第80話 トラブル周期が早すぎる

「沼レベル」が5から6に上がったことで、トラブルに見舞われる頻度も上げてくれたようだ。


「魔国の魔王様VSブライト王国のベルゼ5世に巻き込まれるのが嫌で、何千キロも逃げてきたんだよ・・」


なのに私はガント王国第一王女のトコブシ姫と知り合って1時間で、王位継承争いに巻き込まれようとしている。


ダンジョン1階転移装置の近くにお客さんが待っていた。

直径50メートルの大きな空洞。出口はすぐそこだ。



次の王位を狙う三男ガリキシの親衛隊40人が、空洞内でトコブシ姫ら6人とにらみ合っている。


私は10メートルくらい離れ、空洞の隅に座っている。


トコブシ姫を助ける? どっちでもいい。勝った方に大型ペンギンまでの道案内をさせればいい。


「トコブシ様、ガリキシ様よりあなたを拘束するよう命令を受けております」

「なぜですが。ガットー隊長」

「例の厄災を起こしている大型ペンギンの群れですが、トコブシ様が招き入れたという嫌疑がかかっております」

「なんですか、その突拍子もない話は」


「証拠があがっておりましてな。ペンギンが上陸した海岸にトコブシ様の別荘がありますが、そこでボウクンペンギンの幼生が見つかりました」

「なんですか、その話は」

「トコブシ様は嫌疑が晴れるまで、ガリキシ様の屋敷にて軟禁。国土防衛隊は我々の配下に組み込まれることが決まりました」


普通に戦えばトコブシ達が強いだろうが、ポーションで治したとはいえ怪我をしたばかり。体力的にも不安があるだろう。


「ねえトコブシちゃん。三男君の仕組んだ分かりやすい罠で詰んだね。私は先にダンジョンを出てるよ」


だけど行く手を兵士に阻まれた。


「待て、お前は何者だ」

「・・うるさい。気持ち悪い茶番劇を見せられて、機嫌が悪いのよ」

「なに?」

「あなたの国の方向だけ教えて、勝手に行くから」

「崖を登るにも、出口の外側も我々で押さえているぞ」

「ご心配なく。断崖絶壁を降りて、海から去るわ」


「ぷっ、何言ってるんだ」


兵士が持っていた槍の柄で私を突こうとした。


王族、貴族、王族、貴族、馬鹿どもが!


「精霊魔法、全力キック!」


ばちゃあっ!


兵士君の残骸が空洞の天井に張り付いていた。


「え?なにあのキック」

「ゴズがいねえ・・」

「て、て、天井に張り付いている肉はなんだ」


「トコブシ!」

「は、はいいいいいいいいいい!」


「命令よ。転移装置で10回に降りて、私から避難しなさい」


「あの、それでは・・」

「分かった。選んだのは精霊パンチね・・」

「ダンジョン10階に退避します!」


メルカが代わりに応えた。


「メルカ合格。トコブシ不合格」

「え?サーシャさん」

「早く行きなさい」

「分かりました。精霊様の御使い様。さ、姫様」


「精霊ね・・・乗っかるか」



「何が精霊だ。ふざけやがって」

「兵士殺しの罪を償わせてやる」


「どうせ全員、生かして帰す気はないから普通に精霊様を呼ぶわ」


『ん?呼んだか』


体に張り付いたミスリルインナー一枚になったら兵士たちが色めき立った。


『うむうむ。周りが汚ならしいスケベ色に染まっておる。やっぱりサーシャはこうでなくてはいかん』


ぽっちょーん。


沼を準備した。




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