第76話 島のダンジョン侵入

ダバダッタに逃げてきて、商業ギルドに登録したが、やることは変わらない。


登録から4日後、海上にいる。


イタス島に渡り、特級ダンジョン攻略を済ませたい。


「いやあ船旅も快適だけど、これは船と言えるのか・・」


縦3メートル、幅1・5メートルのミスリル浴槽を79センチ小沼に乗せ、水面から50センチの高さを滑っている。


自然を装える木製にしたかったが、小沼との接着面が問題になった。


接着面は不思議引力で1ミリも動かないように固定されている。けど、上部はどうしてもスピードを上げて移動すると柔軟に揺れる。


しばらくすると、接着面から木材が折れはがれるのだ。金属も鉄や銅でさえ壊れる。


だから、強度があるミスリル風呂船を使い時速100キロで進むのだ。


「イタス島だな。船着き場がある島が見えてきた。取りあえずは人との接触を避けて、ダンジョンに行こう」


特級ダンジョンにソロは目立ちすぎる。


火山島の南に陸地を付け足した感じの島で、島の南側が海軍の居住区。

ダンジョンは島の北側の急斜面の途中に入り口がある。


普通は山の上に設置してある縄ばしごから斜面を10メートル降りて、大きな空洞からダンジョンに入る。


私は特注鉤爪でオーバーハング付きの100メートル急斜面を登って、秘かにダンジョンに走る。


レベル153のパワーなら余裕だ。


昨日変装して、ダバダッタから2つ離れた街の冒険者ギルドに行って、レベルだけ調べた。


結果はなんとレベル153。


「どおりで最近は敵の攻撃がスローに見えると思った。ほっ。沼なしで登るのも鍛練になるね」


イタスのダンジョン名は、そのまんまイタス特級ダンジョン。


モンスターはオークからプチドラゴンまでいるが、全部が火属性だ。全80階。推奨レベル90から160。


「ええっと、道具屋で買ったイタスダンジョンガイドだと、10階置きに転移装置。これは普通か。前回踏破は8年前」


とりあえず、到着したから入った。フィールド型で10階までは炎属性のオークとボアが出る。


『サーシャ』


「なに沼様」


『うまそうな匂いがする』


「え?盗賊でも待ち伏せしてるの?」


『いや、この世界の人間じゃないやつの匂いだ』


「まさか神器持ち?」


『違うな・・。生身ではない。むしろ質はアタイに近いが小さな存在。アタイと同じ、違う世界から連れてこられた魂かも知れんな』


「なんでそんなのがダンジョンにいるの」


『ダンジョンマスターかな。今までお前が入ったダンジョンで1度も感じたことがなかったぞ』


「ダンジョンマスター? 誰か住んでるってことか・・」


なんだか、聞いたことがない存在の名前が、飛び出してきた。


『もしかしたら、「沼」に大きな経験値をもたらすかもしれん。サーシャ、ここはガンガン攻めてくれ』


このダンジョンで私のレベルアップを狙っているが、沼レベルを上げるヒントもつかめるかも。


ぽちょん。


とりあえず最初のファイアボアを沼に沈めた。




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