第40話 森でダンジョン発見

コメンの森に入っていきなりピンチに陥ったのは自分の油断。今度こそオークの巣に行った。


前の日にトロルに巣を荒らされてしまったようだが、生き残りは帰ってきて巣を作り直していた。


おそらくオークキングのようなやつがいたが、沼に沈めるのはやめた。


だってオークキングって豚の王だよ。人や動物の屍をむさぼりながらふんぞり帰っているイメージなのに、まったく違う。

怪我をしたオークを休ませて、自分が土木作業にいそしんでいる。


昨日捕まえたオークをリリースすると、みんなキングの方に駆け寄って行った。


「ぶも、ぶもっ、この肉くえ。ぶもっ」


ついでに昨日倒した、ぐしゃぐしゃトロルを出してお勧めしてみた。


私を警戒していたが、意図は分かったのか頭を下げていた。


メロンとカリナと長く過ごして、ちょっとだけ優しくなれた。


思い切って狩り場を変えることにした。森の外縁部に沿って100キロほど東に移動。


今度は別のオークの巣だが、こっちの豚どもには何も感じない。


ガンガン殺った。それも私だ。


今日のスタイルは後ろに1・5メートルの沼を出し、体術でやっつけた豚を沼に沈めていった。

オーク、ハイオークでは無傷だった。


オークソードマンでは3体以上で来られると剣を当てられるようになった。

装備のおかげで傷はないけど、それ以上のオーク上位種になると無理。私は回避に徹して、80センチ「沼」が攻撃手段になった。


最後にキングと対戦。


「ぶもももももー!」

「怒っているというより、私のいやらしい体に引きつけられてるようね」


いやらしい人間と魔物を引きつけるために作られた私の体を強調するように、ミスリル装備を作り替えた。

体にぴっちりで純白のボデースーツに黒の細いラインを入れて、膝、肘、心臓の上にアダマンタイトの装甲を貼り付けた。


防御力も高いが、何より体の線を強調したのは、魔物を引き寄せるためだ。ブライト王国に入るため、早くレベルを上げたいのだ。

あせって初日からトロルと戦う愚は犯したが、経験値は手に入った。


さすがにオークキングにオークソルジャー4匹を相手に真っ向勝負はしない。


「1メートル沼2個、泥団子50センチ発動」

ほちょん、ほちょん、ぺちょっ。


沼を一度解除して、ボス戦に備えた。


ソルジャーに沼を60キロのスピードで向かわせると飛んでよけたが、140キロにギアチェンジして軽くキャッチ。体術のみのやつには「沼」は圧倒的に強い。


ソルジャー4匹の足をつかまえたままキングに向かわせた。すると、キングは持っていた斧でソルジャーを横凪ぎに切った。


「ああっ、そこで殺されたら私の経験値が減っちゃう」


オークキングからしたら理不尽な話である。しかし、イラっとした私は沼でキャッチして、泥団子付き鉄球をしこたま当ててやった。


とぷん。


ブライト王国に行くには、今の場所から東に向かうのが近道。あの国は南北に伸びた卵型で東が海。それ以外の国境の大半を山脈に囲まれ、北、西、南に山の切れ目がある。


今回はこっちの国から見たら東にある検問所で騒ぎを起こし、私が潜入したことがブライト王国の上層部にバレるようにする。


「その前にレベル上げだね」


オーガは経験値が高いけど、単独行動が多い。


経験値10倍の恩恵を考えるとトロルのような大物だけど、リスクが高い。


考えながら歩いているうちに30メートルくらいの滝の下に出た。


「前の戦いでも見にくい水の中に気配がない「沼」を置くのは有効だった。水の補給しようっと」


ぽちょん、ぽちょん。ぽこぽこぽこ。


水に入って1メートルの沼を2つ作り、少しずつ水を吸い込ませていった。


水に沼を出しても解除できる。沼様によると、獲物をとらえず周囲全部が同じ環境ならOKだそうだ。


それが不可能なら「物質」である空気の中でも解除できないらしい。空気は空気だろと言いたいが、反論できる頭を私は持たない。


『おいサーシャ、どこにいる』


「沼様、おやつの時間?」

『それもあるが、お前は森に入ると言ってなかったか。異空間が近くにあるから、ダンジョンに切り替えたのか?』


「いんや、森だよ」

『変だな。お前らの世界の特級くらいのダンジョンの雰囲気がするな・・』


よ~く辺りを見ると、わかった。


「沼様、滝が目の前にあるんだけど、裏に何かありそう」


『ほう、人間が見つけてない野良ダンジョンというやつか』


「ちょっとだけ入ろうかな」


◆◆


大当たりだった。


爬虫類系ダンジョンだった。鰐、蜥蜴、亀がいる。低い位置から大型の爬虫類が襲ってくるから討伐難易度が高い。


地を這う悪魔とも言われるが、これもゴーレム同様に私には相性がいい。


ぽちょん。


入ってみると1階から沼地のステージ。1メートルの蜥蜴を「沼」に沈めて2階へ。


「うおっ、2階は食材の宝庫だ。1~2メートルのスッポーンがわんさかいる」


首を伸ばす亀型魔獣は要注意だけど、射程距離は私の方が長い。100匹ほど沼に沈めた。


そして10階のフロアボス戦となった。


5メートルのコドモオオトカゲで頭だけで1メートルあるが、地を這う限り私の敵ではない。


「3メートル沼発動。頭から沈みなさい」


ペタペタ、ぬぽっ。


大きなトカゲは高級食材とマリアさんに聞いているから、お土産に持って帰ろう。


ぽちょん。


サクサク勝てるから、一気に30階まで降りて問題が起きた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る