第73話 今も昔も面倒なやつ
ごめん、イレギュラー召喚の2ヶ月前の続きだ。
貴族家の跡取りナルタに襲われ、返り討ちにした。遺体は森の中にそのまんま。
次の日にギルドに向かうと、ナルタの手下のデスラにばったり会った。今いるのと同じ場所で往来のど真ん中だ。
「おいサーシャ、ナルタ様がどこにいるか知らねえか」
「知らないわよ!捕まって、手足を縛られて犯されたわ。自分で抜け出したときは、誰もいなかった」
ざわっ。
「本当か?」
「この顔見なさいよ。拘束されてナルタに殴られたのよ。ゴロツキまで手配したあなたの方が、分かってるでしょ」
ざわざわざわざわ。
「あ、あの小屋には誰も・・」
「あの小屋? 私は小屋なんて言ってないよ。なんで知ってるの」
どよどよどよ。
「あいつ、私を寒い中で放置して殺す気だったのよ。だから、手慣れてた。あいつが殺人鬼であなたは共犯者よね。そっちのほうを捜索して欲しいわ」
どよどよどよどよ。
良かった。疑われないように、ナルタの服も何も触っていない。惜しかったが、金も取ってない。
貴族家跡取りのナルタ捜索という名目でデスラは街からいなくなった。
私は平和になったが、前以上に誰も寄ってこなくなった。
調べたらレベルが2から4に上がっていて、何かを殺したのは誰でも想像がつく。
「なんとなくマークされて居づらくなったときに、ブライト王国に飛ばされたんだよな・・」
◆◆
回想してたが、かなり昔のことに思える。
ちょっとした騒ぎは起こしたけど、私を育ててくれたシスターのお墓には到着した。
「慈愛のシスターとは真逆で、人を邪神の手下の元に送って生きてます。伴侶もできました。紹介できないのが残念ですが、私は元気です」
お祈りして、お墓を出た。
ぴちょ~~ん。
『アタイが邪神の手下だ。サーシャ、新たなテイストのお客さんだ』
「沼様、誰か来てるのは分かってる。新しいテイストって?」
『恨み、戸惑い、不安、色欲。色欲以外は長く熟成されていて、新鮮な肉と違った味がしそうだ』
「熟成ね・・」
デスラが現れた。確かに「サーシャ」を探していたから、私の出現は大きいはずだ。
1人で来るわけもないと思ったが、10人くらい連れていて、2人は170センチくらいの魔族だ。
「やっぱりここに来たな。サーシャ」
「私はA級冒険者ナタスリー。サーシャは別の街で知り合っただけ」
「馬鹿だなお前。お前が街から姿をくらまして一年以上もたってるぞ。城壁内に来るならギルドか、そのシスターの墓しか用がないのは調べてあるぞ。それに俺が貴族の次男坊に取り入る時間もあったぜ。それにしてもエロくなったな」
あいたっ。初歩的なミスだ。
「それでも別人。帰らないと強盗と見なすわよ。それにそっちの魔族の男女2人は、何者?」
「俺達もこの街出身のサーシャを探してるんだ」
「そうよ。サーシャの話を聞きたいから、素直に付いてきて」
魔族は魔力至上主義。魔力がちょっとしかない私は、完全に舐められている。
レベル150近いと思うのに。
「う~ん、魔族の勢力関係が分からない。沼様に悪いけど皆殺しはまずいかな」
「何の話だ?」
「ま、あなた方は有罪」
デスラとの距離は5メートル。新技を披露して、デスラだけを倒そう。
「土魔法、ストーンニードル0・3」
敵の目が集まるように、デスラの足元を指差して叫んだ。
とっぷん。
「魔力もないくせに」
ドスッ、ドスッ、ドスッ。
女魔族の蔑む声をかき消すように、デスラの両手がストーンニードルに貫かれた。
針は、逆さまに出ていた。
「沼の底」から前の戦いで沼に入れていたストーンニードルの魔法。それをデスラの頭上2メートルに出しただけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます