第77話 意外な出会い
イタス特級ダンジョンに入った。
奥には沼様だけが反応する、何か異質な存在がいる。
ギルド情報では火属性の敵しかいないので、暑さ対策で普通のミスリルインナー1枚を肌に張り付かせている。
ついでに海水もたっぷり汲んである。
「いやあ、ファイアボアを沼に沈めたら狙い通りの副産物もついてきたね」
沼に沈める前のボアは「ファイアタックル」というスキルを発動していた。
沼に沈めると沼リストには猪だけでなく、「ファイアタックル0・4」が表示された。
「多分、炎の規模だね。次はオーク2体か。1メートル沼2個」
ぽちょん、ぽちょん。
「ぶも」
「ぶも~」
オークは体の線がエロい私を無傷で捕まえるため、炎を出さずに走ってきた。
とぷっ、とぷっ。
「ぶ?ぶもおお~ん」
沼に足をとられ、ヤバいと思ったオークが沼にファイアナックルを打った。
「貴重なファイアオークと炎ゲット。だけど、炎スキルは使いどころが難しいんだよね」
沼から収納して「沼の底」から出す疑似魔法の理想は、ストーンニードルのような一定範囲だけに影響するやつ。
発動方向は真下のみ。発動地点から10メートルしか離れられない私には、属性と威力次第では自爆技となる。
「試しに「沼の底」から水をかけたけど、ファイアオークはノーダメージだったな。11階以降は別の対策が必要だな」
10階までは飛び道具を持った敵がいないから、要領は爬虫類ダンジョンと同じて沈めただけだ。
11階からブレスや魔法を使うやつがいるらしい。普通の水では対抗できない。
「とりあえず10階フロアボスを倒そう。ファイアハイオークトか。あれ、先客か」
炎属性の面倒な敵しかいない特級ダンジョン。
入るのは間違いなく高位冒険者か、どこかの組織の戦闘職。変な虚勢を張るやつはいない。
ボス部屋の手前にいるパーティーは女6人で、雰囲気は前衛、中衛、後衛が各2の構成か。ただし負傷者が4人で1人が気を失っていて、ポーションを傷口にかけられていた。向こうは先に、こちらに気づいていたようだ。
声をかけた。
「ボス部屋に入る?」
「いいえ、そちらは?」
「行かないなら先に行かせてもらう」
「え、ソロ?」
「この先にいるのは、炎を纏ったハイオークと手下のオーク6体よ」
「情報ありがと。ここまで大したことなかったし、大丈夫だよ」
無傷の私に驚いていた。
「ならお先に」
「待って下さい」
「姫様、気が付きましたか」
「姫」。今の私には何より必要のないキーワードだ。
ここまで逃げてきて、王族になんて関わりたくない。振り向かず、耳だけ傾けた。
「図々しいお願いですが、戦闘力が高い方とお見受けしました。お話を聞いてもらえないでしょうか」
「お断りさせて。人とつるみたくないの」
「それでもお願いします」
面倒には関わらないのが一番。理想はレベル300、最低でもレベル250になるまでは、ひっそりと過ごす。
振り向かず少し真実と違う話をした。
「私はこの容貌が原因で、ある国の王族、貴族から逃げてきたの。権力者は嫌い。さっきの「姫様」って言葉だけで鳥肌が立ってるの・・」
振り向くと、6人が土下座していた。
姫様の頭の下なんか、赤い水溜まりができていた。ぽたぽたと血が落ちている。
「しゃーないな・・。政治絡みだったら断るよ」
話だけ聞くことにした。
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