えが甘かった事を教えてくれた。でもまだ始まったばかり。必ず私は彼の元に戻る。
私の住んでいるマンションは、学校のある駅から二つ目の駅、方向は柚希の家のある方向。
ここに住めば彼と毎日顔を合わせる事が出来る毎日一緒に登校出来る毎日一緒に下校する事が出来る。そう思っている。
今日も誰いない部屋に向って「行って来ます」と言った後、駅に向かった。まだ柚希が乗る電車の時間も車両も分からないけど徐々に分かるはず。そうすれば…。
学校のある駅に着くと改札で待った。案の定彼は私が乗った電車の二つ後の電車で降りて来た。明日からはこれに乗ればいい。
見ると彼の幼馴染設楽詩織さんが隣にいる。それは問題ない。私が話しかけようとした時、
「柚希、詩織おはよう」
「「おはよ亮」」
「はは、仲良いなハモっているぞ」
「まあな、詩織とは年齢=一緒にいる年数だからな」
「えへへ。おかげで色々と助かっている」
「へえ、まあいいや。それより柚希、今日の昼休みは一緒にな」
「ああ、そうする」
柚希が松本君と設楽さんと仲良く登校している。いずれは私もあの中に入る。
俺達は教室に入り、詩織は自分の席に行った。そして最近は習慣化した後ろに座る渡辺さんに
「おはよう渡辺さん」
「おはよう山神君、松本君、神崎さん」
「えっ?!」
後ろを振り向くと梨音が自分の席にスクールバッグを置くところだった。一緒だったのか。
「おはよう柚希」
「…おはよう神崎さん」
流石に朝の挨拶を無視する理由はない。その後は隣に座る亮と話していると担任の祥子先生が入って来た。
「おはよう皆、出席取るわね」
その後
「今日から二週間後に中喜多祭が開催されます。皆さんはこの高校では初めての学祭になりますね。まずこのクラスでの催し物とかその実施方法について皆で話し合って。クラス委員前に出て実行委員を決めてね」
早速クラス委員が前に出て
「実行委員は部活をやっている人は出来ない。部活や役員をやっていない人でやる気のある奴いないか?」
クラス委員とこのクラスの陽キャ達がガヤガヤと名前を出しあっている。実行員はまとめ役兼リーダーだ。結構大変だろうな。まあ俺には関係ないが。それを横目で見ながら外を見ていると
「山神お前やらないか?」
いきなり俺に振って来た。
「いやあ無理無理。そんな事出来る訳ない」
「そうか、じゃあ神崎さんやってみないか。学校覚える事も出来るし。但し、神崎さんはあくまで副担当だ。誰か主担当でやる奴いないか」
「「「はい、はい、はい」」」
クラス委員の奴、上手くやっているな。でも梨音は承知していないだろう。
「クラス委員、私主担当が山神君ならやります。それ以外の人とはやりません」
「「「えーっ!」」」
この女また爆弾発言しやがって。
「山神、神崎さんがこう言っているぞ。どうする?」
「俺はやらない」
「山神やれよ。俺手伝っても良いからさ」
要らぬところから声を掛けて来た奴がいる。誰だっけあいつ。まだ名前も覚えていないや。
「山神君お願い」
梨音の奴、こんな手を使って来るとは。
「山神やってやれよ」
「「そうだ、そうだ」」
クラス委員がこんな事言わなければ。亮の方を見ると首を横に振って諦めろという顔をしている。
これ以上固辞してクラス内での心証を悪くしても仕方ない。
「分かりました。やります」
「「「おおーっ」」」
「良し決まりだ。山神と神崎さんは前に出て早速催し物決めてくれ」
右後ろを振り返ると梨音の奴が嬉しそうな顔をしていた。
―――――
柚希とんだ災難?神崎そして上坂先輩との関係どうなるのかな?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます