第82話 ゲルダ成分の補充
本人は悪くないが、島国の第一王女と出会ってきついことを言った。
「半分は八つ当たりだけど、半分はトコブシ姫のためだよね。あっ。こらっ」
「ふふっ、まだ敏感。トコブシは人格者にみえたけど、個人的に戦闘部隊も率いてる。下手に接触したら、どこに敵ができるか分からないもん。そしたら姫の部下を殺すかもしれないし」
10日ぶりのゲルダだ。わずか4時間の逢瀬を楽しんでいる。
正直にいうと今、ヤリオワッタトコロデス。
小沼の移動力を生かし、さっきまでいたイタス島から20キロほど離れた小島に来た。
とっぷ~ん。
広めの砂浜で沼の底からゲルダを出して、キスした。誰もいない砂浜に収納指輪から大きなシーツを出し、2人で倒れ込んだ。
トコブシ姫という貴族と会って苛立っていた私から、何か感じたのだろう。
しっかりと抱き締めて、激しく愛してくれた。
「ありがとうゲルダ」
「気持ちが晴れたなら、私も嬉しいわ。ね、奥様」
「そうか。成り行きでもオチンチン付いたから、ゲルダが旦那様、私が奥様だね」
「関係は伴侶でいいのかな」
「私はもう、そのつもり」
「沼様の高度な治療のお陰か、男のモノは今も使ったけど、気持ちが女のままなのよね」
「女と女のときから関係を持ってたし、ゲルダの上半身は女のままだし、そう違和感はないよ」
「そうかな」
「ま、こっから下は何か付いてるけどね。ほら」
「あ、やん」
◆
「最近、4時間って短く感じるよ」
「もうすぐだね・・」
「次に会えるのは多分、ガント王国だと思う。どういうとこで「沼の底」から出たい?」
「久しぶりに酒場がいいな。ブライトで一緒に行ったような安酒メインのとこ」
「2人とも慣れ親しんだ、500ゴールドの焼ウサギつまみながら飲みたいね」
「・・ね」
「うん・・」
沼様からゲルダに送られてくるシグナルでは、タイムリミットまで5分。
ぽっちょ~ん。
足元に3メートルの「沼」に出したが、ゲルダを抱き締めたままだ。まだ沈めたくない。
「ギリギリまでこうしてる」
「うん」
「次はもっと落ち着いてる時に出すから」
「いいの、気持ちが荒ぶっていても。そうしたら私が鎮めてあげる。悲しいときには慰めてあげる」
「ゲルダ」
「素の自分を見せて。「沼」の世界と繋がったサーシャと、その力で生かされている私よ。本当の自分をさらけ出せるのは、もうお互いしかいないの。ん・・」
「ああ・・」
「沼世界」のラボで過ごす影響か、優しさの中に混沌の黒をたたえた瞳のゲルダ。
私の勘だが、彼女は沼のラボから出ても沼からのケアなしで生きられない。
その仲介役となるのは「沼」をスキルとして持っている私。
私の死はゲルダの死に直結する気がする。証拠はないが、沼絡みのときだけは私のポンコツ頭脳が冴える。
ゲルダには言えない。
言っても、笑って受け入れてくれるだろう。
そこで笑顔を見せられたら、10日間に4時間の逢瀬じゃ我慢できなくなる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます