第84話 見事な人選ミス
ボウクンペンギンの氷魔法と土魔法目当てにガント王国に入国した。同行者は槍の戦士メルカ。
ガントには国土の割にダンジョンが多く、本島に13、離島も合わせた支配圏内全体では40もある。
頂点はガント火山超級ダンジョン。1階の魔物が、いきなり推奨レベルが150以上。攻略されていないから上限と総階数が分からず暫定でランクが付けられている。
メルカにダンジョンの生き物について聞けた。各ダンジョンの魔物は固有の空気が生きるのに必要で、ダンジョン外では、1日しか生きられないそうだ。
沼空間の爬虫類は1ヶ月以上も生きたが、あそこは例外すぎる。それに、外に長く出したやつほど早く死んでいる。
◆
ちょっとくらいガント王国を見物しようと海洋都市コヒマに寄ったが、いきなり囲まれた。
「メルカ、何なのこれ」
王位を狙う第三王子ガリキシとは関係なさそうな兵士が10人、冒険者風の男女15人、街娘10人くらい。
それを囲むギャラリーもいる。
兵士は言う。
「メルカ殿、申し訳ないが、あなたに捕縛命令が出ております」
冒険者はというと・・
「メルカさん、また女を増やしたんですね。さすがっす」
街娘は叫ぶ。
「メルカ様、浮気しないで私達も可愛がって下さい!」
「メルカ、私の人選ミスだったみたい。そこのおばちゃんに聞いたわ」
「え?何の話ですか」
近くにいる干物売りのおばさんに聞いた話では、メルカはこの街の出身。丸鼻で色黒、ずんぐり体型だが、モテるそうだ。
強いし、人当たりもいい。
「表向きはあんたトコブシ姫の女だけど、本当は逆だってね。今では、トコブシの方があなたにメロメロなんでしょ」
「えへへ、ばれました?けど姫は恩人だし、女癖の悪さを除けば素敵ですよ」
「なんで姫があなたの女なの?」
「だって姫はこんな私を見初めてくれたけど、下手なんですよアレが。下町仕込みのテクでやりすぎちゃいました」
すげえ。けど問題はソコじゃない。私はガント王国でこっそりペンギンを倒し、静かに去る気だった。
なのになぜ、入国30分で多くの人に囲まれている。それは私が同行者を間違ったせいだ。
隠密行動のお供に一番向かない奴を選んでしまった。
普通なら逃げるが、今の私は「賢者タイム中」。ゲルダ成分が体に残っていて、普通に性格が悪い女くらいには優しい。
「ねえメルカ、街の兵士はあなたを傷つけたくないみたいね。問題は、第三王子の手の者。見分けはつく?」
「はい、何人かは。サーシャさんから見て右前の15人ほどは、間違いなく腐れ第三王子の手下です」
「それじゃ餌食にしようかな」
「精霊魔法ですね」
期待を込めた目でメルカが見ているが、実験したいだけだ。
第三王子の手下との距離は20メートル。
「精霊魔法、ジャンプ」
まあ、レベル153パワーで上に2メートル、前に10メートル跳んだだけだ。
また言うけど、今の私は優しい。
「ボアのファイアタックル0・1」
とっぷん。ごおっ。
敵15人の一番手前にいるやつの1メートル手前、高さ2センチにちょこっと炎を出して脅かしてやる。
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