第5話「友」

 俺は生まれながらに試練を与えられている。


 俺は殺した。昔から虫や動物を殺し、その苦しみ足掻あがき、最後には朽ち果てる姿を見るのが好きだった。


 でもこれは環境や何か原因があるものではなく、俺が元々持っていた性質だ。


 最近は好きな女の子が出来て、その子のをどうしても見たくなった。


 それでも我慢した。我慢して我慢して我慢した。


 でも、それは突然告げられる。あの「恵」とかいうバカ女。俺の楽しみを奪いやがった。 


懸命に耐えて耐えて、時が来たら壊して遊ぼうと思っていた俺の玩具を。アイツは先に壊しやがった。


 しかし、神は試練だけでなく、俺にご褒美もくれたんだ。きっとたくさん頑張った俺に対するプレゼント。


 まずは空をヤる前にその内容を把握しなければ。


 俺は同じ存在を探し回り、知っている情報を聞き出した後、ソイツも殺した。


 おそらくこの死人しびとと呼ばれる存在。観察して分かったことだが、ルールは複数ある。


 1.生者は死人に基本的に干渉できない

 2.死人を認識出来るのは、死に際の者か同じ死人

 3.生者に殺された生者は、自身の死に関わる記憶を失う

 4.未練先の記憶から生者殺しの死人は消える。


 死人が生者を殺すと死人自身がその後どうなるか気になる。が、俺自おれみずかるのはリスクが大きい。一旦保留としておこう。


 そして俺は計画を立て、その機を伺った。

 千載一遇のチャンスを。


 「空」は自分が死んだことに気づいていない。


 だからこそ、生きている時と同じ表情を空は浮かべる。つまり俺は、空の「あの顔」が見れる。


 そして今、俺はその瞬間を迎えようとしている。


 急にあの写真立てのババアが現れた時はヒヤヒヤしたが、空自ら俺を庇ってくれるなんて嬉しいよ。


 さあ、見せてくれ。待ち望んだ表情を!


「あれ……なんで?」

 俺の体が消えていく………。

 ─────。


「がっ──ヒュー……ヒュー……」

「大丈夫!? ゆっくり息をして!」


 空をなんとか助けることが出来た……。


 最初に殺されたのが私で良かった。自分が何故死んだのか、誰に殺されたのかを完全に忘れていた。


 けどあの人が、空のお母さんがもしもの時の為に教えてくれた。レンが、そしてお母さん自身が空を襲った時、それを止めるためにって教えてくれたんだ。


「七海……?」

「空、ダメだよ……こんなトコにいたら……」


 よく分からないけど七海のいつもの優しい顔だ。初めて会った時から向けてくれたあの優しい笑顔。

また会えたんだ……きっとこれからも一緒に……。


 そんな私の気持ちとは裏腹に、七海は続けて言った。一緒にはいられない、あなたは───


「あなたはまだ生きなさい」

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