第81話 王女に八つ当たり
平和にダンジョン攻略を狙っているのに、ナントカ王国の兵士と戦うことになった。
推定レベル40以下の兵士40人に「沼」で戦うから、負けるとは思わない。
レベル153の私が考えるのは敵を逃がさないことだ。
沼様に貢ぐ獲物の一人をイラッとして蹴り殺した。ちょっと沼様がお怒りだ。
「2・7メートル沼」
ぽっちょーん。
「うわっ」
「うぎゃあ」
「沈む」
「あああ!」
約40人の敵を、丁寧に沼様の元に送った。
『好色、強欲。久々に満足だ』
「喜んでもらえて良かったよ。さっそく姫たちを呼びに行く」
『お前も面倒ごとから逃げてきたのに、いきなり王族と関わるとはな』
「沼様が反応したダンジョンの奥に行きたいけど、対策が必要なの。土魔法、氷魔法をストックしたいの」
『おう、魔法を沼の中に貯めるのだな。レベル6の恩恵のようだが、外からの要素はアタイには分かんなかったぞ』
◆◆◆
転移装置で10階に降りた。
「あ、サーシャ殿、もう終わったんですか」
彼女はサライ、今更だがトコブシ姫、メルカの他はサライ、イル、シャルル、ルカ。
「うん。もう誰も生きてないよ」
「え・・・」
「私にはトコブシ姫様とは合わないよ。敵対者といっても、あなたの大切な国民を40人も殺した」
「精霊様とつながるサーシャ様は、命令されただけの兵士は助けてくれると思ってましたが・・」
精霊話にも乗っかろう。
「精霊だって性格があるよ。人間なんて、精霊からしたら嘘臭い存在だから」
「私は民のために・・」
「精霊は平等だよ。少しでも政治や軍に関わるってことは敵もいるでしょ。身を守るためでも人を害したら、精霊からしたら有罪だ」
「しかし・・」
「姫様、私が話をしていい?」
「メルカ・・ どうぞ」
私はメルカと話がしやすい。恐らく、この中で一人だけ平民出身だろう。
話も「沼様」と「精霊様」を置き換えればいい。
「メルカは平民出身?」
「はい。サーシャさんもですよね。なぜ精霊様と仲良くできるのですか」
「私自身が平民の中でも底辺出身で、貴族に危ない目に遭わされた。そいつらを「精霊様」で殺したとき、精霊を否定ぜず、心から感謝したからだと思う」
「何となく分かります。私は12歳で姫様に拾われて強くなれましたが、それまで悲惨なこともありました。今でも懲らしめてやりたいと思う貴族もいます」
「そう、あなたなら少しは話ができそうね」
「サーシャさん、ボウクンペンギン退治はどうなさいますか」
「メルカ、そこは個人的な興味でやるから。道案内はあんた一人。姫様はダメよ。次に会う機会があるなら、殺し合いになるわ。そういう性質の「精霊様」なの」
自分の甘さでメロンとカリナを危険にさらした。
自分の馬鹿さのせいで、女としてのゲルダを死なせた。
「私がハブられるのですか・・」
「逃亡者の私の最善は、ここであなた方を皆殺しにすること。メルカがいなければ実行している。それを理解してちょうだい」
「・・それでも私はサーシャさんと行きたいのです」
「ダメですよ、姫・・」
最近、10日に一度は人当たりがきつくなる。分かっている。今日が前回のゲルダとの逢瀬から10日目。「ゲルダ成分」が切れかけているのだ。
6人にはこの島で待つことを告げ、ダンジョンを出た。そして多くの無人島の中から、きれいな砂浜がある島をみつけた。
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