第79話 勝手に勘違いしてくれた

知り合ったばかりのガント王国トコブシ第一王女ら6人を連れて、イタス特級ダンジョンの10階フロアボスを倒すことにした。


魔力が出ない「沼の底」から溜めた海水を放出すると、何をしたか分からないトコブシ姫、メルカらが驚いている。


ぽこっ、ぽこっ。かなりの範囲が濡れてきた。


水を気にせず、計7体の火豚が私に向かってきた。ミスリルインナーだけで、エロボディーを強調した結果だ。


「ファイアハイオークと部下オーク6体の炎は海水では太刀打ちできません」


「大丈夫」


小沼30センチを2個出した。


ぽちょん、ぽちょん。


水は敵へのダメージが目的ではない。「沼」発動時の目眩ましだ。


大袈裟にミスリル棒を振り、同時に足元の小沼でハイオークの両足をとらえた。そのまま横に動かした。


どん、ごん、ごんっ。


「ぶもっ?ぶぶっ」

「ぶごっ!」

「ぶえええ!」


火を吹く間を与えず、ボス豚を援護豚にぶつけまくった。


ゴンゴンゴンドンドン。ゴキッ!


ファイアハイオークの耐久力が高そうだ。手下6体を飛ばす弾に使っても軽傷だ。だからハイオークが乗った小沼を反対方向に引っ張り、足首を折った。例によって足首から下は立ったまま、体が倒れかけている。


これ以上やると、素材がゴミになる。


「ぶぷぅうぉぉ!」


「さあ、最後の仕上げよ」


私の方に猛スピードで突っ込んで来るように小沼を操作。外角低めのフルスイングを豚の頭に食らわした。


ゴキイイ!


「小沼解除。今度は30センチ小沼3個」


ミスリル棒で操作しているかのよう動かした。豚を高速で寄せてはフルスイングの繰り返し。


「ふう、いい汗かいた」



「あ、あのサーシャ殿の技はなんなのだ。分かるかメルカ」

「恐らく棒術の究極奥義「気操棒」。獲物を打ちに行くのでなく、獲物みずから倒されに来るよう「気」で操る凄まじい技です」

「そ、そんな技が。サーシャさんにお願いした私の目に狂いはなかったのですね」

「そうですよ姫様。わたくしは最初から分かっておりました」

「うむ私の見立て通りだ」

「素敵・・」


勝手に盛り上がってるが、6人全員の目が節穴だ。


「なんか陽気な集団だな。凶悪な「沼」持ちの私が長く接していい人じゃないな」


転移装置で1階に戻るとき、メルカに聞いてみた。


「ねえ、トコブシ姫にお兄さんが4人いるって言ったけど、王位継承の争いはないの?」

「継承権第一位のトンサリ様を筆頭に3人は仲がいいのですが、継承権第三位のガリキシ様が王位への野心を燃やしておられます。トコブシ姫は中立派ですが、ガリキシ様から派閥入りを望まれております」


「トコブシ姫は第5位でしょ。彼女を取り込むメリットはあるのかしら」

「はい、サーシャさんから見たら弱いでしょうが、姫を筆頭とする私達の部隊150人は国内ではトップレベル。事を起こす時に利用する気でしょう」


「ゲスだね。丁度いい」

「ちょうどいいとは・・」


「ちょっかいかけてきたら「精霊」の餌食にするってこと」

「え?」


もうすぐダンジョンから出るが、どうやら三男様の手の者がいるようだ。



ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。


探知がへぼい私には分からないが、沼様が喜んでいるもの。おいしそうな餌がいるから逃すなと騒いでる。


久しぶりにゲスと食わせろと督促している。



私は粗末なローブとフードで顔を隠してダンジョン1階に転移が終わるのを待った。


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