第64話 早くも次のステージか

死の淵どころか、そこから墜ちたあと沼様のおかげで蘇ったゲルダ。

ぜいたくは言えないが、逢瀬の時間が四時間とは短い。



「行ってきます?」

「いってらっしゃい?」


ぽちょ~ん。


とぷっ。


早くも4時間が過ぎ、3メートルの沼を出した。


「あはは、変なの。行ってきますじゃなくて、またね、が正解かな」


「実際にはゲルダは真横にいるようなもんなんだよね。次元は違うけど」


「死にかけた代わりに、サーシャとさらに深く愛し合えるようになったわ。いい夢みながら眠るね。わわっ、もう沈んじゃう。まったね~」


とっぷん。


「笑いながら「沼」に沈んだ人間も初めてだ。二人で人も殺したし、正真正銘のダークカップルかな」



◆◆◆


夜がふけて、サスル冒険者ギルドに向かっている。


それにしても、またソロだ。


自信を持って仲間と言えるメロンとカリナがいる。


ゲルダに至っては、ゲル子ともゲル太とも関係を持った。


私はもう伴侶になったつもりだ。


あまりにも大きな秘密を抱えたカップルになって、まさに運命共同体だし。


なのに今またボッチだ。



ギルドに入ったが、誰も注目しない。顔を汚して、茶色で汚れたマントとブラウンのカツラを被っている。


ギルドの作りは、ハルピインに戻ったかと思うくらい今回も同じ。左側のカウンターに向かった。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用でしょうか」


受付嬢にギルマスに会いたいことを伝えた。探知力が低い私でも分かる、バカでかい気配が2つ、2階にある。きっと、そのどっちかだ。


「あの、ギルマスへの紹介状などはごさいますか」

「ダツタンのギルマス、ルークのサインが入った紹介状はあるけど、ここ宛てではない。あと1時間、反対側の飲食スペースで待つ。次は明日、同じ時間に来る。ダメなら諦める」


無駄なら南に向かい、魔国に入ることも考える。


ブライト王国で暴れて、すごく疑問に思ったこと。それはマツクロ子爵も含め、ブライトの奴らが弱かったことだ。


あれだけ危険な国だ。普通なら魔王様率いる魔国が攻めている。魔王様と120年前、邪龍と戦った12英傑だって何らかのアクションを起こしているはず。


「私もゲルダを危険にさらしたけど、私自身はけがを負ってない。もっと強くて正義感の強い人がなんで、ブライトの悪の根源、ベルゼ5世を成敗してないんだろ」



男の人が近づいてきた。ベルミンさんが来てくれたようだ。


人族ではない、少し青みがかった肌の180センチ魔族だ。ダツタンのルークもエルフだったし、不思議ではない。ただレベル252のルークに近い気配。私が「沼」を使っても勝てない相手だ。


「ギルマスのベルミンさんですか。わざわざ、すみません」


「いや、ベルミンではないよ。お嬢さん、いやサーシャさんでいいかな」


「どるぉ」


また油断した。敵なのか?

変な声が出て泥団子1メートルを手に握ってしまったが、危険な感じはしない。


「ダツタンのルーク師匠を通じて、風の神器持を倒した情報をもらった1人。ペルタの兄弟子でジュライ。それで信用してもらえるかな」


「はい、ルークのリストにありました。ハルピインからダンガーラに本拠地を移したサーシャです」


「僕は魔国デビルギルドの副ギルマスのジュライ。マツクロ子爵領に現れた、恐怖の水魔法使いついて調査に来たんだよ。魔王様に直接命令されてね」


うむ、予想外の展開だ。正直、ばっくれたい。






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