第4話 望まぬ再会
上坂先輩とはあの後、駅前の〇ックでお魚のハンバーガーとオレンジジュースを奢って貰った。食べた後、少し話をして別れた。ここに居ると学校の生徒に見られる確率が高いというかもう見られている可能性がある。
先輩には学校の中では絶対に話しかけない事をお願いした。その代わり、お互いの都合の良い放課後や休みの日は一緒に遊ぶという事を条件で。
人の噂も七十五日という。俺にはちょっと長いけどこれで平穏な高校生活が戻って来ればいい。
その日の夜、風呂から出て明日の予習をチラチラとやっているとスマホが鳴った。
ピンポーン。
スマホを手に取りディスプレイをオンにすると先輩からだ。
『柚希これから宜しくね。瞳』
おい、何でいきなり名前呼びだんだ。
『上坂先輩こちらこそ宜しくお願いします。山神』
これで良いだろう。
猫が怒った絵が送られてきた。あの人結構精神年齢低いのか?そのまま無視して予習を続けた。
翌朝、玄関を出ると詩織が待っていた。
「おはよ柚希」
「おはよ詩織」
「昨日は派手だったね。あれから上坂先輩とはどうなったの?」
「別に、どうにもなってないよ」
「ふふっ、これ見て」
詩織のスマホには俺と上坂先輩が〇ックで仲良く話をしている所が映っていた。
「ど、どうしてそれを?」
「えっ。友達ネットよ。大丈夫クラスネットとかには流れていないから。だから教えなさい」
全くだからあそこは気を付けたのに。
「わかったよ。結局二人共昼を食べ損なったので、放課後二人で〇ックに行ったというだけ。他は何もない」
「これから付き合うとかは?」
「まさか、相手はあの上坂先輩だぞ。俺なんか相手にする訳無いだろう」
「どうかな。先輩は柚希と付き合う気満々だった様に見えたけど。まあいいわ直ぐにばれるでしょうから」
「ばれる物なんて無いから」
「ふふっ、まあそうしておくわ」
私、設楽詩織。柚希の幼馴染。家が隣同士で、もちろん両親も仲が良く、偶に一緒にBBQとか食事とかする家族ぐるみの付き合いだ。
小さい頃から一緒だった柚希とは姉弟見たいな感覚で恋愛感情とか無い代わりに家族愛みたいなものを感じる。
だから柚希が神崎梨音に突然振られた時は驚いた。そしてその理由も驚いた。
聞けば彼氏と家族で渡米したという。許せなかった。どれだけ柚希が彼女を好きだったか知っているからだ。
だから高校に入って立ち直るまで出来る限りで支えてあげた。もちろんお姉ちゃんの感覚でね。そして今に至っている。ちなみ柚希は実際のお姉ちゃんが居るけど。
いつの間にか駅に着き電車に乗った。学校ある駅で亮と合流すると
「柚希、今日の昼休みは楽しみにしているぜ」
「あ、ああ」
亮には今回の事でも何かと世話になっている。こいつだけには全部話しておこう。
俺達が教室に入りいつもの様に後ろに座る渡辺さんに挨拶をして亮と話していると予鈴が鳴って担任の祥子先生が入って来た。
「みんな席に着いて。今日は転入生を紹介するわ」
「今時珍しいな」
「ああ」
前に座る亮と話していると
「静かに。入って来なさい」
先生が廊下の方を見て手招きした。そして俺はその子を見て
「っ!……」
なんでこいつが!
「「おおーっ!」」
入って来た女の子は、艶やかな髪の毛を腰まで流し、はっきりとした大きな切れ長の目、スッとした鼻筋に可愛い唇。そしてそれを際立たせる綺麗な輪郭だ。身長は百六十センチ位。はっきりと目立つ胸、括れた腰、そしてすらっと長い足がみんなの注目を集めていた。
そして俺は凍り付いた。
「初めまして神崎梨音(かんざきりおん)です。半年ほど父の仕事の関係でUSの高校に行っていましたが、今日からこのクラスで皆さんと一緒に勉強させてもらいます。宜しくお願いします」
「神崎さんは渡辺さんの隣に座って」
「はい」
転入生は窓側の列を先頭からゆっくりとこっちにやって来た。俺に目線を合わせながら。そして俺の前で止まると
「柚希久しぶり」
「「「ええーっ!」」」
くそっ、この女わざと言いやがって。どういうつもりだ。
「あら、山神君、神崎さんと知合いなの。じゃあ後で学校案内してあげて」
先生は出席を取ると学校行事の伝達事項を言って教室を出て行った。
「柚希、どうする」
「亮、相談に乗ってくれ」
「分かった」
一時限目が終わった中休み、早速クラスの男女が梨音の側に寄って来て色々聞き始めた。その隙に亮と一緒に廊下に出て、
「まさか神崎さんが戻って来るとはな。それになんでこの高校なんだ。彼女の学力なら県下一の進学校に行けるだろうに」
「分からない。でも俺はもうあいつとは関わりたくない。顔を見るのも嫌だ。変に話しかけてきたらブロックしてくれないか」
「ああ、いいぞ。柚希と神崎さんの事を知っているのは詩織と俺位だ。みんなに変な誤解を生まない内に彼女から声を掛けない様にして貰うしかないな」
「難しそうだけどな。何とかするしかないだろう」
そして午前中の授業が終わった昼休み、俺は亮に声を掛け直ぐに教室を出ようとして腕を掴まれた。
「柚希、お願い」
「手を離せ。俺はお前と話したくない」
周りの皆が驚いて見ている。とにかく繕うしかない。
「…亮も一緒でいいか」
「彼もう居ないわよ」
あいつ、昨日に続いて…全く。さっきの約束はどこ行った。
仕方なく、梨音を連れて購買に行った。学食は目立ちすぎる。もっとも彼女は購買でも注目の的だったが。
俺は昨日上坂先輩と来た校舎裏の花壇の前のベンチに連れてくると昨日の事も有るので先にパンと食べる事にした。もちろん二人共無言だ。
そして二人共食べ終わると俺の方から声を掛けた。
「梨音、さっきのはどういうつもりだ?はっきり言う二度と話しかけないでくれ。それに彼氏がいるんだろう?」
「柚希聞いて。謝っても許してくれるか分からないけど。あの時あう言うしかなかった。そうでないと私はお父様とUSへ行く事が出来なかった」
「何を言っているか分からない。新しい彼氏が出来て俺を振ったじゃないか。その彼氏とUSの高校に行ったんだろう。今更どういうつもりなんだ」
「新しい彼氏なんかいない。私の彼は前も今もずっと柚希だけ。信じて」
「そんな言葉信じる事なんか出来るかよ。俺がどんなに苦しんだか知らないだろう。やっと区切りがついたと思っていたのに」
「ごめんなさい。本当に新しい彼氏なんかいない。柚希の傍を離れるには自分自身に言い聞かせるしかなかった。だからああ言って自分を納得させようとしたの」
「…にわかに信じがたいな。都合の良い事行っている風にしか聞こえない」
「信じて。この高校に来たのも柚希ともう一度やり直したいから」
「そんな事言ってまた自分都合でどっかに行くんだろう」
「それはない絶対にない。両親にははっきり言っている。柚希と一緒になる為に日本に戻ると」
「…………」
予鈴がなった。
「話は後だ。取敢えず教室に戻るぞ」
「はい」
予鈴が鳴って丁度良かった。こいつの言っている事なんか信じられるはずがない。あれほど俺に酷い事を言ったんだ。言葉を交わすのもこれが最後だ。
―――――
おやおや、新しい問題?が柚希の身に。
USハイスクールは、場所にもよりますが、梨音が入った高校は六月中旬から九月中旬までが夏休みなので、この期間に帰国準備しています。小説なのであまり詳しくは書いていません。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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