第43話 泥団子で自爆寸前
沼様のために高価な砂糖、卵、蜂蜜を使ったスイーツを500万ゴールド分買った。「沼」のお陰で金が増えてるからいいけど、月平均で300万使ってる計算だから恐ろしい。
以前の私は月2万の食費で暮らしていたというのに・・。
一夜明けてハーノンから南東に3キロほど歩いてきた。森と湖がある場所だけど、たいした獲物もいないから、冒険者がいない。
朝イチでギルドに行って確認し昨日、公衆の面前で恥をかかせた冒険者らに姿を見せてあげた。
「受付嬢さん。この近くのヒュルムの森で採りたい薬草があるの。森に危険な魔物はいる?」
「はいブラウンベアの目撃情報はありますが、Bランクのサーシャ様には問題ないかと思われます」
こんな陳腐な罠にかかるやつもいない。獲物が来なかったら、コメンの森に進路変更して狩りをしよう。
暢気なふりをして街から出た。すると後ろを付いてきてる一団がいるから、恐らく昨日の奴らの仲間だ。
罠成功。逆に驚いた。
「さて、森が見えてきたけど後ろから来るのは7人。その後ろから昨日のが来るとして12人か」
◆
直径1キロくらいの湖を50メートル後ろに置いて囲まれてみた。
「おいサーシャちゃん、昨日は恥をかかせてくれたな。礼をしに来たぜ」
「今日もムチムチのボディースーツでエロい格好してんよな」
「う~ん。聞きたいのだけど、何であんたらみたいな凡人が高レベル者の街にいるの?」
「おらっ、ガボナさんの父上はハーノンの領主様だ。あとの4人の親御さんも街の有力者だ」
「要するに、親の金で7人も助っ人を雇ったのね。私はサーシャ。Bランクよ」
「どうせメロンとカリナとかいう2人のバケモノクラスに寄生して、特級ダンジョンをクリアしたんだろ・・」
ぐぢょっっつ!
「うげぇぇ、うごぽっ、ひゅっ、ひゅっ、っっ・・」
メロン、カリナの情報漏洩。助っ人AがNGワードを出した。だから、レベル129のスピードで接近して、股間にミスリルブーツの蹴りを食らわした。
「その名前は副ギルマスが教えたのたね。最低でも、あんたらと副ギルマスは死刑ね」
「まっ、待て。俺の親父は街の領主だ。俺に何かあったら、お前は指名手配されるぞ」
「ガボナ君、それはまずいわね」
「だろうが」
「そんなことを言われたら、場合によってはお父様も殺すわ。30センチ沼展開」
ぽちゃん、しゅるるる。
「わ、なんだ。これがギルドに開示してあったスキルか。1人だけ影縫いにするらしいから、残りで女を押さえろ!」
「死ぬ前に教えてあげる。私は魔力もロクにない低スペックだけどレベルは129あるの」
「ひゃ、ひゃく・・」
「ガボナ君以外は殴り倒してあげる」
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ。
いきなり「沼」を使わないのは優しさではない。こいつらの装備が上等だから、あとで剥ぎ取るためだ。
ガボナ君の小沼を解いて蹴倒して尋問したけど、要領を得ない。
「これ以上、話を聞いても無駄かな。なんか今回はあっさりだけど、みんな「沼」に沈めて引き揚げようかな」
フラグとやらを立ててしまった。
「ピイィイィ!」
空から猛獣がやってきた。
「うわ、鳥の顔と翼に馬の体。ヒポクリフだ!」
私とガボナ君を見つけ、ご飯の時間だと思ったようだ。こっちに急降下してきた。
「あ、あ、あ、サ、サーシャさん、助けてくれ」
「いやいや、私の方に来ないで。拘束してないから離れて」
「いやだああああ!」
「抱きつくな、胸に顔を埋めるな!」
意外な展開に慌てた私はヒポクリフに攻撃した。
「「泥団子」2メートル。当たれ!」
ぺちゃっ。
やけくそで、真上に投げた泥団子が見事にヒポクリフをキャッチ。
しかし、予想外のことが起きた。
ぽちょん。とぷっ。
「ピルルル?」
狙ったように私の真上10メートルで「沼」が展開し、ヒポクリフが沈み始めた。
「え?私の体がまともに動かない・・」
手も自由だし足も上がるけど移動ができない。足なんか、ギリギリのつま先立ちだ。何が起きた?
頭の中を整理する。
「沼」は水平にしか動かない。
「泥団子」は飛ばせるが、何かに当たると「沼」になる。だから、その高さで水平にしか動かせない。
「あっ、私アホだ・・」
「沼」の操作可能範囲は10メートル。斜めでも上でも10メートルだから空中の領域はドーム状。上に行くほど沼の行動半径は狭くなる。
「真上にぴったり10メートルということは、可動域ゼロ・・。ひゃっ。何かにお尻をさわられた??」
「うへへ、何か知らんが動きが止まった。弾力があってぷりぷり。最高だぜ」
なんとガボナ君、逃げるどころか私の後ろに回り、お尻をモミモミしている。
「あのさ、私はこの状態でもガボナ君程度なら殺せるよ。逃げたら」
「なに強がってるんだ。鎖で縛って、連れて帰って性奴隷にしてやる」
「80センチ「沼」発動」
ぽちょん。かぽっ。
「なんだこりゃ、こらサーシャ助けろ」
「アホだ・・」
◆
「逃げずにお尻触りに来るなんて・・。私のお尻、どれだけ魅惑の凶器に変化してるのよ」
「ビイイィィ・・」
ばきばき。ぽちょん。
5分後、ヒポクリフが羽まで「沼」に沈み切って、体が自由になった。
お尻がむずむずする程度の被害で済んでよかった。
状況は危なかった。泥団子作用で宙吊り状態でもガボナ君程度には勝てた。
もしも目の前にいたのが強い魔獣や高位冒険者の敵だったら、殺されていた。
「まあ、使い方を間違えないようにしよう」
ガボナ君以外のやつも、金目のものと装備を剥ぎ取り沼に沈めた。
沼様には私の尻を選んだガボナ君の色欲が特に美味だったらしく、機嫌が良くなった。お尻をさらに強化してくれるそうだか、強化とは?
沼様に許可をもらえたし、次の日から野良ダンジョンで大型爬虫類を倒しまくった。
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