第41話 野良ダンジョン
この沼地ダンジョン。25階まで降りて、仕組みが分かった。
出るのは鰐、蜥蜴、亀の3種類だけだが、とにかく下層に行くほど魔物がでかくなるのだ。
29階でナルルワニに遭遇したが頭から尻尾まで15メートル。このときは良かった。
「素材を持って帰って近くのギルドで売りたいな。よし3メートル泥団子発動、投擲」
ぺちょっ。
うまく鰐の頭に当たり、ゲート状に「沼」が展開。穴に入るように大鰐が吸い込まれていった。
ズリズリザリザリザリザリ。
「すげえ抵抗してるけど無駄」
ぽちょん。
この光景を見ていた鰐が逃げたので30階のフロアボスに挑戦した。
ゴゴゴゴゴ。
甲羅が5メートルを越える高級食材スッポーンがいた。
「これは無傷で捕らえたい。だけど私の沼では3メートルが限度。うわっ」
4メートルを越える長い首が噛みつきにきて、土魔法だろうか大量の泥を吐く。意外に余裕がない。
「仕方ないか、3メートル沼。スッポーンの胸の下まで移動して発動」
ぽちょん。ぐぽっ。
ばき、ぼき、ぼきばきばき。
「きゅえ、ぎゅえぇぇぇ!」
ぽちょん。
スッポーン肉だけでも取り出したかったけど、内蔵や甲羅を巻き込んでいる。あんなミンチ肉は絶対に食えない。
『サーシャ、グロいミンチ肉が送られてきたぞ。早く出せ』
「へ?沼様、人間やトロルの破壊された死体はよくて、亀ミンチはダメなんだ」
『美学の問題だ!』
びがく?
ダンジョンの獲物は放っておくと床に吸収されるから、沼様に逆らわず出した。
ぽっちゅぉおぉんおん。
べしょべしゃぐちょぐちょ!
ばばばべばべべべ!
「うわっ、大量の甲羅入りミンチ肉。トロルの時よりひどい」
自分で出した肉から逃げながら、元スッポーンを捨てた。
◆
35階まで降りた。
『おい、グロミンチ製造機、早くこのダンジョンを出ろ』
「もうちっと我慢して沼様、せめて40階まで。お願い」
私しかやれない倒しかただけど、このダンジョンは経験値の宝庫だ。
しかし、獲物がデカイ。
30階から亀ステージで防御特化の魔物ばかり。
しゅるるる、ぺたっ。
そんなもの、沼をセットしてはめれば関係ないが、もう沼が無傷で吸い込める3メートル以内の獲物がいない。
ゴキゴキ、バギバキバキ、ゴキゴキ、バキッ、ベキッ。
「沼地にはわんさかいるねえ」
どうせ素材がダメになるなら効率重視で80センチ沼を4個発動。4~5メートルの亀を次々と吸い込んでいった。
とっぷん、とっぷん、とっぷん、とっぷん、とっぷん。
「たまにいるスッポーンの首だけ警戒すればいいし、もう30匹はいったかな。沼様がキレる前に捨てよう」
ゲボゲボドボベボグボボドボボドボ!
リポップ待ちも面倒だし次々と作業をこなし、40階フロアボスの部屋に来た。
ゴゴゴゴゴゴ。
広い草原で、ボスは甲羅7メートルのリクガメがいた。
「うわあ、40階で7メートルなら、80階か90階の最下層の魔物は、どんだけでかいんだろう」
ぽちょん。
沼を80センチにして亀に向かわせたが、誤算が起きた。
シュルルルルルルル。
「亀が飛んだ!」
リクガメのくせに足を甲羅に収納して、回転して空を飛んでる。
「うおっ、ヤバい。意外に速い」
どーん、どーん。
何とか避けているが、なぜリクガメが空を飛ぶ?
「泥団子2メートル発動、亀に当たれ」
ぺちょっ。バキバキバキバキ。
泥団子が飛んでる亀に当たり、空中で「沼」が展開した。
もちろん、物理法則を無視する沼が空飛ぶ亀を吸い込み始めた。高速回転を強制的に止められた亀は、ストッピングパワーをモロに食らい悲惨なことになっている。
「甲羅が割れながらめくれて、手足も力なく垂れ下がってる。もう死ぬよ」
バギバキバキバギバキバキ。
空中で「沼」に吸い込まれる亀を見ながら、新しい戦い方も閃いた。
ぽちょん。
「多分、今日だけでかなりの経験値をもらったと思うけど、冒険者としては最低だな・・」
硬く大きな甲羅を持つ貴重な亀を倒しまくったが、全部をグロいミンチ肉にした。
もしドラゴンを倒せる日がきても、ドラゴンミンチにしてしまうのだろうか。
そんなことを考えながら、5日間も亀で経験値稼ぎをした。なだめるためのスイーツも次々と出して底を尽き、沼様にキレられた。下層挑戦は後日への持ち越しにした。
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