第18話 貴族の次男坊

森の奥に入って、ゴクツ盗賊団のお宝剥ぎ取りをした。


「沼」の本性を見せたから、生かして衛兵に渡す選択肢はない。

総勢64人。メロン、カリナと一緒に倒した9人が誰か分からなくなった。なので、それなりの格好をしたやつ9人分の装備、上着、財布、3個の収納指輪を剥ぎ取り、大きな袋に入れた。


残り55人分は乱雑に持ち物を剥いで、遺体は遺体だけの収納指輪を用意した。


帰ろうとして白銀騎士のままだったことに気付き、念のため木陰で裸になって全装備をチェンジした。


「沼様にナイスボディにされてから、森の中で裸になると必ずスケベな魔物が寄って来るんだよね・・」


ぽちょん。


最大級に広げた沼を展開し、私の裸に誘われたオーク3体を沈めた。


◆◆

ハルピィンの街に入った。

「さて、ギルドに行くのはいいけど、盗賊の討伐報告ってどうやんのかな?」



「おいサーシャ」

「あれペルタ様。ギルマスがこんなとこでなにしてんの?」


「おめえを待ってた。問題発生だ。路地裏の喫茶店まで付き合え」

「デートのお誘い?」

「問題発生っていってんだろが」


「今朝な、領主の娘がゴクツ盗賊団にさらわれたんだ」

「ふ、ふ~ん」

「そんで領主が討伐隊を組んでな、娘が連れ去られたらしき方向に向かってたんだ」


「そ、そ、そうなんだ」

「そしたら、さらわれた娘が小せえ子供と現れて、知らない人に助けられたって言うんだ」


「どんな人?」

「顔も隠れたフルプレートアーマーで、話もしてねえんだと」


「問題とは?」

「領主のとこの斥候が手分けして森に入ると、壊滅した砦があって、人はいねえが使ったばっかの武器と血痕が幾つかあったそうだ」


「私と何の関係があるの? とか、とぼけていられないよね・・」

「ここの領主は判断が早い。手の者をギルドに来させて、見張らせているぜ」

「何のためにだよ」


「盗賊の討伐をしたものが、娘を救った者と思ってるからだ」

「あ、ペルタ様ありがとう。領主の娘を助けたときに顔隠したから、問題ないと思ってた。ギルドにノコノコと顔を出すとこだった」


「ギルドには秘密厳守の義務がある。おめえの討伐履歴、盗賊団の討伐者は洩らさねえ。だがよ、討伐者が受付嬢に申請すっとこを見るのは自由だ」

「あいた~」


「だから、今後は盗賊団絡みとかは、俺に直接言え。ここの領主ハルルキ伯爵はいい人間だが、跡目争いで次男坊が変な動きしてっからな」


「あら、心配してくれるんだ」

「ああハルルキ伯爵家の全員惨殺の方をな」

「あっはっは。やらないよ」

「メロンとカリナにちょっかい出されてもか?」

「連帯責任でハルルキ家に関わったやつは全員死刑」


「やっぱ、会わせなくて正解だな。盗賊団は多分、収納指輪の中だろ。夕方までに訓練場の一部を区切っとくから、あとでギルドに来い」

「その必要はないよ。はい時間停止の収納指輪。こん中に盗賊団64人が入ってる」


「お、おお貴重なもんを。責任を持って預かるぜ」

「よろしくね」


ペルタ様と一緒にギルドに向かうと、ギルドの前に若くてきれいな服を着た男と、兵士10人くらいの集団がいた。


「こんにちわ。ギルマスのペルタ殿。そちらの娘さんはサーシャさんでしょうか」

「例の次男坊だね」

「お、分かるんか」



ぴちょん。ぴちょん。

私だけに聞こえる、沼様が催促する音。

街中なのに、沼様が大好きな悪意が溢れてるもん。


「何か用なの」

「こちらが挨拶してるのに、いきなりそれですか」

「ふざけてますね、こいつ」


「用がないなら通して、往来の邪魔よ」

「だな。サーシャを雇いにでもきたか。おめえらごときが、どうこうできる相手じゃねえぞ」


貴族家次男坊の手下が散開し始めた。


「これは侮辱ですね」

「なに貴族を気取ってんだ。貴族なのは、おめえの親父さんだけだ。魔王様と魔国の介入で、この国の貴族法も変わったんだよ。特権階級の時代は終わってんぞ」


「まだ何もしてませんよ」

「ことが起こってからじゃ遅せえんだよ。おめえをの手下が動き出した瞬間から、サーシャがヤバい空気を醸し出してるぜ」


「ザハル様、次期当主候補として、平民になめられてはなりません」

「う、うむ・・・」


「おい、そこの雑兵A」

「なっ。ペルタ、侮辱するのか」

「てめえ、都合がいいように考えるなよ。このサーシャも俺も、おめえらが駆け引きしていい相手じゃねえぞ」


「なっ、なにをする気だ」

「う~ん。聞いてるだろうけど、私がブライト王国を逃げるとき、人をたくさん殺したのよね。その中に一応の規則性はあったのよ」


「何が言いたい!」

「あんたらみたいに、訳の分かんない権力にすがる貴族と関係者ばかり選んで100人くらい殺したわ」


「こ、ここでやったら、この国では殺人罪になるぞ」

「なら決闘しましょ。ルールも参ったもないデスマッチ。11人一緒でいいよ。ペルタ様にも知ってほしいし、先にサービスにスキルを見せてあげるわ」


ぽちょん。公開用の60センチ小沼を出した。


レベルアップで私自身の反応が上がって「沼」の移動スピードも速くなった。


しゆるる。ぺたっ。


次男坊の両足の下にセットしてあげた。





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