第74話 後ろ楯がない者の強み
魔力もほとんどなく、土魔法適正もない私が放ったストーンニードルはわずか3本。
デスラの右腕に1本、左腕に2本が深々と刺さった。致命傷にはなっていないが、左腕はちぎれかけている。
魔族の2人が大いに驚いていた。
「嘘でしょ。魔力はまったくないよね、あなた」
「それに発動するときの魔力の動きもなかった」
「分からないの?だったら怪我をする前にそいつを連れて帰りなさい」
分かるわけがない。
「自分たち魔族が魔法に関して完璧くらいに思っているのね。上には上がいるの」
大嘘だ。すみません。
「あなた方がどこの勢力の者か見当はついている」
何の予測も付いていません。
「私は逃げも隠れもしない。これからまっすぐ魔国に入り、魔王様に会う」
もう、魔国に行く気はありません。
「そう、魔国よ」
あなた方と会うことがない、違う場所に行きます。
◆◆◆
今、全力で西に走っている。
間違っても、魔国がある南ではない。
コメンの大森林を北側に向かうとダンガーラに行けるが、そこには捜査が来るかもしてない。
さらに裏をかいて大森林の南側から海に出よう。
魔族と遭遇して、改めて「沼」を得てからのトラブル体質を自覚した。
戦う気もあった。
だけど今回は性質が違う匂いが、なおさら濃くなってきた。
それも私が巻き込まれてはいけない政治的なやつだ。
魔王様の話とブライト王国といえば、ベルゼ5世しか思い浮かばない。
私の予想だが、虐殺王ベルゼ5世は特殊なスキルか何か、やばい何かを抱えていると思う。
だって魔王様は他国の政治に介入して、腐った「貴族法」に口を出すような人。ベルゼ5世を放っておくとは思わない。
だったら放置しているのは、手を出せない理由があるからに他ならない。
例えば、殺したら大規模な爆発が起きるとか。
突拍子もない考え方だけど、実際に異次元につながった私という非常識な例がある。
もし私が死んだら「沼」はどうなるんだろか。
すんなり消えるのか、それとも現世に残り異空間に通じる穴として、どこかに残るんだろうか。
魔王様さえ手が出せないベルゼ5世の何かを異次元に通じる「沼」が解決できるとしたら・・。
したら・・・
私が表舞台に引きずり出されてしまうではないか。
「沼」の秘密を隠せなくなり、場合によっては多くの人から命を狙われる。
最低でも3年はとんずらする。そもそもデビルギルドの副ギルマスが考えなしに私に接触したことが原因だと思える。だから、魔国に行くと口約束はしたが、反故にした。
「思い切って、この辺りの勢力図から外れていて、幾らか混乱している国がいいね」
海側に出て、移動にも使える「小沼」も利用して旅すること30日、南側に向かって逆三角形をしたニュデリイ帝国に着いた。
1年くらい前の戦争でネパルント帝国に勝った。それが原因でネパルント帝国の敗残兵が盗賊となり、メロンとカリナの故郷を襲ったが、一緒に防御した。
私は今より強くなるために動く。
「サーシャ」の名前は使うが、今度は商業ギルドとか冒険者ギルド以外で身分証を作ろうかと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます