第19話 看破スキル
決闘で殺し合いをする前に、貴族家次男と仲間達に大サービス。沼スキルを披露してあげた。
「ザハル様!」
「なんだこれは、黒い足ふきマットか?」
「ペルタ様見てて」
「うん、ザハルの動きが止まるのか・・」
「う、動けん、それに上半身までほとんど動かん・・」
「どういうことだ、サーシャ」
「あの「沼」はくっつくというより、乗ったものを固めるの。それも中途半端に。あいつはパワレベでレベル30くらいありそうだから、股関節の下部くらいまで微動だにしないでしょ」
「お、おめえ、ありゃ影縫いなんてシロモノじゃねえぞ。人がしゃがんだり後ろ振り向いたりすっとき、ほぼ全身の関節使うんだぜ」
「でしょ。だからザハル君が動くと、固定部分とそうでないとこの境界線に負担が全部かかるの」
「だからおめえが捕まえてくる熊は、膝とかが徹底的に破壊されてんだな」
「あっ、あで、下腹と腰が、いだだ、何とかしろ」
「はっ、外します」
しゃがんで小沼からザハル君を離そうとしたやつの右足が、小沼に触ってしまった。
「う、動けん。立ち上がることもできん。誰かザハル様を支えろ」
ザハル君を左右から支えようとした2人も沼の端を踏んで、足が動かなくなった。
「便利なのは、小沼の円の中に空きスペースがあれば、何人でも捕まえられるの」
「捕えるスピードも早ええし、怖いスキルだな。で、あいつらどうする。殺すか?」
「メロンとカリナに野蛮人と思われたくないし、今回は逃がす。けど、その前に、ほれっ」
収納指輪から4メートル鉄棒を出して、小沼に捕まってる4人の腹をつついた。
ベキ!バキ!ゴキ!ベキ!
うぎゃあああああ!
「うわあ、体は転んだのに、足だけ立ったまんまで途中から折れてるよ。地獄だせ、ありゃ」
「スキル解除。何かあったの?私が棒でつついただけなのに、4人も足が変な方向を向いてる」
「こういうときのおめえ、相変わらず棒読みだな」
「お、お前ら無抵抗の人間に、なにをした」
「雑兵B君、おめえらが散開した瞬間にハルルキ家はこの俺、ハルピィンギルドのギルドマスターであるペルタと冒険者サーシャに敵対行為をしたと見なした」
「剣なんぞ抜いておらんぞ」
「あのなあ、森の中で盗賊10人に囲まれて、あなたは盗賊ですかって聞くか?」
「ここは街中で・・」
「馬鹿者が、やめよゴンバ。あのような動き方、盗賊や強盗以外の誰がする! ペルタ様、申し訳ございません。怒りをお納め下さい」
「また誰か来たよ」
「ああ、まともな方の貴族家長男のシェークだよ」
「で、お兄さん、あんたも私と決闘に来たの?」
「いいえ、妹を助けてくれた恩人を探しに来ました」
ぽちょん。小沼発現。
「で、その恩人とやらは見つかったの?」
「・・いいえお礼を言いたかったのですが、見つかりませんでした。恐らく今後も見つからないでしょう」
「うん、あきらめが肝心よね」
「はい、それに弟達も転んだだけですから、ここでは何も起きておりません」
「そだね。これ以上ブライト王国の「白銀騎士」を探す人がいたら、ゴグツ盗賊団と同じ末路を辿るのは間違いなさそうだしね」
「ゴグツ盗賊団は壊滅したのでしょうか」
「白銀騎士は64人の盗賊を討伐してギルマスに遺体を預けたらしいよ。盗賊団の全貌になんか興味ないんだって」
「ふむ。失礼しました。ところで、なぜサーシャさんはスキルをお出しなのでしょうか」
「あなたが出して欲しそうだったから」
「私のスキルがお分かりですか」
「いいえ。ブライト王国でこの60センチの黒い円が使えるようになったけど、希望者には見せてるの」
「私のスキルは「看破」です。サーシャさんのスキルを見たいのですが、許可を取らずに見て首がなくなるのも嫌なので・・」
「う~ん。見ていいけど、ヤバい種類かもしれない。それでもいいならどうぞ」
「構いません。むんっ」
「かっこいい、両目が青く光った」
「ぼんやり「水溜まり」と出でいます」
「・・」
「ふうう、スキルの詳細が分からん。それに無理矢理、視点が移動させられている・・」
「やっぱり無理だよね」
恐らく「沼」は神かそれに近い人がくれたスキルだ。前に鑑定士も分からなかったし、鑑定とは系統が違う「看破」でも見破れない。
「おおっ、裸の銀髪女性がこっちを見て踊っている。サ、サーシャさんだ」
「え、誰のこと?」
「何か文字が出てきたぞ。身長160センチ。胸のサイズDのお椀型。ウエスト61センチ、ヒップ88センチ。なんだ、この情報は。それに下の毛は淡い栗毛色をしている」
「・・ペルタ様」
「看破というか、覗き魔みたいなこと言ってんな」
「それも、余計な情報ばっか。スキル解除」
「ああっ、これからがいいとこなのに・・」
「こら、出歯亀貴族」
「はっ、サーシャさんが服を着てる」
「毛の色までばらさないの!」
ばっち~ん!
沼様が認識阻害をかけたのは確実だけど、代わりに私が酔って裸躍りしたときの映像に置き換えるとは・・・
色めき立った男達が余計なことをして、「沼」の餌食にならないことを祈ろう。
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